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三つ編みにしてあげたい(小学四年生)
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三つ編み女子。勝手ながら俺のイメージを述べさせてもらえば、大人しい文学少女である。
長さ的に男ではマネしづらい髪型。自然と女の子の髪型のイメージができていた。女の子でそれなりの長さの髪があれば一度はやったことのある髪型かもしれない。
そう考えていたはずなのに、俺は葵ちゃんと瞳子ちゃんが三つ編みにしているイメージがまったくできていなかった。
「あれ、葵ちゃん。今日は髪型変えたの?」
「えへへー、わかる?」
朝から葵ちゃんはご機嫌だった。
葵ちゃんとは登校の班がいっしょだ。いつもの集合場所に来てみれば、綺麗な黒髪を三つ編みにしている葵ちゃんがいた。
同じクラスの女子で三つ編みにしている子が何人かいるけれど、葵ちゃんの三つ編みは初めて見た。
一見素朴な印象を抱かせるが、そこは滅多にお目にかかれないほど美少女な葵ちゃん。大人しめな清楚さが内面の輝きをより引き立てている。一言でまとめると超かわいい。
「お母さんに教えてもらったんだよー。私一人で三つ編みに結べるようになったの」
にぱーと笑顔の花が咲く。
葵ちゃんの髪は長い。髪型もいろいろ教え甲斐があるのかもしれない。
「そうなんだね。葵ちゃん一人でできるなんてすごいよ」
「えへへー」
にこりんぱーと笑顔の花が咲き乱れた。ものすっごく嬉しいってのが伝わってくる。
葵ちゃんの笑顔はみんなを幸せにする。とくに上級生の女子の皆様方から絶賛されていた。女の子の髪型の話題になると男の俺はのけ者にされがちだ……。
それでもかわいいってのは男子の共通認識である。声をかけられずとも、視線をちらちら向ける者が数人いた。学校に着けばその人数はもっと増えるだろう。
上機嫌の葵ちゃんに合わせてか、登校の班のみんなの足取りは軽い。楽しい雰囲気って伝染するものだよね。
「あら葵、今日はいつもと雰囲気違うじゃない」
もう少しで学校に着くというところで、瞳子ちゃんがいる班と合流した。
瞳子ちゃんの髪型は安定のツインテールだ。朝の陽光で銀髪がきらめいている。
「そうなのっ。私自分で結んだんだよ」
葵ちゃんは三つ編みにした髪を見せつけながら言った。彼女なりに自慢したいようだ。
「へぇー、すごいじゃない」
クールな反応に見えるだろうが、俺は見逃さなかった。瞳子ちゃんの目がキラッキラに輝いたことを。
「葵ちゃん、せっかくだから瞳子ちゃんに三つ編みのやり方を教えてあげたらどうかな?」
俺がそう言うと葵ちゃんがやる気のある態度を見せる。
「うんっ、私に任せてよ!」
葵ちゃんが瞳子ちゃんに教えてあげる、という状況は珍しい。張り切っている彼女を眺めていると微笑ましくなった。
※ ※ ※
教室。椅子に座っている瞳子ちゃんの表情からは緊張が見て取れた。
「えーっとね……。ここはこうだから……こうして……あれー?」
瞳子ちゃんの後ろには、彼女の髪をいじっている葵ちゃんの姿があった。
何がどう違うかはわからないが、葵ちゃんはしきりに首をかしげている。髪を触られている当人が不安になっても仕方がないだろう。
にしても、ツインテールじゃない瞳子ちゃんって貴重な気がする。葵ちゃんが三つ編みにしようとして、でもできなくて変わった髪型にされている。銀髪がうねうねしてなんだか不思議。
「あ、葵? 大丈夫かしら……?」
「うん……任せて……」
