218 / 351
218 模擬戦 (2)
しおりを挟む#218 模擬戦 (2)
セルゲイさんは号令とともに踏み込んできた。下からの切り上げだ。
俺は合わせるように上から打ちおろすが、セルゲイさんは剣を斜めに傾けて俺の剣をいなし、剣を上段に持っていく。
やばい、流されたので、俺の剣は下段にある。このままだと間に合わない。
俺は前に出て肩からセルゲイさんにぶつかりにいく。セルゲイさんはサイドステップで横に避け、横殴りに剣を振ってきた。
その時には俺も剣を引き戻していたので、剣を受ける。
するとそのまま押し込んできた。鍔迫り合いをするつもりか?
体勢としては俺の方が不利だ。向こうは普通に攻撃したのに比べ、俺は振り返りの途中だ。剣を弾くだけならともかく力相撲となれば向こうが有利だ。しかも中段の横薙ぎだったので、下がる以外に避けれない。
俺は仕方なく後ろに下がろうとするが、セルゲイさんはそのまま剣を突いてきた。
体ごと横に振ってかわすが、突きの途中で横に変化した。このままだと首に当たる。木刀なら問題ないが、今回は真剣だ。剣を間に挟み込むのも間に合わない。
俺は瞬間的に足に圧縮した魔力を込めて後ろに下がった。ちょっと足に負担がかかるが仕方ない。
一旦離れたが、セルゲイさんの方が対人戦になれている。ステータスで上回り、身体強化も行なっているのに押されている。スキルのレベルでは上回っているはずだが、技術で負けている。
俺が動こうと意識すれば、スキルはその補助をしてくれるが、俺が動こうとしなければスキルで上回っていても勝手に動いてはくれない。
ステータス任せに力一杯剣を振っても躱されるだろう。<体術>持ってるんだから回避も得意だろうし。
俺は目一杯身体強化をかけて上段から振り下ろした。これ以上強化すると、体が保たない、限界まで上げた。これ以上の速度は出せない。
セルゲイさんはあっさりと俺の剣をそらして、その勢いのまま柄で殴りかかってきた。
まずい。俺は斬りかかるために前に体重がかかってる。下がれない。しかも剣をそらされたので、体勢が悪い。
俺は打点をずらすために、首を少し傾けた。そのくらいしかできる時間がなかった。
剣が頬をかすったと思ったら、肘が肩に入った。<体術>の技だろう。
俺は吹き飛ばされて、転がった。すぐに起き上がったが、左肩が痺れている。
セルゲイさんは肘を入れた格好のまま、残身の状態だ。おそらく限界まで踏み込んだからだろう。
しかし、このままでは本格的にまずい。どう攻撃しても反撃されそうな気がする。
仕方ない。本意ではないけど、魔法を使うか。本当は剣技だけで上回って、実力を見せようと思ってたんだけど。
とりあえず風魔法を軽く放って様子を見ようとしたら、なんと魔法を切られた。正面からまっすぐに剣を振り下ろしただけに見えたが、魔法がかき消されている。まじか。
俺は3重で起動してみるが、体ごと大きく剣をふり、一回で3本共切り裂いた。
よく見ると、剣に魔力がまとわりついている。魔闘術が使えるのか。獣人は魔法が得意でないと聞いていたので、使えないものだとおもっていた。それも俺の魔法をかき消すほどだ。<鑑定>した時のステータスではかき消せるとは思えないので、なんらかのスキルだろう。すごいな。
俺も魔闘術を使って魔法を切ることはできる。だけど、3重の魔法を1回で切ることはできない。修行が足りないな。今まで問題なかったからと修練を怠った俺が悪い。何がレベル上げだ。技術が伴ってない。
遠方からの魔力操作は難しいが、セルゲイさんの四方から魔法をぶつける。なんと、斜めにバックステップするだけで躱されてしまった。
8方向から攻撃するか?いや、対処される未来しか見えない。
<隠密>で気配を殺して踏み込み、横薙ぎで剣を振る。当たり前の様に躱された。やはり目の前でスキル使っても見逃してはくれないか。
今度は<闇魔法>で幻覚を見せる。俺が4人に見えているはずだ。四方から攻撃する様に見せる。俺は見せている4人のさらに後ろから魔法で攻撃する。
4人のうちどれかが本物だと考えてくれれば御の字だ。
4人の幻覚を見せたら、瞬間にセルゲイさんは目を閉じた。そして俺の魔法を切った。どうやら<気配察知>で幻覚だと看破した様だ。おそらく目を閉じて<気配察知>に集中したのだろう。
魔法を100ポイントも使って攻撃すれば、魔法を切り裂かれることはないと思うが、それでは殺してしまう。
これは困った。俺の手札に対応できるものがあるだろうか?
ずるいかもしれないが、範囲魔法で終わらせてもらおう。
俺はセルゲイさんを中心に5メートル四方の穴を掘った。深さも5メートルある。ジャンプしても出てこれないだろう。そこに火の魔法を打ち込む。連続でだ。10回ほど打ち込んで、様子を見る。
たとえ魔法を切ったとしても、中は熱くなっているだろう。対処できなかった魔法の数によっては蒸し焼きになっているかもしれない。
俺が様子を見ている間に、なんとジャンプして出てきた。5メートルをジャンプした?なんて身体能力だ。俺もできるけど、まさかあのステータスで上がってこれるとは思ってなかった。
しかし、セルゲイさんの服は所々焼け焦げており、完全には躱せなかった様だ。
俺は着地する前に右手を狙って飛剣を放つ。左手がしびれたままなので全力ではないが、剣で防いでも撥ね飛ばせるだろう。防げなくても右手が使えなくなれば決着はつく。あとでセルジュ様が直してくれるだろう。
そして飛剣が届く前に四方から魔法を放つ。これで剣で魔法を斬るのは無理なはずだ。
魔法の影響で土煙が上がるが、晴れるのを待つと、セルゲイさんが剣を取り落とし、膝をついていた。
「それまで。勝者ジン殿!」
0
お気に入りに追加
759
あなたにおすすめの小説
異世界でスローライフとか無理だから!
まる
ファンタジー
突如青白い光に包まれ目を開ければ、目の前には邪神崇拝者(見た目で勝手に判断)の群れが!
信用できそうもない場所から飛び出していざ行かん見慣れぬ世界へ。
○○○○○○○○○○
※ふんわり設定。誤字脱字、表現の未熟さが目につきます。
閲覧、しおり、お気に入り登録ありがとうございます!
異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
土岡太郎
ファンタジー
自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。
死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。
*10/17 第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。
*R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。
あと少しパロディもあります。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。
YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。
良ければ、視聴してみてください。
【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
https://youtu.be/cWCv2HSzbgU
それに伴って、プロローグから修正をはじめました。
ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる