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24.乙女の決意(雛森由希視点)
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「……機は熟したと思うの」
「いきなり何の話だ?」
「ちゃんと聞いてよりっちゃん! あたしと能見くんの今後についてに決まってんじゃんっ!」
「そんな話の流れまったくなかったよな?」
あれ、そうだっけ? もしかして考えてばっかで口に出してなかったみたいな?
「まあまあ。由希ちゃん、機は熟したって、どういうことなのか説明してもらえるかしら?」
ふーちゃんが仕切り直してくれた。あたしは気を取り直して一から説明してあげることにする。
「こほんっ。あたしと能見くんが出会ってそろそろ二か月が経ちます」
「急に敬語なんか使ってどうしたんだ?」
「しーっ。せっかく由希ちゃんが説明しているんだから口を挟まないであげましょうよ」
ふーちゃんナイス。りっちゃんは静かにあたしの話を聞くことだね。
「男女が出会ってから三か月で何もなければ……脈なしと判断されてしまいます! というデータがあるそうです。だから、あたしは行動を起こさなきゃいけないのです!」
「それどこ情報だよ?」
「きっと大人の雑誌なんだわ。由希ちゃん影響されやすいから」
りっちゃんとふーちゃんは何をひそひそ話してるのっ。今はあたしが話してんのに。
「あたしのアピールは完璧です。この間は手作りクッキーを能見くんは食べてくれました。男子にとって女子の手作りクッキーは最高級のフレンチに勝ると言います」
「だからその情報はどこからくるんだよ。そもそも由希が食べられるもん作れたってのには驚いた」
「由希ちゃんがんばったのよ。恋は料理の腕まで変えてしまったのには私も驚かされたけれど」
今でも目を閉じれば鮮明に映る。能見くんがあたしの手作りクッキーを美味しそうに食べてくれた。そして笑顔で「ちゃんと食べられるもん作れたんだな。偉いぞ」って褒めてくれたのだ!
「別に美味しいとまでは言ってなかったよな」
「しっ。由希ちゃん気づいてないんだからそういうこと言わなくていいのよ」
「そこ二人! あたし大事な話してんだから私語禁止!」
まったくもうっ。あたしの人生がかかってんだからちゃんと聞いてよね。
気を取り直して、あたしは決意したことを口にした。
「出会って三か月という期限まであと少し。たくさんアピールもした。だからね……」
意識すると顔が熱くなってくる。恥ずかしさで唇が震えた。
でも、あたしの気持ちだから。りっちゃんとふーちゃんには先に言っておきたかった。
「あたし……、能見くんに告白するよ」
言い切って息をつく。本人に告白したわけでもないのに心臓のバクバクは止まらなかった。
あたしの決意を聞いて、りっちゃんとふーちゃんは喜ぶでもはやし立てるでもなかった。ただただ、心配そうな表情をしていた。
「由希、その……大丈夫か?」
「……うん。自分の気持ちに嘘はつけないから。あたし、能見くんに告白してみるよ」
りっちゃんはどこまでもあたしを心配してくれる。散々心配をかけてきたのだからしょうがないよね。あたしもりっちゃんに甘えてきたし。
「由希ちゃんが決めたことならいいと思うわ。由希ちゃんが自分から前に進もうとするのなら、私は応援したいもの」
「うん、ありがとうねふーちゃん……」
ふーちゃんはいつだって私を応援してくれた。あたしがどんな態度を取ったって、尊重し続けてくれた。
ずっとあたしは二人に支えられていた。ずっと寄りかかってた。だから、ちゃんと自分で動けるようになったって知ってもらいたかった。
……あたしは男の人が嫌いだ。近づかれるのも鳥肌が立つくらい大っ嫌いだ。
でも、能見くんは違っていた。
もちろん命懸けで助けられたというのもある。それはとてつもなく大きな出来事だったけど、彼に興味を持って接するうちにあたしの心はすごくあったかくなった。彼の傍にいると安心できた。
能見くんの笑顔が見たい。能見くんに喜んでほしい。能見くんの傍にいたい……。日に日にそういった気持ちが強くなった。
ああ、これが恋なんだなって。自分がまたそんな気持ちになれるだなんて驚いた。
この気持ちを彼に伝えたい。そう思えるようになったことに驚き、そして誇らしかった。
「……私も、応援するよ。能見と話してみて悪い奴じゃないと思う。由希の見る目は間違ってないと思う」
「うん。ありがとうりっちゃん」
言葉とは裏腹にりっちゃんの表情はあたしへの心配を表していた。それはまだ変えられない。
変えることができるのは、あたしの行動だけだと思う。
「ないとは思うけど……、何かあったらすぐに私を頼れ。風香もいる。由希の味方はここにいるんだからな」
「……うん。本当にありがとう」
あたしを心配してくれる親友。困った時、本当に頼れる親友だ。
りっちゃんとふーちゃんには、あたしは大丈夫だよって伝えたい。能見くんに告白することで、それを証明できるんだって思ってる。
パンッ! 手を叩いて雰囲気を変える。
「よーし! そんなわけでー、あたしが能見くんにどう告白すればいいか。みんなで考えよう!」
「そういうのって一人で考えるもんじゃないか?」
「由希ちゃんは言葉が不得意なのよ。律ったらわかっていないのだから」
「ひどくない!? あたしそんな言葉が不得意ってわけじゃ……」
不得意……かもしんないけど~。でも大事なのは気持ちでしょ! ハートだよハート!
