スキルを極めろ!

アルテミス

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292 閑話 水中呼吸の飴?

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#292 閑話 水中呼吸の飴?

「どうしたのですか?何か疲れてるようですが。王宮で何かありましたか?」

 リリアに心配されたが、疲れたのは探索者協会での事だ。
 依頼も通販も精神的に疲れた。

 ん、あんな商売を探索者協会の中でやってるのは見逃されてるのか?ほとんど、というか間違いなく詐欺だぞ?

「ああ、そんな事があったのですね。そういうのは国でもありました。
 その飴が本物かは知りませんが、占いは信じるのも信じないのも本人次第ですので、それ自体を止める法はありません。
 飴に関しては、今回は効能を断言しているようですが、国ではその辺をどうとでも取れるような言い方をしていました。なので言い逃れが可能で、ばかな酔っ払いが金を取られるのです」

 人族の国でもあったのか。知らなんだ。

「ですが、もしその飴が本物なら興味深いですね。断言しているところから逆に信憑性もあるかもしれません。
 水中呼吸の飴というのは製作可能なんですか?」

「いや、無理だろうな。少なくとも俺は聞いたことがない。そんな飴があったらマンスムのダンジョンの13層は攻略されてるだろうからな。あそこの湖は厄介だ」

「それは今ないという話ですか?それとも不可能と言う話ですか?」

「今はないと言う話だな。なんだ、欲しいのか?」

「ええ、本当なら価値がありますし、銀貨5枚で試せるのなら安いものかと」

 詐欺に騙されてるな。こうやって飴が買われていくのか。
 そう言う意味では曖昧な効能を宣うのではなく、断言するのも手口としてはありなのか?
 いや、詐欺がばれたら流石に牢屋行きだろうから危険な橋だな。俺ならそんな危険は犯さない。

「と言うことで、ちょっと買ってきます」

 結局買うのか。まあ勉強だと思えばいいか。



 目の前で桶に入れた水に顔を突っ込んでいるリリアがいる。

 ぶくぶくぶく、、、

 ゲフッ

 バシャッ

 リリアが突然顔をあげた。水が飛んできて濡れたが、結果の方が気になる。

「どうした?」

「、、、水を飲んでしまいました」

 まあそうなるわな。飴を舐めて呼吸が可能になるなんて理屈がわからん。まだ布で空気袋を作ったと言う方が理解できる。あれは密封さえできれば製作可能だからな。

「それで銀貨5枚の価値はあったか?」

「、、、すいません、銀貨8枚です、、、」

 は?

「えっと、3粒で銀貨5枚なんですが、10粒なら銀貨8枚で良いって言われて、、、」

 完全に詐欺にやられてるじゃん。


「あら、リリア、その飴はどうしたのかしら?」

 お、メアリーが帰ってきたのか。今日の夕食の材料を買いに行ってたからな。

「ああ、これはリリアが、、、」

「私も買ったんですよ!この赤い飴を見てください!これを舐めれば火魔法に耐性が付くんです!
 火山などで火系の魔物が出ても安心です!」

 。。。

「それどこで買ったんだ?」

「探索者ギルドの前ですわ。占いをやっていると言うお婆さんが売ってましたの。
 この赤色が耐性のつく証だと言ってましたわ」

 。。。

「いくらしたんだ?」

「一粒銀貨2枚のところを3粒銀貨5枚と言われましたが、私はそんな程度じゃ満足しませんでしたわ。10粒買うから銀貨9枚に負けさせましたわ」

 ドヤ顔で言ってきたが、それ詐欺だぞ。それに普通に買いに行ったリリアが10粒銀貨8枚だったのが、負けさせて9枚って。

「試してみたのか?」

「そんなことしたら熱いじゃないですか。それにもったいないですし。本番まで取っておきますわ」

 なるほど。試すのはもったいないから効果も確認しないと。これも詐欺の手口なのかな?

「リリア、どう思う」

「ええ、私もこう言う顔をしてたかと思いますと恥ずかしいです。
 メアリー、私もそのお婆さんからこれを買いまして、、、と言う結果になりました」

「ええ!ではこれはただの飴ですの?!そんな、銀貨9枚も払ったのに!」

 まあ、一月の生活費が銀貨20枚もしないから半月分だと考えると結構な出費だな。

「返品に行きますわ!」

 ああ、まあ頑張ってこい。多分無駄だけど。
 詐欺師が返品を受け付けるわけがない。そんなことしてたら商売上がったりだ。

 メアリーは出て行ったが、俺は生暖かい目で見守るだけだった。まあ、小遣いの範囲でなら構わないだろう。


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