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332 謁見
しおりを挟む#332 謁見
「冒険者ジンよ、此度の魔族撃退ご苦労であった。褒美をとらす」
謁見の間だ。
王都に着いて謁見を願ってから3日。ようやく謁見が叶った。多分セルジュ様がいなかったらもっとかかってただろう。
王様の脇に控えていた役人がトレーに乗せられた金袋を渡してきた。中を確認するのは失礼なのでそのまま受け取る。
「さて、セルジュ殿、お久しぶりですな」
「お久しぶりにございます。今回は飛んだ場面に出くわしてしまいましわ。衛兵の方は大丈夫でしたでしょうか?」
「うむ、重傷者はいたようだが死者はいなかったと報告を受けておる。救援感謝しますぞ」
「それは何よりです。あの場では簡易な回復魔法しかかけれませんでしたので」
「十分ですぞ。
それよりも魔族対策として勇者を呼んでくると出かけられたと思いましたが、勇者どのはどちらに?」
「陛下、私が呼びに行ったのは勇者ではありません。こちらのSランク冒険者のジン様です。
魔族との戦争のために勇者を召喚しようとはしていますが、まだ召喚されてませんので、それまでの最高戦力としてご協力を願いました」
「何と。そうであったか。それなら魔族を撃退したことも頷けると言うもの。ジン、改めてご苦労であった」
一応平伏しておくが、この王様、俺の話覚えてねえな。これでも各国の王族に名前が知られてる方だと思うんだが。
セルジュ様とはそれなりに知り合いのようで話が進んでいくが、実務的な話は役人がしてるだろうから、表面上の話だけだ。
今の時期は魔王軍に対抗するため、各国から戦力を集めているはずだから、この国でも騎士団を派遣するか検討しているはずだ。
謁見が終わると、応接室でゆっくりとさせてもらった。
獣人大陸のお茶とは違うので、久しぶりに飲んだ気がする。
「ふう、こちらのお茶を飲むと落ち着きますね。
ジン様、謁見までしてしまいましたが、魔族には偽名を名乗られてましたよね?人族の中ではジン様が魔族を倒したと言う話が流れてますよ?
魔族が王都に潜入できるとは思えませんが、すぐに偽名だとばれますよ?」
あ、そうだった。
まあバカそうな奴だったし大丈夫じゃないかなぁ。大丈夫だと良いなぁ。
まあどのみちSランク冒険者のジンは暗殺対象だろうから大した違いはないだろうけど。
「それでセルジュ様、このままイングリッド教国に向かうと言うことで良かったですか?」
「それですが、少しお時間をいただきたいと思います。
この国で交渉している役人たちと話を詰めておきたいので」
「わかりました。ではそれが終わり次第向かいましょう。馬車は用意してもらえるんですよね?」
「もちろんです」
なら良いな。馬車と歩きじゃ倍ほどかかる時間に差が出るしね。
「ジン様はその間そうされるおつもりですか?」
「そうですね。暇ですし、久しぶりに冒険者っぽいことでもしようかと思います」
「気をつけてくださいね。魔族と戦う前にゴブリンにやられたとかは無しですよ?」
「ははは。流石にゴブリンには負けませんよ。ドラゴンでも出れば別でしょうけど」
「あら、魔族はドラゴンも従えてますわよ?
さっき聞いた話ですが、一度ドラゴンの襲撃を受けたそうです。何とか撃退したようですが、砦に被害が出たとか。
ドラゴンは空を飛びますので首都アラートまで直接攻撃されるとまずいかもしれませんね」
げ、ドラゴンいたんだ。前戦ったのは風竜だったけど今度は何竜だろうか。
「暗竜じゃないかと言われますわ。真っ黒な鱗だったそうですし」
やばいやつじゃん。1000年前の歴史にも出てきたよ。何でも闇系統の魔法を使うとか。闇系統って精神系のが多いから面倒なんだよね。力押しが効きにくいし。
「しかも体躯が大きかったそうですわ」
成竜か悪くすると老竜か。1000年前と同じ奴だったら間違いなく老竜だな。
「ご存知かとは思いますが、暗竜は精神的な攻撃を得意としています。
先日の攻撃ではブレスが主体の力押しだったようですが、戦場で精神攻撃をされると戦局がひっくり返されかねません。出来ればジン様に討伐していただきたいですね」
まあそうだろうな。
砦に攻撃したらしいけど、追い返せたのが不思議なくらいだからね。
最近強力な敵と戦ってないから錆び付いてないと良いんだけど。
「まあジン様なら何とかしてくれそうですし、国の役人にも安心するように言っておきますね」
いや、やめてください。討伐失敗したらどうするんですか。
「信じてますわ」
「ご主人様ならドラゴンくらい軽いです!」
マリアや、こんな時に不用意な発言はやめようね。どんどんハードルが上がってくから。
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