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244 借家
しおりを挟む#244 借家
3日後、無事に村についたが、商人が食料を調達しようとして、買えない事がわかった。
先日祭りがあったらしく、肉の備蓄が無いそうだ。
商人はお金があっても買えない状況に困っている。
だけど、俺は余裕は30食しか無いと伝えた手前、これ以上渡すのもおかしくなってしまう。
「仕方がありません。次の村までは水で飢えを凌ぎます」
男前な発言だが、次の村まで2日ありますよ?
「商人様、こないだの祭りはこの周辺の村合同での祭りですじゃ。なんで、この周りの村には肉は余ってないと思いますじゃ」
村人のこの発言で商人は凍りついた。
「で、では麦などは。。。」
「それも無理じゃ。まだ刈入れし始めたばかりじゃ。5日ほど待ってもらえるなら譲れるんじゃが?」
商人の商品に食料品はない。つまり商人の食料が手に入らないのが確定したのだ。
「はあ、麦なら多少は余裕があります。それで飢えを凌いでください」
俺は見捨てるのも気が止めたので、麦を提供する事にした。塩で煮るだけだろうが、植えるよりはましだろう。
俺たちは休憩中に動物を狩ったりして、商人にも肉を分け与えた。
そうでもしないと、商人さんは死んでしまいそうだったからだ。
途中途中で肉を分け与え、なんとかマンスムの街までたどり着いた。
「ジンさん、乏しい食料の中、恵んでいただきありがとうございました。おかげでなんとか街まで来れました。こんな物で恩が返せるとは思えませんが、受け取ってください」
金貨を2枚渡してきた。まあ渡した食料からしたら街での相場といったところだろう。緊急事態というのを除けば。食料の少ない時の食料は時価だ。街での値段なんて関係ない。それを考えれば少ない。俺なら5枚は渡すだろう。
それを鑑みない金額に俺は商人に見切りをつけた。もうこの商人とは旅をしない。物も買わない。
どうやら他のメンバーも同じように考えたようで、商人への興味を失っていた。
商人とのゴタゴタはあったが、無事マンスムの街にたどり着いたのだ。まずは落ち着くべきだろう。
宿をとり休む事にする。
それほど高い宿を選んだつもりはないのだが、一人銀貨1枚取られた。1ランク上の値段だ。内装を確認してもランクに相応しくない。
だけど、街で屋台などを見ると、王都よりも高いのが目についた。どうやらこの街の物価は高いらしい。
「さて、ようやくマンスムの街についたけど、明日は情報集めで、明後日には一度軽く潜ってみようと思う。それで感じを掴んだら、本格的に攻略を開始する。
その間のリリアたちの生活だけど、借家を借りようと思う。
ダンジョンに何日いるか分からないけど、宿で泊まってたらいくらあっても足りないからね。
家の掃除などはリリアとメアリーとセルジュ様で頑張ってくれ。
ダンジョンは予定通り、俺とマリアとクレアの3人でいく。
マリア、必要な買い物をリストアップしておいてくれ」
「承知しました。今回の予定は何日くらいにしますか?」
「最初だし、最大で3日にしようか。絶望のダンジョンというくらいだから、結構手強いだろうしね」
翌日、探索者ギルドに行ってダンジョンの情報をもらう。
全50層と言われているが、根拠はないらしい。単純に階層ごとの魔物の強さを考えると、そのくらいで上限だろうという程度だ。
その後に強い魔物が出る区間がさらに50層あってもおかしくない。その場合は100層だね。
マリアとクレアは買い出しに行っているので、俺はギルドで貸家がないか聞いてみた。
「貸家ですか。ありますが、この街の家屋は小さいのが多いので、5人で暮らすには狭いですよ?」
「ええ、普段は3人がダンジョンに潜っているので問題ありません」
「ではこちらの物件はいかがでしょうか。月に銀貨30枚とお得ですよ」
宿に泊まると一人銀貨1枚で計6枚。月が30日だから180枚。なんと6分の1だ。なんでみんな借りないんだろう?
「ふふ、家を見ればわかりますよ」
家に案内してもらうと、理由がわかった。本当に狭いのだ。日本でなら4畳半と行ったところか。台所があるのでもう少し広いが確かにこれでは6人は厳しいだろう。
ギルドの人をジト目で見ると、狭いと言いましたよ、と返されてしまった。
もうちょっと広い場所がないか聞いたが、このサイズが平均らしい。家族4人で4畳半。6畳ほどの部屋になると銀貨50枚と跳ね上がり、10畳になると銀貨80枚するそうだ。
これで食事や掃除などもある事を考えると宿の方が断然良い。それに宿はダンジョンに入っている間は払わずに済むのだ。
俺たちは居残り組がいるので毎日宿代が出ていくが、他の探索者は普段はダンジョンに入っているのだ。半分はダンジョンの中にいるらしいので、俺たちは180枚で計算したが、実際には90枚程度。それで10畳の150枚払うなんて馬鹿げている。
俺はせめて10畳の家にしようと言ったのだが、こういう小さい家も楽しそうだと居残り組に言われてしまった。
いや、4畳半に6人は無理だからね?
俺たちが戻ってきている時だけの事だから問題ないと押し切られてしまった。浮いた分はお小遣いにして欲しいとの事。そっちが目的では?
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