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208 使節
しおりを挟む#208 使節
国の使者が来るまで3ヶ月。俺たちは暇していた。
セルジュ様は近隣の貴族などから挨拶を受けたりしていたので、俺は護衛についていたが、美辞麗句を並べるだけで、身のない話ばかりだった。
使節団の方は、この国の歴史から法律まで色々と調べているようだ。領主のクボークと長いこと話しているのを見かける。クボークも仕事があるだろうに。
使節団の中でもベスク王国は特に熱心で、あちこちに顔を出しているらしい。本国から何か言われているのだろうか?メイドから料理人、果ては護衛まで捕まえて話を聞いている。仕事の邪魔をすると嫌がられますよ?
俺たちが軟禁されて3ヶ月、ようやく国の使節団がついた。
代表はライオン族だ。金のたてがみに碧色の目だ。彫りが深く、野生を感じさせる。武官だろうか?
「俺はこの使節団の団長をしているライオスという。貴殿が聖女殿か?」
「はい、私が今生の聖女をしております、セルジュと申します。お見知り置きを」
「うむ、俺はこの国の第3皇子だ。今回の件の責任者でもある。素直にいってしまえば、信用できるかどうかを図りに来た。神殿からは巫女なのは間違いないと聞いているので、それに関しては疑っていない。
だが、国の代表という点では、貴国を信用して良いか今の所判断材料がない。よって、しばらく俺と会談の場を設け話し合いをしたいと思う」
「当然のことだと思います。ただ、私はイングリッド教という宗教を代表しておりますが、国の代表ではありません。
国の代表は別におりますので、そちらと話していただいた方が良いかと思います」
「そうか。ならそうしよう。貴殿にはしばらく不便をかけるが、交渉がまとまるまではここに逗留していてくれ」
「わかりました」
そういうと、ライオスは出て行った。おそらく各国の使節団と話をしに行ったのだろう。なんというか、正直というか裏表のない人だ。交渉とかできるのかね。
交渉はうまく行っているようで、イングリッド教国の使者がセルジュ様に報告に来ていた。
「それで、国交は結べそうですか?」
「はい。西の地方では奴隷狩りが何度か来たことにより、態度を硬化させておりますが、国としては国交を結んでも良いと。ただ、文化の違いなどがあるため、最初は訪問人数を限定して限られた者だけが行き来出来るようにしたいとの事です。
獣人側も人間の国に使節を送り、文化を確認するとの事。最初はこういう所から始めるのが無難ですな」
「文化の違いは大きいのでしょうか?」
「今の所我々と違うところは見当たりません。ですが、こういう事は些細な違いから物別れすることもあります。今後も注意が必要でしょう」
「なるほど。ではあなた方はどうされますか?」
「我々は代表者を残し、残りは一旦帰って、国で協議してもらいます。とりあえず今回の目的は果たせましたので、私はこのまま交流を深めることにします。聖女様はどうされるつもりですか?」
「この国では女神イシュタル様も信仰されていますので、特に布教は考えていません。ですが、この国をもっと見たいと思います。なので、しばらくはこの大陸で旅をしようと思っています」
これは俺と相談して決めた事だ。俺はもっといろんな所を見てみたい。ここにいたのではセルジュ様の護衛で終わってしまう。それでは俺は満足できない。
この大陸は広いと聞く。ならばいろんな文化や風習があるだろう。俺はそれを見てみたい。それに文献も見れればベストだ。使った事のない魔法が使えるようになれば嬉しい。
あとはそうだな。最近レベルが全然上がらないので、何かブレイクスルーがあると嬉しいかな。別にちょっとづつでも上がっていれば良いんだけど、実感が欲しいよね。いくら<不老>だから時間をいくらかけても良いとはいえ、何年かで1レベルなんてのは遠慮したい。
文化が違えば違う発想もあるだろうし、期待している。
「しかしそれでは本国でのお役目が。。。」
「もともと布教の旅に出ると言って国を出たのです。獣人の国であろうが構わないはずです。女神様は獣人を差別されていません。女神様の威光を説くのは国のためにもなります」
「それはそうですが。。。」
文官は国に戻って、聖女を続けて欲しいらしい。セルジュ様がそうしたいというなら俺は止めませんよ?神託だからという事で同行してもらっているけど、俺的には必須というわけじゃないしね。今回も俺が行きたかったから便乗しただけで、布教なんてどうでも良かったしね。
「それにどうしても私が必要なら<神託>が降るでしょう。それがないという事は教皇様で十分対処できるという事です。教皇様を信じなさい」
「そうまで言われるのでしたら。私はこちらに残りますので、何かお力になれることがあればいつでも申し付けてください」
「わかりました。その時はお願いします」
まだ友好国になったわけでもない国で、使節がどんな力になれるのかね。
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