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二章 魔道学校編
第56話 始まりの終わり
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静かな、けれど強靭な意思を感じさせる立ち姿だった。
クエミー・ツァイベン。勇者の子孫であり、その力を受け継いだ少女。
勇者というのだから魔王に匹敵するどころか打倒してしまえるほどの強大な力なのだろう。魔王なんて存在は昔話だけだから比較しようもないけれど。
実際にわたしとディジーはその実力の前にまったく歯が立たなかった。ディジーに至っては大精霊の力まで使用したにも関わらずだ。
アルベルトさんが強いのは知っている。その奥底までは知らないけれど、成長したわたしでもまだまだ足元にも及ばないのだろうと思う。
だからって当代の勇者であるクエミーに勝てるかと問われれば、わたしでは判断できない。そもそも勇者という存在に勝る人はいるのだろうか?
「できれば黙って通してほしいんだけどな」
「黙って捕縛されてくれるのならいいですよ。牢屋までお通ししましょう」
「けっ。ユーモアのセンスに欠けてらあ」
アルベルトさんがわたしを隠すように前に出る。
クエミーの視界に隠れて息を吐く。気づかないうちに息を止めてしまうほど緊張していたらしい。
「まさか、本当に逃げられると思っていないでしょう?」
「思ってるから逃げてるに決まってんだろ。真面目な顔してバカ言ってんじゃねえよ」
ア、アルベルトさんっ。あまり刺激しない方がいいのではないでしょうか!
やはりと言うべきか。雰囲気が一気に張り詰めたものへと変わる。怒ってる? 怒ったよね。
わたし一人だけオロオロしてしまう。アルベルトさんに焦った様子はない。空気が変わったことに気づいてはいるんだろうけど。……気づいてるよね? そんな鈍感じゃないよね?
ふぅ、とクエミーの吐息がわたしの耳にも届いた。彼女らしくなくひどく面倒そうなやれやれ感のある吐息だった。
「まあ、ここまできておいて言葉で説得できるだなんて思っていませんでしたが」
アルベルトさんの背中越しにクエミーを覗く。彼女は腰に差した剣を抜くところだった。
あ、やばい。
本能からか経験からか。わたしの中の危険信号が鳴り響く。それをアルベルトさんに伝えようとするものの、うまく声が出なかった。情けないことに張り詰めた空気にやられてしまったようだ。
「なら、力ずくで捕縛させてもらいます」
「エルちゃん失礼!」
「え、わぁっ!?」
ぐるんと視界が回った。ついでに浮遊感。
夜空が視界に広がる。今日は星が綺麗ですねー。なんて呑気にしている場合じゃない。
着地音とともにはっとする。一瞬で現実逃避してた。
「大丈夫かエルちゃん」
「は、はい」
アルベルトさんが心配そうに覗き込んでくる。
というかこの態勢……、お姫様抱っこではないでしょうか? 足ついてないんですけど。……そういう問題じゃないな。
「下ろすよ」
一声かけられて地面へと着地する。ちょっとの間だけだったのになんだか足元がフワフワする。
「良い反応ですね。あなたは魔道士ではないのですか?」
クエミーがゆっくりと振り向いていた。どうやら彼女の攻撃をかわしたらしかった。
「はあ? どっからどう見ても天才魔道士に決まってるだろうが」
どっからどう見たら天才だってわかるんだろう。状況が状況なだけにツッコミは控えておく。アルベルトさん状況わかってますよね?
「エルちゃん」
アルベルトさんが小声でわたしに話しかける。
「次にあの勇者が動いたら全力で逃げろ」
「え?」
それってわたし一人でってこと? アルベルトさんは?
戸惑うわたしに彼は静かに言葉をかける。
「後ろを向いてすぐ走れ。こっちは振り向くな。門まで行けば何とかしてくれる奴がいるからそいつに頼るんだ」
「アルベルトさんは?」
「勇者様の足止め。大丈夫。すぐ追いかけるからさ」
アルベルトさんが大丈夫だと言っている。彼が言うなら間違いない。そのはずだ。
「……はい、わかりました」
頷くしかない。そうするしかない。そう心の中で何度も納得させる。それが正しい判断だと言い聞かせる。
だって今のわたしはただの足手まといだもの。
「何を相談しているかは知りませんが、そんな時間はありませんよ」
一足飛びで接近してくるクエミーを見てからわたしは走り出した。
スタートのタイミングが遅れた。あの速さの前ではほとんど手遅れみたいなものだ。
けれどアルベルトさんがいる。彼が何とかしてくれるのなら逃げられるはずだ。だからわたしは気にせず走ることだけに集中した。
背後から金属音が聞こえる。アルベルトさんって武器か何か持ってたっけ? 今はそんなこと些細な問題だ。思考に使う余力があるのなら足を動かすことに集中させなければ。
それができなかったから追いつかれてしまったのか。
「逃がしませんよ」
ふわり、と。クエミーがわたしの前に降り立った。
その動作は軽やかで、恐ろしく俊敏だった。
わたしの前までジャンプした彼女は、その勢いのまま体を軸にして剣を回転させる。
この剣の軌道って……わたしに向かってる?
脅しなんかじゃない。剣の刃がわたしのからだを両断しようと迫っていた。
それがわかるほどにスローに見えている。なのに動けない。だってこれはわたしが反応できないほどの速さだからだ。
何かが視界をチラついた気がした。走馬燈? ……嘘だろ。
わたし、死ぬのか? こんなわけのわからないまま、まだ何もやってないのに。
一気に恐怖で心が凍る。
二度目の死。それを意識して、嫌だ! と声にならない叫びを漏らしていた。
「あ」
強制的に吐き出された声に意味はなかった。
何かに突き飛ばされて衝撃で肺から息が漏れたのだ。ただそれだけのこと。
わたしは地面へ転がった。強い力だったようで二転三転と勢いを殺すまで転がった。いきなりのことで受け身すら取れずに無様に地面に体を横たえる。
「ぐああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
まるで獣の叫びのようだった。
なんとか上体を起こして声の方へと向く。その瞬間、ぼとりと目の前に何かが落ちた。
それを見る。棒状のようで、先端が枝分かれしていた。
「――ッ!?」
それを認識して喉が引きつった。
それは人間の手だった。
肘から先の前腕から手にかけて、それが丸まるわたしの目の前にあった。
顔を上げる。剣を振るったクエミーと、腕を押さえるアルベルトさんがいた。
いや、腕を押さえているのに腕がない。アルベルトさんの右肘から先が消失していた。
つまりわたしの目の前にあるこれは彼の……?
「あ、ああ……」
……なんでだ? なんでこんなことになっている?
クエミーはわたし達に直接的な被害を加えたりはしない。勝手にそう思っていた。
だって彼女はわたしのクラスメートで。いくら国に仕える勇者の家系だからってまだわたしと同じ年なのだ。子供だと思っていたのだ。
やっと気づいた。自分自身の認識の甘さに。
クエミーは最初から甘い考えなんて持っていなかった。わたしを捕まえられないのなら殺しても構わない。
だから躊躇なく剣が振るわれた。そしてわたしを庇ったアルベルトさんが斬られてしまった。
ここは平和な現代日本なんかじゃない。小さい頃に誘拐されてそう思ったはずなのに、わたしはまだ勘違いしていたのだ。
なぜ自分に都合の良い世界だと勘違いしていたのだろう。
王都に来た時から気づいていたはずだ。敵は多いって。最初から嫌われていたじゃないか。
でも、ホリンくんが友達になってくれて、そこから段々と交友が広がって。そして対校戦なんてものに優勝して調子に乗ってたんだ。
もっと警戒すべきだった。何事も怪しむべきだった。わたしの注意力のなさがアルベルトさんを窮地に追いやった。
大丈夫だろう、なんてわけがない!
アルベルトさんの絶叫。痛みに苦しむ表情がわたしを責めているようだった。
「アウス! アウスーーッ!!」
アウスが姿を現す。間髪入れずにわたしは叫んだ。
「クエミーを倒す!!」
「エル」
「早く!」
「……わかったの」
出すのは最大出力。そうじゃないとクエミーには勝てない。
精霊術式ゴーレム。アウスが用意した力の塊に内側から魔力を通す。
一般的なゴーレムよりも精密さと出力が段違いだ。実際に大精霊の力を使ったディジーをも圧倒している。
クエミーの単純で突出した力と速さに対抗するためにはこれしかない。
ゴーレムを身にまとったわたしは膝を曲げる。そして飛び出した。
「!? ダメだエルちゃん!」
アルベルトさんの言葉を置き去りにしてクエミーへと拳を突き出した。剣で受け止められたが大きく後退させた。
「これは対校戦の……。なるほど、そういうことですか」
「クエミィィィィィィ!!」
激情に突き動かされる。
後ろへ跳躍したクエミーを追って体当たりする。予想していたかのように受け流されてしまう。
だけど関係ない。旋回する動きを利用して回し蹴りを放つ。直撃させて吹き飛ばした。
今まで見えなかったクエミーの動きが見える。このゴーレムを使えばいける!
「ダメだエルちゃん! 早く逃げろ!!」
そう言ったアルベルトさんの顔は蒼い。汗もすごかった。当たり前だ、腕が斬られたのだから。
彼はただわたしを救ってくれただけだ。こんな目に遭うなんてあっていいわけがない。
わたしが、わたしが! 今度はわたしが守る。それだけの力があるはずだ。
「よく、わかりました」
静かに、それでいて冷たい声だった。
蹴りの一撃。ただの蹴りじゃない。大精霊が作ったゴーレムにわたしの魔力が大量に注がれているゴーレムの蹴りだ。普通の人なら死んでもおかしくない一撃だった。
勇者の末裔というからには一撃で終わるとも思っていない。それでも無傷で済むとも思っていなかったのだ。
なのに、こっちへ歩いてくる彼女はまるで無傷のようではないか。その足取りにも変化がなく、まっすぐ歩を進めている。
「エル、私はあなたを忌み子だと思っていました。それも間違っていないのでしょうが、もう一つ抱えていたのですね。いえ、取り憑かれていると言えばいいのでしょうか」
何を? それを聞く前にクエミーが地面を蹴った。相変わらず速い。
それでも今のわたしならその動きを追える。そしてそれ以上の攻撃もできる。
魔力を循環させる。力を漲らせてゴーレムが動く。
「その悪魔、斬らせてもらいます!」
クエミーの剣が光り輝く。
不快にならない眩さだった。目を閉じることなく光を見据える。
目くらましにもならない。わたしは大きく拳を引く。あとはタイミングを合わせて突き出すだけだ。
がくん、と。ゴーレムが止まった。
え? 動かない? なんで?
ゴーレムが動かない。わたしの体も動かない。何もないのに縛られてしまったかのように動かせなくなっていた。
けれど前方にいるクエミーは止まらない。
真横に振るわれた剣によって、わたしはゴーレムとともに胴体を両断された。
※ ※ ※
『――エルはとても面倒だけど、悪いとは思わなかったの。そう長くもない付き合いであーしはエルのことが嫌いになれなかったの』
声が、聞こえた。
それは間違いなくアウスの声で、たぶんわたしの人生の中で一番聞きなれた声だと思う。
『ニンゲンなんてもうどうでもいいと思っていたの。それでもエルだけは、あなただけは違うの。いつのまにか特別になっていたの』
いつになく優しい声だった。アウスらしくもない。
アウスはいつも眠そうで、面倒くさそうにしていてちょっと気まぐれ。でもわたしの話をよく聞いてくれていた。
『あーしはエルに生きてほしいの。他の誰でもないあなたに。たくさん悩んで面倒だったけれど、たくさんの顔を見せてくれたの。あーしは何も言ってあげられないけれどお願いだから――』
言葉が途切れる。灰色の髪をおさげにした少女がらしくもなく優し気な目差しを向けていた。
どうした? 何か変な物でも食べた?
いっつも眠たげな目をしてるくせに似合わないよ。
だから、アウス――
「エルちゃん!!」
大声に驚いて目を覚ます。アルベルトさんの顔が視界に広がっていた。
「アルベルトさん?」
「ああアルベルトさんだ。よかった……」
言葉通り安堵しているのがわかる。
「……立てるか?」
「あ、はい」
わたしは倒れているようだった。上半身だけアルベルトさんに支えられている。
立ち上がったところで記憶が呼び起こされる。
「あれ? わたしクエミーに斬られたんじゃ……?」
ゴーレム越しに両断されていた。そのはずなのにわたしの上半身と下半身は繋がっている。もっと言えば無傷だ。
その事実は安心できることのはずなのに、心がひどく不安に襲われた。
「……今は結界魔法で持ちこたえているがすぐに破られる。今度こそ絶対に止めるから逃げてくれ」
アルベルトさんの言葉はわたしの疑問に対する答えじゃなかった。
そこでふと気づく。
「アウスは?」
アウスがいない。わたしの中ですらその存在を感じられなかった。
なぜ? そう思って、自分が無事なことに疑問を覚える。
頭の中がまとまらない。
「エル! 頼むから今は逃げてくれ」
アルベルトさんは必死さを感じさせる表情をしている。切羽詰まった彼に、それでも引き下がるわけにはいかなかった。
「でもっ……」
「……きっとアウスも俺も、後から追いかけるからさ」
彼はにっと笑った。それはとても痛々しくて、無理をしているのが誰が見ても明らかだっただろう。
「わかり……ました」
そこまでわかっていながらも、わたしは頷いた。
たとえ無理だと思えることだとしても、ヒーローならそれを覆すことだってできるはずだから。そう思わなければ不安に押しつぶされそうだったから。突然心が空虚になってしまって、またクエミーに立ち向かおうだなんて考えられなかったから、わたしはアルベルトさんの言葉を信じた。
そっと肩を押される。その方向に向かって足が動く。やがて加速していき、わたしは走っていた。
「無事でいてくれよ、エルちゃん」
小さく背中を押された気がした。
ここで逃げたことをわたしは後悔するだろう。そんな予感めいたものがありながらも、決して後ろを振り向かずにわたしは彼の視界から消えた。
※ ※ ※
バリンッ! と、ガラスを割ったような音を立てながら結界魔法は消滅した。
それを破壊した張本人であるクエミーの前には失った片腕を押さえる黒髪の青年がいた。
「エルはどこへ行きましたか?」
「お前バカ? そんなの教えるわけねえだろ」
黒髪の青年、アルベルトは小バカにするように口角を上げる。
だがその顔には脂汗を浮かべており、顔色は蒼白だ。どう見ても余裕がある状態ではない。
切断した腕からはもう血は流れていない。おそらく治癒魔法で応急処置をしたのだろう。
「ならそこを通してもらいます。あなただってこれ以上は無駄な抵抗だとわかっているでしょう」
クエミーから見たアルベルトの実力は国の魔道士の中でも上のレベルだと評価できるものだった。
本来は多人数で行使するはずの結界魔法を一瞬で構築したこと。しかもその強度は勇者である自分を足止めするに充分であったこと。
おそらく王宮の魔道士隊にいても遜色ないであろう。
だが、それだけだ。
魔法の才はあっても戦闘力はさほどでもない。
いや、一般的な強さというのであれば彼は充分過ぎるほどの実力を持っている。ただ単純に相手が悪かった。マグニカ最高戦力の一人であるクエミーの前には、どんな強者であろうと一般人と変わらない。
圧倒的な力。クエミーはマグニカの軍事力の一角を支えていると言っても過言ではないのだから。
「悪いがそれはできねえよ」
まさかの拒否。
他国でもマグニカ最高戦力たる三人は有名である。たった三人に震え上がる国は多い。それほどに圧倒的な実力なのだ。
アルベルトがそれを知らないわけはないだろう。どこぞの無知で名ばかりの貴族とは違うのだから。
腕を斬られて理解したはずだ。絶対に敵わない相手なのだと。それでも立ちはだかろうとするのはなぜ?
「別に彼女を殺すわけではありませんよ。抵抗するのなら腕の一本や二本は覚悟してもらいますが」
「はっはっはー。シャレになってねえよこの勇者様。お前みたいになんの意思も持たないで力だけ立派な奴が一番怖い」
「私の行動は国の意思です」
「その言葉はどう捉えても恐怖しかねえけどな。そんなクソみたいな意思よりはエルちゃんの命、未来の方が大切だ」
クエミーの眉が僅かに上がる。
「エルの? 確かに才能はあるようですがそれだけです。彼女には意思がない。そもそも自信すらさほど持っていないでしょう」
クエミーはエルをお調子者なところがあるが自信に欠けているように見えていた。
貴族であり、今年の対校戦の優勝者。いくらでも尊大に振る舞えた。
けれど、実際に会ってそういう少女ではないのだと感じた。少なくともクエミーからはエルにどこか自信のなさすら感じ取れた。
そんな魔法がちょっとできるだけの少女と祖国。どう考えてもどちらに天秤が傾くかなんて誰が見ても明らかだ。
なのに目の前の男は少女一人のために国を敵に回している。まるで理解できない。
「あなたは彼女の何なんですか?」
興味本位だった。他人に頓着しないクエミーには珍しいことである。
「あえて言うなら救う者であり、救われる者ってところかな」
「彼女が誰かを救うだなんて想像できませんね」
「だろうな。ご立派で正しい勇者様には、きっとエルちゃんはとんでもない未熟者で取るに足らない存在なんだろうよ」
「……」
「否定もしないし。まああれはあれでけっこう問題抱えてるみたいだしよ。小さい頃から変わってないところを見るに根っこの問題なんだろうけどな」
けどな、とアルベルトは続ける。
「勇者に救えない、いや、救わない人を彼女なら救えるんだよ」
「救わない?」
非難めいた言われように彼女の眉がピクリと動いた。
「そうだな。例えば……」
アルベルトの口元がにーと歪む。
「お前等が忌み嫌う悪魔とかな」
「ッ!? まさか貴様!」
瞬間、爆発でも起こしたかのような音を残しクエミーは駆け出していた。
アルベルトに向かって一直線。彼は動きを目で追えてはいない。だから反撃もできない。
――そのはずだった。
「じゃあな勇者様。大嫌いだったぜ」
アルベルトの体から黒い霧が噴出する。それはクエミー自身の姿を覆い、意識を闇へと落とした。
クエミー・ツァイベン。勇者の子孫であり、その力を受け継いだ少女。
勇者というのだから魔王に匹敵するどころか打倒してしまえるほどの強大な力なのだろう。魔王なんて存在は昔話だけだから比較しようもないけれど。
実際にわたしとディジーはその実力の前にまったく歯が立たなかった。ディジーに至っては大精霊の力まで使用したにも関わらずだ。
アルベルトさんが強いのは知っている。その奥底までは知らないけれど、成長したわたしでもまだまだ足元にも及ばないのだろうと思う。
だからって当代の勇者であるクエミーに勝てるかと問われれば、わたしでは判断できない。そもそも勇者という存在に勝る人はいるのだろうか?
「できれば黙って通してほしいんだけどな」
「黙って捕縛されてくれるのならいいですよ。牢屋までお通ししましょう」
「けっ。ユーモアのセンスに欠けてらあ」
アルベルトさんがわたしを隠すように前に出る。
クエミーの視界に隠れて息を吐く。気づかないうちに息を止めてしまうほど緊張していたらしい。
「まさか、本当に逃げられると思っていないでしょう?」
「思ってるから逃げてるに決まってんだろ。真面目な顔してバカ言ってんじゃねえよ」
ア、アルベルトさんっ。あまり刺激しない方がいいのではないでしょうか!
やはりと言うべきか。雰囲気が一気に張り詰めたものへと変わる。怒ってる? 怒ったよね。
わたし一人だけオロオロしてしまう。アルベルトさんに焦った様子はない。空気が変わったことに気づいてはいるんだろうけど。……気づいてるよね? そんな鈍感じゃないよね?
ふぅ、とクエミーの吐息がわたしの耳にも届いた。彼女らしくなくひどく面倒そうなやれやれ感のある吐息だった。
「まあ、ここまできておいて言葉で説得できるだなんて思っていませんでしたが」
アルベルトさんの背中越しにクエミーを覗く。彼女は腰に差した剣を抜くところだった。
あ、やばい。
本能からか経験からか。わたしの中の危険信号が鳴り響く。それをアルベルトさんに伝えようとするものの、うまく声が出なかった。情けないことに張り詰めた空気にやられてしまったようだ。
「なら、力ずくで捕縛させてもらいます」
「エルちゃん失礼!」
「え、わぁっ!?」
ぐるんと視界が回った。ついでに浮遊感。
夜空が視界に広がる。今日は星が綺麗ですねー。なんて呑気にしている場合じゃない。
着地音とともにはっとする。一瞬で現実逃避してた。
「大丈夫かエルちゃん」
「は、はい」
アルベルトさんが心配そうに覗き込んでくる。
というかこの態勢……、お姫様抱っこではないでしょうか? 足ついてないんですけど。……そういう問題じゃないな。
「下ろすよ」
一声かけられて地面へと着地する。ちょっとの間だけだったのになんだか足元がフワフワする。
「良い反応ですね。あなたは魔道士ではないのですか?」
クエミーがゆっくりと振り向いていた。どうやら彼女の攻撃をかわしたらしかった。
「はあ? どっからどう見ても天才魔道士に決まってるだろうが」
どっからどう見たら天才だってわかるんだろう。状況が状況なだけにツッコミは控えておく。アルベルトさん状況わかってますよね?
「エルちゃん」
アルベルトさんが小声でわたしに話しかける。
「次にあの勇者が動いたら全力で逃げろ」
「え?」
それってわたし一人でってこと? アルベルトさんは?
戸惑うわたしに彼は静かに言葉をかける。
「後ろを向いてすぐ走れ。こっちは振り向くな。門まで行けば何とかしてくれる奴がいるからそいつに頼るんだ」
「アルベルトさんは?」
「勇者様の足止め。大丈夫。すぐ追いかけるからさ」
アルベルトさんが大丈夫だと言っている。彼が言うなら間違いない。そのはずだ。
「……はい、わかりました」
頷くしかない。そうするしかない。そう心の中で何度も納得させる。それが正しい判断だと言い聞かせる。
だって今のわたしはただの足手まといだもの。
「何を相談しているかは知りませんが、そんな時間はありませんよ」
一足飛びで接近してくるクエミーを見てからわたしは走り出した。
スタートのタイミングが遅れた。あの速さの前ではほとんど手遅れみたいなものだ。
けれどアルベルトさんがいる。彼が何とかしてくれるのなら逃げられるはずだ。だからわたしは気にせず走ることだけに集中した。
背後から金属音が聞こえる。アルベルトさんって武器か何か持ってたっけ? 今はそんなこと些細な問題だ。思考に使う余力があるのなら足を動かすことに集中させなければ。
それができなかったから追いつかれてしまったのか。
「逃がしませんよ」
ふわり、と。クエミーがわたしの前に降り立った。
その動作は軽やかで、恐ろしく俊敏だった。
わたしの前までジャンプした彼女は、その勢いのまま体を軸にして剣を回転させる。
この剣の軌道って……わたしに向かってる?
