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220 フェリス殿下
しおりを挟む#220 フェリス殿下
「お久しぶりです殿下」
「お初にお目にかかります。フェリス殿下。メアリー・フォン・ザパンニと申します」
「初めまして。リリアーナ・フォン・オーユゴックと申します」
今日はフェリス殿下にお茶に誘われている。メアリーとリリアも一緒だ。同行の許可を願ったらあっさり許可された。
「ザパンニというとザパンニ王国ですか?」
「はい。第3王女になります」
「これは失礼しました。ご無礼、お許しください」
「どうかお気になさらず。現在はジン様の旅の同行者にすぎませんので」
「そう言っていただけると助かります」
あ、メアリー、第3王女名乗るんだ。王宮に行かなかったから名乗らないのかと思ったのに。後で理由を聞くと、国交が成立した時にちゃんと名乗ってないと失礼に当たるとか。
「ジン様、先日の晩餐会では失礼しました。つい練習の時と同じ感じで手の甲を差し出してしまいました。あの後、大変だったのではないですか?」
「いえ、他の貴族の方が手の甲を差し出す意味を教えてくださいましたので、それ以降は問題ありませんでした。どのご令嬢も手の甲を差し出してくるのには驚きましたが」
「黒目黒髪のおかげですね。
それにしても、先日の騎士団長との試合は見事でした。騎士団長は父上、いえ陛下以外では一番の使い手だというのにすごいものですね。人間の戦力も侮れません」
「見てらしたのですね。あれは私も肝を冷やしました。あれだけの技量を持ったものがどれだけいるのやら。これでも模擬戦には自信があったのですが、際どい勝利になりました」
「何をおっしゃいますか、ほとんど無傷で勝ちましたのに。騎士団でも噂になっていますのよ」
「殿下は騎士団とも親しいのですか?」
「ええ、時々稽古をつけてもらっています。王族として、それなりに戦えないとなりませんので。これでも虎人族も大変なんですよ」
多分冗談だろう。虎人族が全員戦えないといけないんじゃやってられないだろう。
「騎士団長は狼人族なんですね。てっきり虎人族の方がされているのかと思っていました」
「4年ほど前まではそうでしたが、引退されまして、その後に騎士団長になったのがセルゲイ様です。あの方もこの国の貴族で伯爵家の次男になります」
近衛騎士団の団長だ、そりゃ貴族がなるよね。
「それと殿下、できれば後ろの方たちをいい加減どこかにやって欲しいのですが?」
俺の<魔力感知>には俺たちの後ろに3人が気配を殺して潜んでいるのを感じている。殺気は無いので多分殿下の護衛だと思うのだが、それなら俺たちの後ろじゃなくて、殿下の後ろにいて欲しいものだ。
「お気付きでしたのね。申し訳ありません。ジン様の強さは見せて頂きましたが、護衛を連れていらっしゃらないので試させていただきました。申し訳ありませんでした」
殿下は頭を下げてくる。
それと同時に後ろの3人が下がっていく。
「俺はただの冒険者です。護衛は必要ないですよ。
それとできればこういうことはやめて欲しいですね。襲われるかと思いました」
「改めて申し訳ありません。今のあなたの立場では狙われることもあるでしょうから、早いうちに気づいていただこうかと勝手に思っておりました。結果は無駄でしたが」
「お気持ちだけいただいておきます。ちなみに気づかなかった場合はどうなったのですか?」
「あなたの後ろにいきなり立って、驚かせた上でご注意申し上げました」
それなら3人もいらないと思うんだよね。
でもまあ、ここで襲ってくるとも思えないし、判断に悩むところだ。俺たちが3人だったから合わせたのかもしれないし。
メアリーとリリアは気づいていなかったらしく、驚いていた。まあ、常に<魔力感知>使ってるのは俺くらいだろうしね。
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