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333 ダンジョンの街タスク
しおりを挟む#333 ダンジョンの街タスク
王都ベスラートから3日。ダンジョンの街タスクにきていた。
イングリッド教国に早く行ったほうが良いのは間違い無いのだが、聖女様の名声を得ておくために、タスクでも活動しようと思ったのだ。
タスクはダンジョンの街である事もあって、冒険者であふれている。そしてその分スラムも大きい。ここで施しをするのは大いに名声を高めてくれるだろう。
「さあさあ、聖女セルジュ様からの施しだ!
オーク肉のスープだぞ!一人一杯までだ!早い者勝ちだぞ!」
大銅貨3枚で雇った呼び込みだ。スラムで何人か誘ったらすぐに見つかった。
「食べる時は聖女様ありがとう、って言うんだぞ!」
普段の炊き出しとは違うことを明確にしておかないとね。
「ジン様ありがとうでも良いぞ!」
ちょっと待て。俺に感謝する必要はない。
さすがに俺の名前を連呼されても困るので止めたが、食べてる人の中には俺の名前を言ってるものもいる。困ったものだ。
「ジン様って冒険者なの?」
スラムの子供だろう。さっきの名前を聞いて俺に声をかけたらしい。
「ああ、そうだぞ。お前も冒険者になりたいのか?」
「うん!ジン様みたいなこーめーな冒険者になるの!」
「よしよし、ならいっぱい食って大きくならないとな」
「うん!ジン様は好きな人とかいないの?」
おいおいませたガキだな。
「いるぞ。ザパンニ王国は知ってるか?そこの貴族様だ。お前も冒険者で成り上がったら貴族と結婚できるぞ」
俺も適当だな。スラムの子供が成り上がってもまず貴族と結婚できない。というか貴族と知り合うことすらないかも知れない。
「へー、何て名前なの?」
「リリアーナって名前だ。良い名前だろう?」
「うん!リリアーナ様だね、覚えた!」
いやまあ忘れてくれても良いんだが。純粋な子供というのも久しぶりなのでつい口に出してしまった。まあ離れた国だし問題ないだろうけど。
「じゃあね!ジン様ありがとー」
「おう!頑張れよ!」
うんうん、子供はああでなくっちゃ。
「ジン様、そろそろ終わりですわ。あとは任せて領主様にご挨拶に向かいましょう」
炊き出しは教会の分野だが、地元の教会がするならともかく、俺たちがするには領主の許可がいる。たくさんの人が集まるため、治安の関係からも一言入れておく必要があるのだ。
「あれ、セルジュ様だけでも良かったのでは?」
「最初はそう思っていましたが、ほとんどジン様がやってるようなものですので、一緒に挨拶に行くのが良いかと思いました」
まあ挨拶くらいは良いんだけどね。夕食とかは一緒に取りたくないな。マナーとかよく分からないし。
「じゃあ一言挨拶して来ますか。
領主様にはセルジュ様がやったと言うことにしてくださいね。俺の名前が出るとややこしいですから」
本当はセルジュ様の名声で魔族をおびき寄せるのが目的なので、俺の名前が出ると注目が分散して効果が怪しくなると思ってるからだ。
「なんだか申し訳ないですわ。ジン様のお金を使って教会の炊き出しを行うなんて」
いえ、こっちが申し訳ないです。すいませんがその名声、使わせてもらいます。
「問題ないですよ。俺の探索費用のお礼ですから。教会に寄付したとでも思ってもらえれば」
「ありがとうございます。今更ですが、女神様の御加護がありますように」
本当に今更だな。今まで女神様の加護なんて言わなかったのに今更どうしたんだろう。
「もしかして信託でもありましたか?らしくないですが」
「いえ信託ではありませんが、何かが起きようとしてるという予感がするのです。私だけでなくジン様に何かが起こるかも知れないと思ったので、改めて女神様の加護を願ったのです」
あー、それ多分セルジュ様の周辺だわ。魔族が狙ってくるだろうからね。ちゃんと俺が守りますから許してくださいな。
領主様への挨拶が終わって宿に泊まっている時、セルジュ様から「守ってくださいね」と言われた。
もしかしてバレてる?
こそっと言われた以外には指摘されなかったが、今までこんな炊き出しとか慈善活動をしたことがない俺が急に始めたのをおかしく思って、理由を考えたのかも知れない。
今の世界情勢と俺への依頼内容から推測したのかも知れないし。
どっちにせよセルジュ様にはバレてるな。
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