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196 バンダナ
しおりを挟む#196 バンダナ
1週間ほどは王宮でゆっくりと過ごさせてもらった。
流石にそろそろギルドの依頼を受けないとまずいだろう。
マリアを誘ってギルドに向かった。
「アイリスさん、依頼を受けに来ました。何かありますか?」
「ジンさん、Sランクではありませんが、Aランク依頼がいくつかあります。一つが、Sランク冒険者ラノスの生存確認です。正確には死亡確認ですね。魔の森での捜索になりますので、Aランクで発行されています。
Sランクとなると、生存しているかの確認も重要ですので」
「その割には俺の死亡は簡単に信じられたようですが?」
「国からの公布でしたので。それに他国の、それも辺境ですので、調査を出すのも難しかったのです」
国からの公布は信頼性が高いらしい。俺からするといい加減にしか見えないが。アズール帝国からはどんな報告を受けたのやら。トップ同士は交流もあるようだし、生々しい話がされていると思うんだが。
俺がSランクのままだとまずい事でもあった?
いや、それなら俺を復活させる理由がない。
情報が錯綜した?
あり得る。リリア達の証言しかないのだから、魔法陣でどこかに飛ばされたと考えるのが順当だろう。その上で<転移>が使える俺が帰ってこないなら死んだとみなすと。ありそうだ。
そうなると、北の山脈で一年迷子になっていたと言うのは、嘘がバレバレだったかな?
まあ、信じてなくても、それで収めてくれるならいいか。
「それで、ラノスとやらはいつ頃どの辺で死んだのですか?」
「はい、中級ダンジョンフレイアから西に向かったそうです。魔の森から逃げてきたパーティメンバーもフレイアで報告して、そのままフレイアで亡くなっています」
「時期は?」
「報告が届いたのが1週間ほど前です。魔の森には入ってから5日程度進んだとか。一人でも帰ってこれたのが奇跡ですね」
魔の森を5日も進んだら、結構な強さの敵が出ただろうに。なんで帰ろうって思わなかったのかな?
「今から行くと、死んでから一月くらいですか。死体が残っているとは思えませんが?」
「はい。ぶっちゃけると、調査を行なったと言う事実が必要なので、結果は問いません。フレイアから魔の森を5日の場所を調査、期間不問、報酬は金貨50枚です」
「まあ、いいでしょう。久しぶりに魔の森に行きますか。マリア、お前は魔の森は無理だ。王宮で待っていてくれ」
「お待ちください。フレイアまでお伴します。道中の食事はお任せください」
「そうか、なら頼む」
俺たちはラールサック領への乗合馬車に乗り、途中で降ろしてもらった。ここから1日で中級ダンジョンのあるフレイアだ。以前一度だけ来たことがあるが、クレアが<身体強化>すら出来なかったので、探索を諦めた場所だ。
フレイアに着いて、魔の森で必要そうな物を買っていると、服屋で隅っこの方を気にしているのを見つけた。何か欲しいものがあったのだろうか?
マリアは欲しいものがあってもなかなか言わないので、こちらで気づいてやらないと、欲しい物を諦めてしまう。
「マリア、何か気になる物があるのか?」
「あ、あの、あのバンダナが素敵で。。。」
どれどれ。むう、いろいろあって、どれか分からないな。
「どれだ?」
「あ、あの、これです」
明るい赤色に黄色で簡単な刺繍が入っている。髪の赤茶に合わせたんだろうか。
「これがいいのか?他のを見てもいいだぞ?」
「それでは、少し失礼します」
マリアはバンダナを選び出した。普段買いたいと言いださないマリアが欲しいと言うのだ、多少高くても買ってやりたい。
マリアはいろんなバンダナを一つ一つ真剣に選んでいる。別に二つ欲しいならそれでもいいんだよ?バンダナくらい安いものだ。
マリアは最後に3つ残して悩んでいるようだ。普段使いにする用なら3つは多いか。ゆっくり悩んでもらおう。
「あ、あの、これよろしいでしょうか?」
結局最初に見た赤いのにしたようだ。
「ああ、構わないぞ。一つでいいのか?」
「はい!」
俺は予備の服と一緒に購入した。
マリアは早速つける気らしく、髪をまとめ始めた。うん?髪留めに使うのか?てっきり額に巻くのかと思っていたが。マリアは髪を紐で縛ると、その上からバンダナを巻いた。落ちないだろうな?どうやら髪をしばった紐でバンダナもくくるらしい。
赤茶の髪に明るい赤が映えてなかなか綺麗だ。個人的には髪をまとめるならもうちょっと長いほうがいいとは思うが。これ以上髪が長いと戦闘にも差し支え出るだろうし、言わないけど。言ったら絶対に伸ばすのがわかってる。
雑貨屋に行った時にも、マリアはあるものに視線がいっていた。匂い袋のようだ。冒険に差し支えるから流石にダメですよ?いや、普段使いならいいのか?
「なんだ、匂い袋がいいのか?」
「い、いえ、冒険の妨げになるので結構です」
マリアが遠慮しだした。まあ妨げになるのは確かなので勧めはしないが、王都に戻ったら買ってやろう。
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