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217 模擬戦 (1)
しおりを挟む#217 模擬戦 (1)
教会の訓練所で魔力操作の練習をすること数日、使節団のうち、ザパンニ王国の代表者が尋ねてきた。
「何か御用でしたか?」
「ええ、Sランク冒険者のジン殿にお願いがありまして」
Sランクにお願い?この大陸では盗賊以外はそれほど危険はないと聞いているけど。
「実は使節としての話し合いの中で、人間の実力を確認したいと言う話が出まして。獣人族はもともと実力社会です。最近でこそそういう慣習は直ってきたようですが、人間と付き合うに当たって、お互いの戦力を確認するのが合理的だと言われまして。
我々も獣人の力量を測りかねています。
友好的なうちはいいですが、強さに大きな差があると、侵略という可能性も出てきますので。
なので、ジン殿に獣人の強さを確認すると共に、こちらの戦力を見せつけて欲しいのです」
「それはあなたからの依頼ですか?それとも使節団からの依頼ですか?」
「使節団全員からの依頼です。騎士も何人か連れてきていますが、我々の最高戦力はジン殿なので。人間の実力を見せつけてください」
「条件と報酬は?」
「獣人の騎士団長との戦闘。勝ち負けは問いませんが、対抗できるだけの力を見せつけること。報酬は白金貨1枚でどうでしょうか?」
「条件を変えてもらえますか?報酬は白金貨1枚相当のこの国の貨幣でお願いします」
「この国の貨幣ですか。申し訳ありませんが、換金率などの交渉がまとまっていませんので、我々もこの国の貨幣を持ちません。なのでザパンニの白金貨でお願いできないでしょうか?」
「それだとこの国で使えないので困るんですが。一部だけでもこの国の貨幣でもらえませんか?」
「少しでよければ使節団に、という事で獣人国から渡されてお金があります。金貨で10枚ほどでしょうか。それでよろしければ」
「わかりました。その条件でいいです。いつになりますか?」
「明日の昼前でお願いします。その模擬戦を肴に昼食をという話になっていますので」
「わかりました。明日王宮に伺います」
俺は教会の騎士団の訓練を見ていたが、それほど実力が高いとは思わなかった。もちろん、獣人の身体能力なので人間の騎士よりも強いが、俺基準でいえば、楽勝で勝てる。
騎士団長ということは一番強い人なんだろうけど、負ける気はしない。
翌日の昼前に教会の馬車を出してもらって、王宮に出向く。セルジュ様も見届けると付いてきている。
すぐに訓練場に案内された。俺はすでにいつでも模擬戦ができるように剣を履いている。
訓練場で紹介された騎士団長は狼人族で、体が2メートル近くある。国王のアキレス様なみだ。それに佇まいがすごい。体が全くぶれていない。
普通人間はまっすぐ立っているつもりでも多少は重心がぶれているものだ。それがない。この人は実力者だ。
「初めてお目にかかります。近衛騎士団で団長を務めております、セルゲイと申します」
セルゲイさんは右手を左肩に置いて、頭を下げてきた。
「ご丁寧にありがとうございます。冒険者ギルド所属のジンと申します。今日は胸を借りるつもりでやらせていただきます」
俺も頭を下げておく。
「ご謙遜を。見ただけで実力者であることはわかります。こちらこそよろしくお願いします」
セルゲイさんはなかなか男前の性格をしているようだ。
「それで模擬戦ですが、条件はどうしましょうか?」
「そうですね、基本何でもあり、負けを認めるか、審判が終了を宣言するまで、というのはいかがでしょうか?」
「審判は誰になりますか?」
「はい、陛下が審判を務めてくださいます」
「わかりまして、それでやりましょう」
「もう少ししたら陛下が来られますので、少しお待ちください」
俺は少し離れた場所で柔軟を行なった。あの人は真面目にやらないと負ける可能性がある。<鑑定>では<剣術>がlv8もあった。ステータスも高く、Sランク相当あるんじゃないだろうか。<体術>もlv8なので、組み合わされるとやばい。俺は<体術>がlv2しかないので不利だ。
練習用に型だけは習ったんだけど、あまり真面目に修行してない。魔物相手に体術でどうにかなるとも思えなかったし。
あ、神様の依頼からすると鍛えとかないとダメか。今度修行しよ。
アキレス陛下が来て、訓練場に立った。俺たちも中央で対峙した。10メートルほど開けてあるが、俺たちからしたら一息で詰めれる距離だ。
お互いに剣を抜き、構える。俺は正眼に構えるが、セルゲイさんは下段に構えた。下段は防御に適していると剣道部の友人から聞いたことがあるが、そうなんだろうか?
アキレス陛下が俺たちに準備はいいかと尋ねてきたので、了承する。
「では、はじめ!」
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