集中しているせいか葵ちゃんの返事はおざなりだ。
ここは俺が声をかけて仕切り直しさせた方がいいかもしれない。もうすぐ始業のチャイムが鳴るし。
「葵ちゃん、もうすぐ授業始まるし続きは次の休み時間に──」
「今集中してるから黙ってて!」
「は、はいっ……」
俺の方が黙らされてしまった……。
これには俺だけじゃなく、瞳子ちゃんもビクリと体を震わせていた。うん、すぐ後ろからあんな声出されたらそりゃあびっくりするよね。
葵ちゃんの気迫を前に、俺と瞳子ちゃんは硬直してしまった。心なしか教室の空気もピリピリしている気がする。その緊張感を生み出しているのは葵ちゃん一人の集中力からだった。
「あっ、そうだ。こうするんだった」
ぱっとひらめいたのか、葵ちゃんの表情が明るくなった。
それからは速かった。さっきまでまごついていたのが嘘みたいに彼女の手が動く動く。あっという間に瞳子ちゃんの綺麗な銀髪は三つ編みの形となった。
「わぁ、すごいじゃない葵。ちゃんと三つ編みになったわ」
三つ編みになった髪に触れる瞳子ちゃんは嬉しそうだ。この反応には葵ちゃんもご満悦のようだ。かわいらしいどや顔を見せていらっしゃる。本当にかわいいなぁ。
「どう? 俊成もかわいいって思うかしら?」
三つ編みバージョンの瞳子ちゃんがもじもじとうかがってくる。ちょっとだけ大人しい雰囲気となった瞳子ちゃんにやられてしまいそうだ……。銀髪に三つ編み……アリだな!
「瞳子ちゃんの三つ編みとってもかわいいね。なんだか雰囲気変わるよ」
「そ、そう? ……ふふっ」
照れている三つ編み瞳子ちゃんもかわいかった。葵ちゃんも満足げに頷いている。「ワシが育てた」と言わんばかりの頷きっぷりだった。
瞳子ちゃんも、葵ちゃんも髪が長いから三つ編みが映える。髪型が変わるのって目の保養になるってことを知った日だった。
……あと、集中している葵ちゃんに声をかけてはいけない。そう心に留めた日でもあった。
長さ的に男ではマネしづらい髪型。自然と女の子の髪型のイメージができていた。女の子でそれなりの長さの髪があれば一度はやったことのある髪型かもしれない。
そう考えていたはずなのに、俺は葵ちゃんと瞳子ちゃんが三つ編みにしているイメージがまったくできていなかった。
「あれ、葵ちゃん。今日は髪型変えたの?」
「えへへー、わかる?」
朝から葵ちゃんはご機嫌だった。
葵ちゃんとは登校の班がいっしょだ。いつもの集合場所に来てみれば、綺麗な黒髪を三つ編みにしている葵ちゃんがいた。
同じクラスの女子で三つ編みにしている子が何人かいるけれど、葵ちゃんの三つ編みは初めて見た。
一見素朴な印象を抱かせるが、そこは滅多にお目にかかれないほど美少女な葵ちゃん。大人しめな清楚さが内面の輝きをより引き立てている。一言でまとめると超かわいい。
「お母さんに教えてもらったんだよー。私一人で三つ編みに結べるようになったの」
にぱーと笑顔の花が咲く。
葵ちゃんの髪は長い。髪型もいろいろ教え甲斐があるのかもしれない。
「そうなんだね。葵ちゃん一人でできるなんてすごいよ」
「えへへー」
にこりんぱーと笑顔の花が咲き乱れた。ものすっごく嬉しいってのが伝わってくる。
葵ちゃんの笑顔はみんなを幸せにする。とくに上級生の女子の皆様方から絶賛されていた。女の子の髪型の話題になると男の俺はのけ者にされがちだ……。
それでもかわいいってのは男子の共通認識である。声をかけられずとも、視線をちらちら向ける者が数人いた。学校に着けばその人数はもっと増えるだろう。
上機嫌の葵ちゃんに合わせてか、登校の班のみんなの足取りは軽い。楽しい雰囲気って伝染するものだよね。
