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228 発情期
しおりを挟む#228 発情期
晩餐会が始まった。
領主のライオスさんが挨拶し、開始という流れになったが、フェリス様は挨拶しなかった。主賓の挨拶がないなんてどうよ。
晩餐会に参加しているのはこの領地付近にいる貴族と大商人だ。100人ほどだろうか。会場は結構いっぱいだ。
俺は特に何もすることがないのだが、一応フェリス様の護衛ということなので、彼女の後を金魚の糞のように付いて歩く。彼女はさすがに王族だけあて知己が多く、いろんな人と話していた。
話の内容は当たり障りのないものだが、腹の探り合いをしているのか、微妙に触れたり触れなかったりだ。
そんな中、俺に興味を持った女性たちが話しかけてきた。そう女性「達」だ。一人じゃない。
「本当に黒髪だわ。目も黒くて素敵!」
黒目黒髪はステータスみたいだからね。
「腕も引き締まってるわ!」
いや、さりげなく腕を触らないでください。
「お腹もよ!」
お腹も触らないでください。冒険者やってたら自然と腹くらい締まります。
それ以上下を触ったら通報しますよ?
どうやら若い女性たちが俺の噂を聞いたらしい。
「人間の聖人ですって。本当かしら」
「教会が正式に認めたそうよ」
「でも人間ってこないだは奴隷狩りしてたって」
「それは解決したって話よ。今回のフェリス様の訪問もその話らしいじゃない」
「なら人間と付き合っても問題ないわね」
どういう思考回路になったらそうなるんでしょうか?
「ねえ、一曲踊らない?」
「あ、ずるい!私もお願い!」
黒目黒髪で聖人だって事でモテてるって事でいいのかな?
「ジン様、私は構いませんよ。この晩餐会で襲われる事もないでしょうし。踊ってこられては?」
「やった!さすがは王族!話がわかるわ!」
「ちょっと、不敬よ。すいません、フェリス様」
「でも踊るんでしょう?」
「もちろんよ!」
まあ、フェリス様の許可が出たし、踊るくらいならいいか。
曲に合わせてダンスを踊るが、君はなぜ俺の腰ではなくて尻を持っているのかな?もまないで欲しい。
次、次の子~。
君はなぜそんなに息が荒いのかな?そんなに大した運動量じゃないでしょう?
次、次の子~。
俺にしなだれかかってくるのは良いとして、なぜ尻尾が俺の腰にまとわりついているのかな?
ふう、ダンスは慣れないな。
「ジン様、モテモテですわね」
フェリス様、見てたんなら助けてください。
「あの子たちは婚活中ですの。獣人族では最近は男性の数が減ってきていて、結婚相手を探すのが難しくなってるんですのよ。
特に獣人は強い相手を求めるので、戦争のない昨今、鍛える男性も減って、さらに競争率が高くなってますの。ジン様は強く、黒目黒髪で、教会の聖人、誰もが放っておきませんわ」
俺の知らないところで大変な評価になってるな。
「それに獣人は一夫多妻制ですわよ?リリア様がいらっしゃっても問題ありませんわ」
いや、リリア様が怖いわけではないんですが。
「結婚を前提にしなくてもとりあえずお付き合いするというのもありですわよ?獣人はその辺寛容ですから」
いや、助長しないでください。
「特に今の時期は発情期ですので、夜は鍵をかけておくのをお勧めしますわ」
なんだって?俺襲われるの?
「やあ、フェリス様、わざわざ来ていただいて申し訳ありません。晩餐会は楽しんでいただけてますかな?」
ライオス様だ。これで真面目な話に戻るだろう。
「ええ、ジン様がモテてるという話をしていたところですわ。
さっきからダンスにかこつけてアピールしている子たちがいて、楽しく見ていましたわ」
「私も見てましたよ。
ジン殿、誰か気に入った子はいましたかな?
とりあえず一人選んで部屋に連れて行ってみては?」
はい?ライオス様、それはダメでしょう?
「フェリス様には無理を言ってジン殿を連れてきてもらった甲斐がありますな。
これで発情期の子たちも存分に婚活が出来るでしょう」
「ええ、最近の子たちは発情期に欲望を抑えることを覚えてしまって、なかなか人口が増えませんからね。
ただでさえ男性の割合が減っているのにこのままでは王国の先が不安ですわ」
「ええ、ジン殿で発情してくれれば他の男性にもアタックするでしょうからね。これで我が領の人口問題が片づけば良いんですが」
ええ?俺って当て馬なの?
「おや、ジン殿は知らなかったのですかな?」
知りませんでしたよ?
「私の護衛ということでお願いしましたからね。今も護衛のつもりで私のそばを離れませんのよ」
「それはいけない。もっと女性たちと交流してください。若い子だけではなく、既婚者とも話をしてその気にさせてください。子供を産むのは若い子だけではありませんからな」
やっぱり、当て馬じゃん!
「それはちょっと。。。俺少し席を外しますね」
ヤバイ。どうやら俺のネームバリューを利用した当て馬作戦に乗せられたらしい。
リリアと一緒にいれば多少はマシになるだろうから、、、リリアさん、その楽しそうに話している男性は誰ですか?
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