「いいから! 二人も考えてよ!」
「「はーい」」
こうして、能見くんに告白する日に向けて、あたし達は作戦を立てるのであった。
「いきなり何の話だ?」
「ちゃんと聞いてよりっちゃん! あたしと能見くんの今後についてに決まってんじゃんっ!」
「そんな話の流れまったくなかったよな?」
あれ、そうだっけ? もしかして考えてばっかで口に出してなかったみたいな?
「まあまあ。由希ちゃん、機は熟したって、どういうことなのか説明してもらえるかしら?」
ふーちゃんが仕切り直してくれた。あたしは気を取り直して一から説明してあげることにする。
「こほんっ。あたしと能見くんが出会ってそろそろ二か月が経ちます」
「急に敬語なんか使ってどうしたんだ?」
「しーっ。せっかく由希ちゃんが説明しているんだから口を挟まないであげましょうよ」
ふーちゃんナイス。りっちゃんは静かにあたしの話を聞くことだね。
「男女が出会ってから三か月で何もなければ……脈なしと判断されてしまいます! というデータがあるそうです。だから、あたしは行動を起こさなきゃいけないのです!」
「それどこ情報だよ?」
「きっと大人の雑誌なんだわ。由希ちゃん影響されやすいから」
りっちゃんとふーちゃんは何をひそひそ話してるのっ。今はあたしが話してんのに。
「あたしのアピールは完璧です。この間は手作りクッキーを能見くんは食べてくれました。男子にとって女子の手作りクッキーは最高級のフレンチに勝ると言います」
「だからその情報はどこからくるんだよ。そもそも由希が食べられるもん作れたってのには驚いた」
「由希ちゃんがんばったのよ。恋は料理の腕まで変えてしまったのには私も驚かされたけれど」
今でも目を閉じれば鮮明に映る。能見くんがあたしの手作りクッキーを美味しそうに食べてくれた。そして笑顔で「ちゃんと食べられるもん作れたんだな。偉いぞ」って褒めてくれたのだ!
「別に美味しいとまでは言ってなかったよな」
「しっ。由希ちゃん気づいてないんだからそういうこと言わなくていいのよ」
「そこ二人! あたし大事な話してんだから私語禁止!」
まったくもうっ。あたしの人生がかかってんだからちゃんと聞いてよね。
気を取り直して、あたしは決意したことを口にした。
「出会って三か月という期限まであと少し。たくさんアピールもした。だからね……」
意識すると顔が熱くなってくる。恥ずかしさで唇が震えた。
でも、あたしの気持ちだから。りっちゃんとふーちゃんには先に言っておきたかった。
「あたし……、能見くんに告白するよ」
言い切って息をつく。本人に告白したわけでもないのに心臓のバクバクは止まらなかった。
あたしの決意を聞いて、りっちゃんとふーちゃんは喜ぶでもはやし立てるでもなかった。ただただ、心配そうな表情をしていた。
「由希、その……大丈夫か?」
「……うん。自分の気持ちに嘘はつけないから。あたし、能見くんに告白してみるよ」
りっちゃんはどこまでもあたしを心配してくれる。散々心配をかけてきたのだからしょうがないよね。あたしもりっちゃんに甘えてきたし。
「由希ちゃんが決めたことならいいと思うわ。由希ちゃんが自分から前に進もうとするのなら、私は応援したいもの」
「うん、ありがとうねふーちゃん……」
ふーちゃんはいつだって私を応援してくれた。あたしがどんな態度を取ったって、尊重し続けてくれた。
ずっとあたしは二人に支えられていた。ずっと寄りかかってた。だから、ちゃんと自分で動けるようになったって知ってもらいたかった。
……あたしは男の人が嫌いだ。近づかれるのも鳥肌が立つくらい大っ嫌いだ。
でも、能見くんは違っていた。
もちろん命懸けで助けられたというのもある。それはとてつもなく大きな出来事だったけど、彼に興味を持って接するうちにあたしの心はすごくあったかくなった。彼の傍にいると安心できた。
能見くんの笑顔が見たい。能見くんに喜んでほしい。能見くんの傍にいたい……。日に日にそういった気持ちが強くなった。
ああ、これが恋なんだなって。自分がまたそんな気持ちになれるだなんて驚いた。
この気持ちを彼に伝えたい。そう思えるようになったことに驚き、そして誇らしかった。
「……私も、応援するよ。能見と話してみて悪い奴じゃないと思う。由希の見る目は間違ってないと思う」
「うん。ありがとうりっちゃん」
言葉とは裏腹にりっちゃんの表情はあたしへの心配を表していた。それはまだ変えられない。
変えることができるのは、あたしの行動だけだと思う。
「ないとは思うけど……、何かあったらすぐに私を頼れ。風香もいる。由希の味方はここにいるんだからな」
「……うん。本当にありがとう」
あたしを心配してくれる親友。困った時、本当に頼れる親友だ。
りっちゃんとふーちゃんには、あたしは大丈夫だよって伝えたい。能見くんに告白することで、それを証明できるんだって思ってる。
パンッ! 手を叩いて雰囲気を変える。
「よーし! そんなわけでー、あたしが能見くんにどう告白すればいいか。みんなで考えよう!」
「そういうのって一人で考えるもんじゃないか?」
「由希ちゃんは言葉が不得意なのよ。律ったらわかっていないのだから」
「ひどくない!? あたしそんな言葉が不得意ってわけじゃ……」
不得意……かもしんないけど~。でも大事なのは気持ちでしょ! ハートだよハート!
「いいから! 二人も考えてよ!」
「「はーい」」
こうして、能見くんに告白する日に向けて、あたし達は作戦を立てるのであった。
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