スキルを極めろ!

アルテミス

文字の大きさ
上 下
228 / 351

228 発情期

しおりを挟む

#228 発情期

 晩餐会が始まった。

 領主のライオスさんが挨拶し、開始という流れになったが、フェリス様は挨拶しなかった。主賓の挨拶がないなんてどうよ。

 晩餐会に参加しているのはこの領地付近にいる貴族と大商人だ。100人ほどだろうか。会場は結構いっぱいだ。

 俺は特に何もすることがないのだが、一応フェリス様の護衛ということなので、彼女の後を金魚の糞のように付いて歩く。彼女はさすがに王族だけあて知己が多く、いろんな人と話していた。
 話の内容は当たり障りのないものだが、腹の探り合いをしているのか、微妙に触れたり触れなかったりだ。

 そんな中、俺に興味を持った女性たちが話しかけてきた。そう女性「達」だ。一人じゃない。

「本当に黒髪だわ。目も黒くて素敵!」

 黒目黒髪はステータスみたいだからね。

「腕も引き締まってるわ!」

 いや、さりげなく腕を触らないでください。

「お腹もよ!」

 お腹も触らないでください。冒険者やってたら自然と腹くらい締まります。

 それ以上下を触ったら通報しますよ?


 どうやら若い女性たちが俺の噂を聞いたらしい。

「人間の聖人ですって。本当かしら」

「教会が正式に認めたそうよ」

「でも人間ってこないだは奴隷狩りしてたって」

「それは解決したって話よ。今回のフェリス様の訪問もその話らしいじゃない」

「なら人間と付き合っても問題ないわね」

 どういう思考回路になったらそうなるんでしょうか?

「ねえ、一曲踊らない?」

「あ、ずるい!私もお願い!」

 黒目黒髪で聖人だって事でモテてるって事でいいのかな?

「ジン様、私は構いませんよ。この晩餐会で襲われる事もないでしょうし。踊ってこられては?」

「やった!さすがは王族!話がわかるわ!」

「ちょっと、不敬よ。すいません、フェリス様」

「でも踊るんでしょう?」

「もちろんよ!」

 まあ、フェリス様の許可が出たし、踊るくらいならいいか。


 曲に合わせてダンスを踊るが、君はなぜ俺の腰ではなくて尻を持っているのかな?もまないで欲しい。

 次、次の子~。

 君はなぜそんなに息が荒いのかな?そんなに大した運動量じゃないでしょう?

 次、次の子~。

 俺にしなだれかかってくるのは良いとして、なぜ尻尾が俺の腰にまとわりついているのかな?


 ふう、ダンスは慣れないな。

「ジン様、モテモテですわね」

 フェリス様、見てたんなら助けてください。

「あの子たちは婚活中ですの。獣人族では最近は男性の数が減ってきていて、結婚相手を探すのが難しくなってるんですのよ。
 特に獣人は強い相手を求めるので、戦争のない昨今、鍛える男性も減って、さらに競争率が高くなってますの。ジン様は強く、黒目黒髪で、教会の聖人、誰もが放っておきませんわ」

 俺の知らないところで大変な評価になってるな。

「それに獣人は一夫多妻制ですわよ?リリア様がいらっしゃっても問題ありませんわ」

 いや、リリア様が怖いわけではないんですが。

「結婚を前提にしなくてもとりあえずお付き合いするというのもありですわよ?獣人はその辺寛容ですから」

 いや、助長しないでください。

「特に今の時期は発情期ですので、夜は鍵をかけておくのをお勧めしますわ」

 なんだって?俺襲われるの?


「やあ、フェリス様、わざわざ来ていただいて申し訳ありません。晩餐会は楽しんでいただけてますかな?」

 ライオス様だ。これで真面目な話に戻るだろう。

「ええ、ジン様がモテてるという話をしていたところですわ。
 さっきからダンスにかこつけてアピールしている子たちがいて、楽しく見ていましたわ」

「私も見てましたよ。
 ジン殿、誰か気に入った子はいましたかな?
 とりあえず一人選んで部屋に連れて行ってみては?」

 はい?ライオス様、それはダメでしょう?

「フェリス様には無理を言ってジン殿を連れてきてもらった甲斐がありますな。
 これで発情期の子たちも存分に婚活が出来るでしょう」

「ええ、最近の子たちは発情期に欲望を抑えることを覚えてしまって、なかなか人口が増えませんからね。
 ただでさえ男性の割合が減っているのにこのままでは王国の先が不安ですわ」

「ええ、ジン殿で発情してくれれば他の男性にもアタックするでしょうからね。これで我が領の人口問題が片づけば良いんですが」

 ええ?俺って当て馬なの?

「おや、ジン殿は知らなかったのですかな?」

 知りませんでしたよ?

「私の護衛ということでお願いしましたからね。今も護衛のつもりで私のそばを離れませんのよ」

「それはいけない。もっと女性たちと交流してください。若い子だけではなく、既婚者とも話をしてその気にさせてください。子供を産むのは若い子だけではありませんからな」

 やっぱり、当て馬じゃん!

「それはちょっと。。。俺少し席を外しますね」


 ヤバイ。どうやら俺のネームバリューを利用した当て馬作戦に乗せられたらしい。
 リリアと一緒にいれば多少はマシになるだろうから、、、リリアさん、その楽しそうに話している男性は誰ですか?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でスローライフとか無理だから!

まる
ファンタジー
突如青白い光に包まれ目を開ければ、目の前には邪神崇拝者(見た目で勝手に判断)の群れが! 信用できそうもない場所から飛び出していざ行かん見慣れぬ世界へ。 ○○○○○○○○○○ ※ふんわり設定。誤字脱字、表現の未熟さが目につきます。 閲覧、しおり、お気に入り登録ありがとうございます!

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)

土岡太郎
ファンタジー
 自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。 死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。 *10/17  第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。 *R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。  あと少しパロディもあります。  小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。 YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。 良ければ、視聴してみてください。 【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮) https://youtu.be/cWCv2HSzbgU それに伴って、プロローグから修正をはじめました。 ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

異世界巻き込まれ転移譚~無能の烙印押されましたが、勇者の力持ってます~

影茸
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界に転移することになった僕、羽島翔。 けれども相手の不手際で異世界に転移することになったにも関わらず、僕は巻き込まれた無能と罵られ勇者に嘲笑され、城から追い出されることになる。 けれども僕の人生は、巻き込まれたはずなのに勇者の力を使えることに気づいたその瞬間大きく変わり始める。

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

処理中です...