脅しなんかじゃない。剣の刃がわたしのからだを両断しようと迫っていた。
それがわかるほどにスローに見えている。なのに動けない。だってこれはわたしが反応できないほどの速さだからだ。
何かが視界をチラついた気がした。走馬燈? ……嘘だろ。
わたし、死ぬのか? こんなわけのわからないまま、まだ何もやってないのに。
一気に恐怖で心が凍る。
二度目の死。それを意識して、嫌だ! と声にならない叫びを漏らしていた。
「あ」
強制的に吐き出された声に意味はなかった。
何かに突き飛ばされて衝撃で肺から息が漏れたのだ。ただそれだけのこと。
わたしは地面へ転がった。強い力だったようで二転三転と勢いを殺すまで転がった。いきなりのことで受け身すら取れずに無様に地面に体を横たえる。
「ぐああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
まるで獣の叫びのようだった。
なんとか上体を起こして声の方へと向く。その瞬間、ぼとりと目の前に何かが落ちた。
それを見る。棒状のようで、先端が枝分かれしていた。
「――ッ!?」
それを認識して喉が引きつった。
それは人間の手だった。
肘から先の前腕から手にかけて、それが丸まるわたしの目の前にあった。
顔を上げる。剣を振るったクエミーと、腕を押さえるアルベルトさんがいた。
いや、腕を押さえているのに腕がない。アルベルトさんの右肘から先が消失していた。
つまりわたしの目の前にあるこれは彼の……?
「あ、ああ……」
……なんでだ? なんでこんなことになっている?
クエミーはわたし達に直接的な被害を加えたりはしない。勝手にそう思っていた。
だって彼女はわたしのクラスメートで。いくら国に仕える勇者の家系だからってまだわたしと同じ年なのだ。子供だと思っていたのだ。
やっと気づいた。自分自身の認識の甘さに。
クエミーは最初から甘い考えなんて持っていなかった。わたしを捕まえられないのなら殺しても構わない。
だから躊躇なく剣が振るわれた。そしてわたしを庇ったアルベルトさんが斬られてしまった。
ここは平和な現代日本なんかじゃない。小さい頃に誘拐されてそう思ったはずなのに、わたしはまだ勘違いしていたのだ。
なぜ自分に都合の良い世界だと勘違いしていたのだろう。
王都に来た時から気づいていたはずだ。敵は多いって。最初から嫌われていたじゃないか。
でも、ホリンくんが友達になってくれて、そこから段々と交友が広がって。そして対校戦なんてものに優勝して調子に乗ってたんだ。
もっと警戒すべきだった。何事も怪しむべきだった。わたしの注意力のなさがアルベルトさんを窮地に追いやった。
大丈夫だろう、なんてわけがない!
アルベルトさんの絶叫。痛みに苦しむ表情がわたしを責めているようだった。
「アウス! アウスーーッ!!」
アウスが姿を現す。間髪入れずにわたしは叫んだ。
「クエミーを倒す!!」
「エル」
「早く!」
「……わかったの」
出すのは最大出力。そうじゃないとクエミーには勝てない。
精霊術式ゴーレム。アウスが用意した力の塊に内側から魔力を通す。
一般的なゴーレムよりも精密さと出力が段違いだ。実際に大精霊の力を使ったディジーをも圧倒している。
クエミーの単純で突出した力と速さに対抗するためにはこれしかない。
ゴーレムを身にまとったわたしは膝を曲げる。そして飛び出した。
「!? ダメだエルちゃん!」
アルベルトさんの言葉を置き去りにしてクエミーへと拳を突き出した。剣で受け止められたが大きく後退させた。
「これは対校戦の……。なるほど、そういうことですか」
「クエミィィィィィィ!!」
激情に突き動かされる。
後ろへ跳躍したクエミーを追って体当たりする。予想していたかのように受け流されてしまう。
だけど関係ない。旋回する動きを利用して回し蹴りを放つ。直撃させて吹き飛ばした。
今まで見えなかったクエミーの動きが見える。このゴーレムを使えばいける!
「ダメだエルちゃん! 早く逃げろ!!」
そう言ったアルベルトさんの顔は蒼い。汗もすごかった。当たり前だ、腕が斬られたのだから。
彼はただわたしを救ってくれただけだ。こんな目に遭うなんてあっていいわけがない。
わたしが、わたしが! 今度はわたしが守る。それだけの力があるはずだ。
「よく、わかりました」
静かに、それでいて冷たい声だった。
蹴りの一撃。ただの蹴りじゃない。大精霊が作ったゴーレムにわたしの魔力が大量に注がれているゴーレムの蹴りだ。普通の人なら死んでもおかしくない一撃だった。
勇者の末裔というからには一撃で終わるとも思っていない。それでも無傷で済むとも思っていなかったのだ。
なのに、こっちへ歩いてくる彼女はまるで無傷のようではないか。その足取りにも変化がなく、まっすぐ歩を進めている。
「エル、私はあなたを忌み子だと思っていました。それも間違っていないのでしょうが、もう一つ抱えていたのですね。いえ、取り憑かれていると言えばいいのでしょうか」
何を? それを聞く前にクエミーが地面を蹴った。相変わらず速い。
それでも今のわたしならその動きを追える。そしてそれ以上の攻撃もできる。
魔力を循環させる。力を漲らせてゴーレムが動く。
「その悪魔、斬らせてもらいます!」
クエミーの剣が光り輝く。
不快にならない眩さだった。目を閉じることなく光を見据える。
目くらましにもならない。わたしは大きく拳を引く。あとはタイミングを合わせて突き出すだけだ。
がくん、と。ゴーレムが止まった。
え? 動かない? なんで?
ゴーレムが動かない。わたしの体も動かない。何もないのに縛られてしまったかのように動かせなくなっていた。
けれど前方にいるクエミーは止まらない。
真横に振るわれた剣によって、わたしはゴーレムとともに胴体を両断された。
※ ※ ※
『――エルはとても面倒だけど、悪いとは思わなかったの。そう長くもない付き合いであーしはエルのことが嫌いになれなかったの』
声が、聞こえた。
それは間違いなくアウスの声で、たぶんわたしの人生の中で一番聞きなれた声だと思う。
『ニンゲンなんてもうどうでもいいと思っていたの。それでもエルだけは、あなただけは違うの。いつのまにか特別になっていたの』
いつになく優しい声だった。アウスらしくもない。
アウスはいつも眠そうで、面倒くさそうにしていてちょっと気まぐれ。でもわたしの話をよく聞いてくれていた。
『あーしはエルに生きてほしいの。他の誰でもないあなたに。たくさん悩んで面倒だったけれど、たくさんの顔を見せてくれたの。あーしは何も言ってあげられないけれどお願いだから――』
言葉が途切れる。灰色の髪をおさげにした少女がらしくもなく優し気な目差しを向けていた。
どうした? 何か変な物でも食べた?
いっつも眠たげな目をしてるくせに似合わないよ。
だから、アウス――
「エルちゃん!!」
大声に驚いて目を覚ます。アルベルトさんの顔が視界に広がっていた。
「アルベルトさん?」
「ああアルベルトさんだ。よかった……」
言葉通り安堵しているのがわかる。
「……立てるか?」
「あ、はい」
わたしは倒れているようだった。上半身だけアルベルトさんに支えられている。
立ち上がったところで記憶が呼び起こされる。
「あれ? わたしクエミーに斬られたんじゃ……?」
ゴーレム越しに両断されていた。そのはずなのにわたしの上半身と下半身は繋がっている。もっと言えば無傷だ。
その事実は安心できることのはずなのに、心がひどく不安に襲われた。
「……今は結界魔法で持ちこたえているがすぐに破られる。今度こそ絶対に止めるから逃げてくれ」
アルベルトさんの言葉はわたしの疑問に対する答えじゃなかった。
そこでふと気づく。
「アウスは?」
アウスがいない。わたしの中ですらその存在を感じられなかった。
なぜ? そう思って、自分が無事なことに疑問を覚える。
頭の中がまとまらない。
「エル! 頼むから今は逃げてくれ」
アルベルトさんは必死さを感じさせる表情をしている。切羽詰まった彼に、それでも引き下がるわけにはいかなかった。
「でもっ……」
「……きっとアウスも俺も、後から追いかけるからさ」
彼はにっと笑った。それはとても痛々しくて、無理をしているのが誰が見ても明らかだっただろう。
「わかり……ました」
そこまでわかっていながらも、わたしは頷いた。
たとえ無理だと思えることだとしても、ヒーローならそれを覆すことだってできるはずだから。そう思わなければ不安に押しつぶされそうだったから。突然心が空虚になってしまって、またクエミーに立ち向かおうだなんて考えられなかったから、わたしはアルベルトさんの言葉を信じた。
そっと肩を押される。その方向に向かって足が動く。やがて加速していき、わたしは走っていた。
「無事でいてくれよ、エルちゃん」
小さく背中を押された気がした。
ここで逃げたことをわたしは後悔するだろう。そんな予感めいたものがありながらも、決して後ろを振り向かずにわたしは彼の視界から消えた。
※ ※ ※
バリンッ! と、ガラスを割ったような音を立てながら結界魔法は消滅した。
それを破壊した張本人であるクエミーの前には失った片腕を押さえる黒髪の青年がいた。
「エルはどこへ行きましたか?」
「お前バカ? そんなの教えるわけねえだろ」
黒髪の青年、アルベルトは小バカにするように口角を上げる。
だがその顔には脂汗を浮かべており、顔色は蒼白だ。どう見ても余裕がある状態ではない。
切断した腕からはもう血は流れていない。おそらく治癒魔法で応急処置をしたのだろう。
「ならそこを通してもらいます。あなただってこれ以上は無駄な抵抗だとわかっているでしょう」
クエミーから見たアルベルトの実力は国の魔道士の中でも上のレベルだと評価できるものだった。
本来は多人数で行使するはずの結界魔法を一瞬で構築したこと。しかもその強度は勇者である自分を足止めするに充分であったこと。
おそらく王宮の魔道士隊にいても遜色ないであろう。
だが、それだけだ。
魔法の才はあっても戦闘力はさほどでもない。
いや、一般的な強さというのであれば彼は充分過ぎるほどの実力を持っている。ただ単純に相手が悪かった。マグニカ最高戦力の一人であるクエミーの前には、どんな強者であろうと一般人と変わらない。
圧倒的な力。クエミーはマグニカの軍事力の一角を支えていると言っても過言ではないのだから。
「悪いがそれはできねえよ」
まさかの拒否。
他国でもマグニカ最高戦力たる三人は有名である。たった三人に震え上がる国は多い。それほどに圧倒的な実力なのだ。
アルベルトがそれを知らないわけはないだろう。どこぞの無知で名ばかりの貴族とは違うのだから。
腕を斬られて理解したはずだ。絶対に敵わない相手なのだと。それでも立ちはだかろうとするのはなぜ?
「別に彼女を殺すわけではありませんよ。抵抗するのなら腕の一本や二本は覚悟してもらいますが」
「はっはっはー。シャレになってねえよこの勇者様。お前みたいになんの意思も持たないで力だけ立派な奴が一番怖い」
「私の行動は国の意思です」
「その言葉はどう捉えても恐怖しかねえけどな。そんなクソみたいな意思よりはエルちゃんの命、未来の方が大切だ」
クエミーの眉が僅かに上がる。
「エルの? 確かに才能はあるようですがそれだけです。彼女には意思がない。そもそも自信すらさほど持っていないでしょう」
クエミーはエルをお調子者なところがあるが自信に欠けているように見えていた。
貴族であり、今年の対校戦の優勝者。いくらでも尊大に振る舞えた。
けれど、実際に会ってそういう少女ではないのだと感じた。少なくともクエミーからはエルにどこか自信のなさすら感じ取れた。
そんな魔法がちょっとできるだけの少女と祖国。どう考えてもどちらに天秤が傾くかなんて誰が見ても明らかだ。
なのに目の前の男は少女一人のために国を敵に回している。まるで理解できない。
「あなたは彼女の何なんですか?」
興味本位だった。他人に頓着しないクエミーには珍しいことである。
「あえて言うなら救う者であり、救われる者ってところかな」
「彼女が誰かを救うだなんて想像できませんね」
「だろうな。ご立派で正しい勇者様には、きっとエルちゃんはとんでもない未熟者で取るに足らない存在なんだろうよ」
「……」
「否定もしないし。まああれはあれでけっこう問題抱えてるみたいだしよ。小さい頃から変わってないところを見るに根っこの問題なんだろうけどな」
けどな、とアルベルトは続ける。
「勇者に救えない、いや、救わない人を彼女なら救えるんだよ」
「救わない?」
非難めいた言われように彼女の眉がピクリと動いた。
「そうだな。例えば……」
アルベルトの口元がにーと歪む。
「お前等が忌み嫌う悪魔とかな」
「ッ!? まさか貴様!」
瞬間、爆発でも起こしたかのような音を残しクエミーは駆け出していた。
アルベルトに向かって一直線。彼は動きを目で追えてはいない。だから反撃もできない。
――そのはずだった。
「じゃあな勇者様。大嫌いだったぜ」
アルベルトの体から黒い霧が噴出する。それはクエミー自身の姿を覆い、意識を闇へと落とした。
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