上 下
30 / 122

30.少しだけ(?)変わった日常

しおりを挟む
 関係が変わると、日常の光景も少し変わるらしい。

「あっ、おはよう晃生くん」

 朝の登校。通学路をのんびり歩いていると日葵とばったり会った。

「こんなところで会うだなんて偶然ね」
「嘘つけ」
「うふふ」

 穏やかな風が彼女のピンク髪をなびかせる。俺に向ける目は愛情で満ちていた。
 日葵の家の位置を考えると、こんなところで合流するわけがない。俺を迎えに来たところだったんだろうな。

「今日は早いのね。いつもならもっと遅くに家を出ていたと思うのだけど?」
「たまには早起きすることもあるさ」
「私に早く会いたかったんじゃなくて?」
「……もしそうだったら?」

 日葵は笑顔で俺に抱きついた。勢いはあったが、郷田晃生の筋肉質な身体なら楽勝で受け止められた。

 日葵が……、日葵たちが俺の女になってからというもの、素直に好意をぶつけられるようになった。
 原作とは別のまっとうで正しいルートを目指したつもりなのに、結局はヒロインと共にいる。だが、それをいけないことだとはもう思わなかった。

「あふっ……晃生くん♪」

 日葵の華奢な身体を抱きしめ返す。細っこい身体のくせして、押しつけてくる胸の感触はとても豊かだ。
 ヒロインが巨乳なのは原作者の好みなのだろうか? 日葵はもちろん、羽彩やエリカもかなりのモノをお持ちだ。どれほどすごいか、身をもって味わった。
 どんな男でも魅了するであろう身体つき。それを存分にアピールされて、平常心を保つのは至難の業だろう。

「……学校に行くか」

 日葵から身体を離す。滅茶苦茶名残惜しさが込み上げてきたが、さすがにいつまでも外で抱き合っているわけにはいかなかった。

「ねえ……少しくらいなら良いでしょう?」

 何が、とは聞き返さなかった。
 日葵のぷっくりとした唇が少しだけ開き、切なげに吐息を漏らす。ただそれだけのことがエロく感じてしまった俺は悪くないはずだ。
 なぜなら、誘惑しているのが彼女だからだ。

「これから学校だぞ?」
「まだ時間に余裕があるわ。遅刻しなければ平気よ」
「それが優等生のセリフかよ」
「ふふっ。誰かさんのせいで悪い子になってしまったのかもね」

 悪びれもせず笑う日葵に、俺は説得するのを諦めた。
 朝っぱらからどうかしている。そう思いながらも適当な場所を探している自分がいた。

「日葵、こっちに来い」
「うん♪」

 俺はエロ漫画の住人だ。そして、この現実を生きる人間だ。
 ……とりあえず、今はエロ漫画みたいな行為にふけるとしよう。ヒロインがお望みなのだから仕方がないってことで。


  ◇ ◇ ◇


 郷田晃生の夢を見てから、下半身の熱が暴走する気配がなくなった。
 あの夢を見たからなのか、ただ単にスッキリする頻度が増えたからなのか。タイミング的にはどちらとも言えた。
 まあ今朝もスッキリさせてもらえたし、今日も一日万全の体調で過ごせるだろう。

「よう羽彩。おはよう」
「あう……。お、おはよう晃生……」

 なんとか遅刻せずに登校できた。自分の席に座って羽彩にあいさつをすると、彼女は顔を真っ赤にしてぽしょぽしょと小声であいさつを返す。
 金髪ギャルは恥じらいを持つ乙女のような反応である。まるで好きな人に突然話しかけられた人見知り女子のようだ。って言うのは意地悪になるか。

 あの日、羽彩は日葵と共に俺の女になった。
 ずっと恥ずかしがってばかりの彼女だったが、快楽で意識を飛ばしてからは俺でも驚くほど求めてきた。あのエリカが驚くほどだったのだから、相当なものだろう。
 そして羽彩が再び目を覚ました時、正気に戻ったみたいに恥ずかしさで悶えてしまった。経験者になったとは思えないほどの純情っぷりであった。

「昨日もしちまったが、身体は大丈夫か?」
「大丈夫っていうか……その、えっと……うぅ、晃生のバカ」

 赤面した金髪ギャルは涙目になって睨みつけてきた。睨まれて可愛いと感じてしまう俺は正常で間違いない。
 無造作に羽彩のサイドテールを撫でる。女の髪に無断で触ったにもかかわらず、彼女は表情に喜びを表してくれて、ついその小さな顎に触れてしまった。

「はうぅぅぅぅ~~」

 顎の下をこちょこちょと撫でてやれば、羽彩はだらしなく表情を緩ませた。犬のように尻尾をブンブン振っているような姿を幻視してしまう。
 愛くるしい彼女に、下半身がピクンと反応する。おいおい、さっきスッキリしたばかりだろうが。
 落ち着いてきたかと思ったが、やはり暴れん坊が簡単に大人しくなるわけがないか。羽彩とじゃれるのを止めて、授業の準備をしておく。

「晃生ぉ……」

 切なそうな羽彩の声。犬が悲しそうに鳴いているみたいに聞こえて、無視することはできなかった。

「また後でな」

 俺がそう言った時に浮かべた羽彩の笑顔ったらもう……。後で全力で可愛がらなければという使命感が芽生えるのに充分な破壊力だった。


  ◇ ◇ ◇


 そんなこんなで、少しだけ日常の変化を感じていた。

「おい郷田」

 そんな俺に近づく影。まあ郷田晃生に話しかけてくる奴なんて数える程度だけどな。
 その数少ないクラスメイト。野坂純平が腕を組んで仁王立ちしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ

みずがめ
恋愛
 俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。  そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。  渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。  桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。  俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。  ……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。  これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

悩んでいる娘を励ましたら、チアリーダーたちに愛されはじめた

上谷レイジ
恋愛
「他人は他人、自分は自分」を信条として生きている清水優汰は、幼なじみに振り回される日々を過ごしていた。 そんな時、クラスメートの頼みでチアリーディング部の高橋奈津美を励ましたことがきっかけとなり、優汰の毎日は今まで縁がなかったチアリーダーたちに愛される日々へと変わっていく。 ※執筆協力、独自設定考案など:九戸政景様  高橋奈津美のキャラクターデザイン原案:アカツキ様(twitterID:aktk511) ※小説家になろう、ノベルアップ+、ハーメルン、カクヨムでも公開しています。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

処理中です...