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3.男女の性事情

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 ラブホテルのベッドに男女が並んで座っている。男は服を着ているが、女はバスタオル一枚だけを身に纏っているという煽情的な姿だ。場所と格好を考えれば、これから大人の時間が始まりそうな雰囲気があった。
 俺が相手である以上、もちろんそんなことがあるはずもなく。クラスメイトであり、この世界のメインヒロインである白鳥日葵はなぜ俺を誘惑したのか、その理由を話してくれた。

「私……野坂のさか純平じゅんぺいくんと付き合っているの」

 知っている。原作の情報だからな。
 野坂純平。クラスメイトであり、白鳥日葵の幼馴染である。
 原作では高校入学を機に、野坂は長年募っていた恋心を白鳥に告白した。
 最初は弟のように思っていた幼馴染からの告白に、白鳥は動揺し、返事を保留にした。だが後日、大切な幼馴染の悲しむ顔を見たくないからと告白を受けて、晴れて二人は付き合うようになったのだ。
 そして、順調に仲を深めていく最中、二人の仲を裂くように郷田晃生が恋人を無理やり……。まあつまり、寝取り展開ってわけだ。
 野坂純平は原作主人公で、彼が好きになる女子がみんな寝取られていく。脳を破壊されそうな展開が続いていくが、俺は寝取る側として読んでいたのでとてもお世話になったものだ。

「この間ね、純平くんと初めてエッチしようとしたの」

 思わず噴き出しそうになったのをなんとか耐える。女子って自分の性事情を他の男子に話しちゃうもんなのか?
 いや、話を聞くと言ったのは俺だ。最初から話の腰を折るわけにもいかない。無言で続きを促した。

「それでね……。私の裸を見た純平くんが『あ、俺おっぱい大きい女の子が苦手なんだ』って言ったの」
「は?」

 これから彼女とエッチしようって時に、何言ってんの純平くん?

「その日はそれでお終い。それからなんだかギクシャクしちゃって……。私の身体に魅力がなかったせいで純平くんに嫌な思いをさせてしまったの……」

 白鳥は悲しみの涙を零す。俺は原作で読んだことのなかった情報に困惑していた。

 とりあえず話を整理しよう。
 告白したのは野坂からだ。原作を信じていいのなら、二人の仲は良好だったはずだ。
 付き合っているのだからエッチする展開になるのも当然だ。しかし、いざ裸を見せると「おっぱい大きい女の子は苦手」ときた。
 それから二人の関係がギクシャクして、白鳥が俺をラブホテルに誘うという展開になったわけか。……うーん、白鳥の口振りからして自分の魅力を俺で確認したかったんだろうが、ぶっ飛んだ行動にも程があるだろ。
 ここで白鳥の行動については置いておこう。野坂の言動については少しピンときたものがあるしな。

「その、初めてのエッチの時だけど……。白鳥が裸になって、野坂は服を脱いだのか?」

 顔が熱くなる。そういうことを平気で尋ねられる胆力は、本来なら俺は持ち合わせていないのだ。

「え? えーと……。確かパンツを穿いたままだったわ」

 うん、その答えを聞いてなんとなくの想像はついた。
 おそらく初エッチの時、野坂は白鳥の美しく迫力のある裸体に気後れしたのだろう。緊張しすぎてムスコが立ち上がらない。一定数の男はそういう悩みを抱えている。初めてだったならなおさらだ。
 自分の情けないところを誤魔化すためなのか、野坂は心にもないことを言ってしまった。「大きいおっぱいが苦手」だなんて、自分から告白しておいて今更すぎる。
 まあ気持ちがわからんでもない。可愛い女の子を前にして、男の象徴が反応しないのはショックだろう。その場をなんとか切り抜けようと見栄を張ってしまうのは、男の性みたいなものだ。

「まあ気にするなって。今はギクシャクしていても、時間が解決してくれるって。野坂が大きいおっぱいを嫌っているなんてあるはずないだろ」

 そこまで想像できたものの、白鳥にそのまま伝えるのは憚られた。
 いやだってさ、これを言っちゃうと野坂の男の沽券にかかわる。あくまで俺の想像でしかないし、変に伝えて余計に関係がこじれでもしたら、それこそ責任を取れない。
 無難に聞き流してしまおう。話だけは聞いたし、俺の役目は終わったってことで。

「嘘っ。絶対に無理よ。時間が経っても変わらないわっ!」

 白鳥はネガティブ発言を繰り返す。その顔は悲しみに暮れたままだった。
 彼氏に拒絶されたのがよほど堪えたのだろう。胸の大きさというどうしようもないことを言われて、自分でも何をしていいのかわからなくなっているのかもしれない。

「郷田くんだって私のこと、魅力がないって思っているでしょう?」
「そんなこと思ってないって」
「嘘よ! ……だったら、ちゃんと見てみてよっ」

 白鳥がすくっと立ち上がる。それから俺の正面でその魅力的な身体を強調させた。
 バスタオル一枚という煽情的な姿が俺の眼前にさらされる。あまりに近すぎて、彼女の良い匂いが鼻腔をくすぐって仕方がない。
 白鳥はかろうじてその身体を守っているバスタオルに手をかけた。

「ほわぁっ!?」

 思わず変な声を出してしまった。
 だって、いきなり白鳥の身体を守っていたバスタオルがはらりと落ちたから。そうすれば当然何一つ身に纏っていない姿がさらされるわけで……。俺は大事な肌色が見えるギリギリで目を閉じた。

「ちゃんと見て……。私、そんなに魅力ない?」

 あまりに近すぎる声。反応して目を開ければ、白鳥の顔がすぐそこにあった。
 涙を零しながら裸体をさらす美少女。あまりにも美しく、何よりエロくて目を奪われてしまった。
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