216 / 351
216 国王陛下
しおりを挟む#216 国王陛下
俺とセルジュ様が王宮に招かれた。
俺が神に選ばれしものという報告がいき、改めて挨拶がしたいということだ。
兎人族のメイドさんに案内されて、豪華な扉の前にきた。
セルジュ様を先頭に入ると、虎人族の獣人がいた。晩餐会でも見たが、国王だ。近くで見ると体が大きい。2メートルは超えてるんじゃないだろうか。
俺は騎士風に跪いて頭を下げる。
「よくぞ来られた、人族の巫女よ。余はラグランジェ王国の国王、アキレス・フォン・ラグランジェだ」
アキレス様は右手を左肩に添えて軽く頭を下げた。王様が頭下げてもいいのかな?
セルジュ様もスカートの裾をつまむようにして頭を下げる。
「イングリッド教国で聖女を務めております、セルジュと申します」
「それで、そなたがジン殿か?」
「はい、ザパンニ王国で冒険者をしております、ジンと申します」
顔を上げて答える。
「ジン殿、そなたは教会の認めた聖人だ。跪かなくても良い」
聖人って、いつからそうなった?
「立っていては話もできん。座って話すとしよう」
そういって、ソファーを勧めてきた。
俺とセルジュ様は並んで座ったが、アキレス陛下の体がゴツくて緊張しっぱなしだ。あれで襲われたら魔法使う前に殴り倒されそうだ。
「それで、ジン殿。神の試練について聞いても良いか?」
「申し訳ありません。それは言えません」
レベルの概念がないのにレベル上げの話しても信じてくれないだろうしね。大っぴらに言うことでもないし。教皇様も気を使って聞かなかったのに、アキレス陛下は聞くんだ。
「そうか。神の試練だし、仕方がないか。
では聞き方を変えよう。神の試練は我が国に関係はあるのか?」
「特に国に縛られた試練ではありません。王国にも迷惑をかけるつもりはありません」
アキレス陛下はホッとしたようにため息をついた。
「それは良かった。王として確認しておかなくてはならんでな。不躾な質問をしてすまなかった」
「国として当然の対応かと思います。それで、陛下にお願いがあるのですが」
「なんだ、言ってみよ」
「王都の外に出たいのですが」
「ふむ。構わんと言いたいところだが、今すぐに許可を出すわけにはいかんな。まだ使節団との交渉の最中だからな。一通り交渉が終わったら許可を出そう」
「わかりました。ありがとうございます」
面会が終わったあと、王宮に滞在するか尋ねられたが、教会で部屋を借りているので大丈夫だと答えた。
馬車で教会まで戻り、リリア達と合流した。やっとくつろげる。
「メアリー、忘れてたけど、お前も王女だよな?使節団と一緒に顔を出さなくても良かったのか?」
「今更言いますか?私はジン様についていくと決まった時点で、公的な仕事からは外されています。なので、向こうから接触してくるならともかく、私が代表団に入ることはありません」
「そうか。別に行ってもいいんだぞ?」
その間にどこかに行くかもしれないけど。
「大丈夫です。国元に戻ればともかく、この国ですることはありません」
俺は与えられた部屋で魔力循環の練習をしていた。毛細血管まで魔力を行き渡らせ、瞬間的に一部に魔力を集中させる。出来るだけ滑らかに行えるように、何度も繰り返す。
最初のうちは制御に失敗して、毛細血管から血が出たりしていたが、最近ようやくそう言う失敗はしなくなった。しかし、動きながらだと難しいので、普段は今まで通り動脈だけで循環させている。
教会にも騎士団があるらしく、訓練場があるとのことなので、借りることにした。
訓練場にいる騎士団は主に狼人族だった。種族によって得意不得意があるので、同じ種族で一つの部隊を形成しているらしい。
隅っこの方で体を動かす。
クレアとマリアも横で体を動かしていた。ずっと馬車だったから鈍っているはずだ。
メアリーとリリアは日陰で訓練を見ているだけだ。一緒に身体動かしておいて方がいいと思うよ?
魔力を毛細血管まで循環させながら格闘技の型を一通りなぞる。今の魔力の循環の仕方だとそれだけで難しい。慣れるようにゆっくりと型を繰り返す。時々毛細血管から血が出ているが気にしない。
俺は突きの時に、拳に魔力を集中させてみた。拳が血だらけになった。まだ無理のようだ。
循環に慣れるために訓練場を走ることにした。基礎体力をつけるためと循環に慣れるためだ。騎士団の人たちがたまに不審げな視線を向けてくるが無視だ。無視。
一通り訓練を行なったあと、毛細血管を<神聖魔法>で治癒する。早く体を拭きたい。傷は直せても流れた血は残っている。服も着替えないといけないだろう。
訓練場を出ようとしたら、入り口付近にセルジュ様がいた。
「ジン様、<神聖魔法>を使えたのですね。さすがは神に選ばれしものです」
俺が<神聖魔法>を使うところを見ていたらしい。<神聖魔法>も大きな魔法を使うと光ったりするので目立つが、毛細血管を塞ぐくらいならそんな心配もない。なのでバレないと思っていたのだが。
0
お気に入りに追加
757
あなたにおすすめの小説
異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる