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一章 領地編
第9話 まだまだ問題があるようです
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さて、魔道学校に通うと決めたものの、いくつか問題があった。
一つ目に年齢。入学が許される年齢は十五歳からだそうだ。十一歳のわたしはまだ四年ほど早いのだ。
二つ目にお金。貴族とはいえシエル家は下級中の下級。いいとこの商人ならうちよりも金持ちだろう。そういうことで学費を稼がなければならない。
三つ目に両親の承諾。領地を改革したと言っても過言ではないわたしを両親は離そうとしないだろう。やっぱりご飯食べられるのは大きいし、わたしがいなくなってから領民を押さえられるかは考えるまでもない。
以上三つの条件をクリアしなければ魔道学校へは通えないのだ。
一つ目の条件を期限と考えるなら、四年の内におかねと両親の説得を行わなければならないだろう。
まっ、なんとかなるでしょ。まだまだ時間もあるしね。
※ ※ ※
「ぐ、ぐわあああああぁぁぁぁぁっ!?」
中年の男が盛大にふっ飛ぶ。彼はまともに受け身も取れずに地面を転がった。
うわ~、すごく痛そう。
なんてこったい大丈夫かよ。……まあふっ飛ばしたのはわたしなんですけどね。
よろよろと男は立ちあがる。というか男はバガンだった。ギロリとわたしを睨んできた。
「ちゃんと受け身取ってくださいよー」
「テメーはもうちっと手加減しやがれってんだ!」
相変わらずキレやすいお方ですこと。唾を飛ばさないでほしいもんだよ。まったくもう。
「やれやれしょうがねえ奴だ、みたいな顔してんじゃねえよ! このガキやっぱりムカつくぜ!」
人の心を読まないでほしい。バガンのくせに生意気だ。
「バガンさん大丈夫ですか?」
ウィリアムくんが心配そうに近づいてきた。バガンが相手だというのに良い子だなぁ。
「おうよ。こんなもん屁でもねえぜ!」
平気だとアピールするように力こぶを作るバガンだった。顔は引きつっている。完全にやせ我慢だった。
わたしとバガンは模擬戦をしていたのだ。ウィリアムくんはそれを見学していたというわけだ。
実戦経験がある方が実になると思ったのだが、魔法は使えないわ剣術だって素人同然のバガン相手では練習台にもならない。バガンなんてすでに敵ではないのだよ。
「バガンが弱すぎて練習にもならないんですけど」
「うっせーな! バンバン魔法打ってきやがって調子に乗んな!」
「だって自分で俺は強いんだ! とか言ってたじゃん」
「……殴り合いだったらそうそう負けたことなんてなかったんだよ」
つまりチンピラのケンカレベルってことである。そんなこったろうと思ったけどね。
それでもなんだかんだで付き合ってくれるのがバガンなのだった。わたしを誘拐しようとした負い目もあるんだろうけど律儀なことである。口は悪いまんまだから感謝しようって気にはならないんだけども。
「後でベドスに相手してもらおう」
「父さんは今日仕事で遅くなるって言ってたよ」
「じゃあウィリアムくんといっしょに遊ぼう」
「うん」
ウィリアムくんは微笑んだ。かっこいいというよりもまだかわいらしさのある笑顔だった。なんというか守りたくなるね。
「おい、治癒魔法かけてくれよな」
「はいはい」
バガンに治癒魔法をかける。彼の傷はみるみる治っていった。いつ見ても便利ですな。
わたしの魔法を見てウィリアムくんはキラキラした目差しを向けてくる。けっこう気持ち良い瞬間だったりする。
バガンは仕事があると言って戻って行った。わたしはウィリアムくんと適当な広場へと場所を移す。
「ねえ、エル」
「何?」
「僕に魔法を教えてくれないかな」
もじもじしながらそう言ったウィリアムくんは抱きしめたくなるようないじらしさがあった。はっ、わたしにそんな趣味は……、いや、今は女だからありなのか?
美少年のお願いだ。できれば叶えてあげたいところである。
「わたし、人に何かを教えた経験なんてないけど。それでもいい?」
「もちろん。僕がエルの初めての弟子だなんて嬉しいよ」
嬉しいことを言ってくれる。なんだか将来女を手のひらで転がしそうな雰囲気がある。そのままの純粋なキミでいておくれ。
「安請け合いしてもいいの?」
懐からひょっこり顔を出すのはアウスだ。ウィリアムくんはアウスのことは見えないようだった。精霊使いとしての素質はないようだ。
「いいんだよ。別に減るもんじゃないしね。それに人を教えるのも勉強の内さ」
小声で返答する。アウスのことはウィリアムくんだけじゃなくみんなに秘密にしている。
それはアルベルトさんの言いつけだった。精霊の存在をみだりに話してはダメだよ。それがアルベルトさんの言葉だった。
それに従わなければならない。彼の言うことなのだからちゃんと聞かなければならないと思った。
次に会った時に言うことを聞かなかったなんて思われたくない。わたしはちゃんと言われたことを守れる良い子なのだ。
「アウス、ウィリアムくんに魔法を教えるの手伝ってよ」
「はいはいなの。まったく手のかかるご主人様なの」
「エル、何か言った?」
「ううん、なんでもないよ。ウィリアムくんにどうやって魔法を教えたもんかと考えてたとこ」
学校に行くまでにいろいろと問題はあるけれど、今は一つ一つやっていこう。
まずはウィリアムくんに魔法を教えよう。アルベルトさんがわたしにしてくれたことを、今度はわたしがウィリアムくんにやってあげるのだ。
一つ目に年齢。入学が許される年齢は十五歳からだそうだ。十一歳のわたしはまだ四年ほど早いのだ。
二つ目にお金。貴族とはいえシエル家は下級中の下級。いいとこの商人ならうちよりも金持ちだろう。そういうことで学費を稼がなければならない。
三つ目に両親の承諾。領地を改革したと言っても過言ではないわたしを両親は離そうとしないだろう。やっぱりご飯食べられるのは大きいし、わたしがいなくなってから領民を押さえられるかは考えるまでもない。
以上三つの条件をクリアしなければ魔道学校へは通えないのだ。
一つ目の条件を期限と考えるなら、四年の内におかねと両親の説得を行わなければならないだろう。
まっ、なんとかなるでしょ。まだまだ時間もあるしね。
※ ※ ※
「ぐ、ぐわあああああぁぁぁぁぁっ!?」
中年の男が盛大にふっ飛ぶ。彼はまともに受け身も取れずに地面を転がった。
うわ~、すごく痛そう。
なんてこったい大丈夫かよ。……まあふっ飛ばしたのはわたしなんですけどね。
よろよろと男は立ちあがる。というか男はバガンだった。ギロリとわたしを睨んできた。
「ちゃんと受け身取ってくださいよー」
「テメーはもうちっと手加減しやがれってんだ!」
相変わらずキレやすいお方ですこと。唾を飛ばさないでほしいもんだよ。まったくもう。
「やれやれしょうがねえ奴だ、みたいな顔してんじゃねえよ! このガキやっぱりムカつくぜ!」
人の心を読まないでほしい。バガンのくせに生意気だ。
「バガンさん大丈夫ですか?」
ウィリアムくんが心配そうに近づいてきた。バガンが相手だというのに良い子だなぁ。
「おうよ。こんなもん屁でもねえぜ!」
平気だとアピールするように力こぶを作るバガンだった。顔は引きつっている。完全にやせ我慢だった。
わたしとバガンは模擬戦をしていたのだ。ウィリアムくんはそれを見学していたというわけだ。
実戦経験がある方が実になると思ったのだが、魔法は使えないわ剣術だって素人同然のバガン相手では練習台にもならない。バガンなんてすでに敵ではないのだよ。
「バガンが弱すぎて練習にもならないんですけど」
「うっせーな! バンバン魔法打ってきやがって調子に乗んな!」
「だって自分で俺は強いんだ! とか言ってたじゃん」
「……殴り合いだったらそうそう負けたことなんてなかったんだよ」
つまりチンピラのケンカレベルってことである。そんなこったろうと思ったけどね。
それでもなんだかんだで付き合ってくれるのがバガンなのだった。わたしを誘拐しようとした負い目もあるんだろうけど律儀なことである。口は悪いまんまだから感謝しようって気にはならないんだけども。
「後でベドスに相手してもらおう」
「父さんは今日仕事で遅くなるって言ってたよ」
「じゃあウィリアムくんといっしょに遊ぼう」
「うん」
ウィリアムくんは微笑んだ。かっこいいというよりもまだかわいらしさのある笑顔だった。なんというか守りたくなるね。
「おい、治癒魔法かけてくれよな」
「はいはい」
バガンに治癒魔法をかける。彼の傷はみるみる治っていった。いつ見ても便利ですな。
わたしの魔法を見てウィリアムくんはキラキラした目差しを向けてくる。けっこう気持ち良い瞬間だったりする。
バガンは仕事があると言って戻って行った。わたしはウィリアムくんと適当な広場へと場所を移す。
「ねえ、エル」
「何?」
「僕に魔法を教えてくれないかな」
もじもじしながらそう言ったウィリアムくんは抱きしめたくなるようないじらしさがあった。はっ、わたしにそんな趣味は……、いや、今は女だからありなのか?
美少年のお願いだ。できれば叶えてあげたいところである。
「わたし、人に何かを教えた経験なんてないけど。それでもいい?」
「もちろん。僕がエルの初めての弟子だなんて嬉しいよ」
嬉しいことを言ってくれる。なんだか将来女を手のひらで転がしそうな雰囲気がある。そのままの純粋なキミでいておくれ。
「安請け合いしてもいいの?」
懐からひょっこり顔を出すのはアウスだ。ウィリアムくんはアウスのことは見えないようだった。精霊使いとしての素質はないようだ。
「いいんだよ。別に減るもんじゃないしね。それに人を教えるのも勉強の内さ」
小声で返答する。アウスのことはウィリアムくんだけじゃなくみんなに秘密にしている。
それはアルベルトさんの言いつけだった。精霊の存在をみだりに話してはダメだよ。それがアルベルトさんの言葉だった。
それに従わなければならない。彼の言うことなのだからちゃんと聞かなければならないと思った。
次に会った時に言うことを聞かなかったなんて思われたくない。わたしはちゃんと言われたことを守れる良い子なのだ。
「アウス、ウィリアムくんに魔法を教えるの手伝ってよ」
「はいはいなの。まったく手のかかるご主人様なの」
「エル、何か言った?」
「ううん、なんでもないよ。ウィリアムくんにどうやって魔法を教えたもんかと考えてたとこ」
学校に行くまでにいろいろと問題はあるけれど、今は一つ一つやっていこう。
まずはウィリアムくんに魔法を教えよう。アルベルトさんがわたしにしてくれたことを、今度はわたしがウィリアムくんにやってあげるのだ。
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