「あら葵、今日はいつもと雰囲気違うじゃない」
もう少しで学校に着くというところで、瞳子ちゃんがいる班と合流した。
瞳子ちゃんの髪型は安定のツインテールだ。朝の陽光で銀髪がきらめいている。
「そうなのっ。私自分で結んだんだよ」
葵ちゃんは三つ編みにした髪を見せつけながら言った。彼女なりに自慢したいようだ。
「へぇー、すごいじゃない」
クールな反応に見えるだろうが、俺は見逃さなかった。瞳子ちゃんの目がキラッキラに輝いたことを。
「葵ちゃん、せっかくだから瞳子ちゃんに三つ編みのやり方を教えてあげたらどうかな?」
俺がそう言うと葵ちゃんがやる気のある態度を見せる。
「うんっ、私に任せてよ!」
葵ちゃんが瞳子ちゃんに教えてあげる、という状況は珍しい。張り切っている彼女を眺めていると微笑ましくなった。
※ ※ ※
教室。椅子に座っている瞳子ちゃんの表情からは緊張が見て取れた。
「えーっとね……。ここはこうだから……こうして……あれー?」
瞳子ちゃんの後ろには、彼女の髪をいじっている葵ちゃんの姿があった。
何がどう違うかはわからないが、葵ちゃんはしきりに首をかしげている。髪を触られている当人が不安になっても仕方がないだろう。
にしても、ツインテールじゃない瞳子ちゃんって貴重な気がする。葵ちゃんが三つ編みにしようとして、でもできなくて変わった髪型にされている。銀髪がうねうねしてなんだか不思議。
「あ、葵? 大丈夫かしら……?」
「うん……任せて……」
集中しているせいか葵ちゃんの返事はおざなりだ。
ここは俺が声をかけて仕切り直しさせた方がいいかもしれない。もうすぐ始業のチャイムが鳴るし。
「葵ちゃん、もうすぐ授業始まるし続きは次の休み時間に──」
「今集中してるから黙ってて!」
「は、はいっ……」
俺の方が黙らされてしまった……。
これには俺だけじゃなく、瞳子ちゃんもビクリと体を震わせていた。うん、すぐ後ろからあんな声出されたらそりゃあびっくりするよね。
葵ちゃんの気迫を前に、俺と瞳子ちゃんは硬直してしまった。心なしか教室の空気もピリピリしている気がする。その緊張感を生み出しているのは葵ちゃん一人の集中力からだった。
「あっ、そうだ。こうするんだった」
ぱっとひらめいたのか、葵ちゃんの表情が明るくなった。
それからは速かった。さっきまでまごついていたのが嘘みたいに彼女の手が動く動く。あっという間に瞳子ちゃんの綺麗な銀髪は三つ編みの形となった。
「わぁ、すごいじゃない葵。ちゃんと三つ編みになったわ」
三つ編みになった髪に触れる瞳子ちゃんは嬉しそうだ。この反応には葵ちゃんもご満悦のようだ。かわいらしいどや顔を見せていらっしゃる。本当にかわいいなぁ。
「どう? 俊成もかわいいって思うかしら?」
三つ編みバージョンの瞳子ちゃんがもじもじとうかがってくる。ちょっとだけ大人しい雰囲気となった瞳子ちゃんにやられてしまいそうだ……。銀髪に三つ編み……アリだな!
「瞳子ちゃんの三つ編みとってもかわいいね。なんだか雰囲気変わるよ」
「そ、そう? ……ふふっ」
照れている三つ編み瞳子ちゃんもかわいかった。葵ちゃんも満足げに頷いている。「ワシが育てた」と言わんばかりの頷きっぷりだった。
瞳子ちゃんも、葵ちゃんも髪が長いから三つ編みが映える。髪型が変わるのって目の保養になるってことを知った日だった。
……あと、集中している葵ちゃんに声をかけてはいけない。そう心に留めた日でもあった。
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