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174 基本の『き』
しおりを挟む#174 基本の『き』
「さあ、気を取り直してイングリッド教国に向かうぞ。陸路だ!」
翌日、俺たちは陸路でイングリッド教国に向かう事にした。伯爵のことは今度この街に来た時に考えよう。
街道の関係から一旦ベスラートを経由する事になる。
プリムからベスラートまでの護衛依頼はすぐに見つかりそうになかったので、受けずに出発した。この街道はプリムからの主街道なので、定期的に警備兵が回っている。当然そのぶん、護衛依頼は少なくなる。
1週間ほどでベスラートにつくが、プリムで貴族に横槍を入れられたので、気分転換に街をうろつくことにした。
砂糖を使ったお菓子など、ザパンよりも多く、食事も美味しかった。気晴らしといえば、買い物、と言うことで、買い物にもいった。
この時は大変だった。
俺は気楽に買い物といったが、うちは4人女性がいる。そして女性の買い物は長い。俺としては日用品などの補充程度に考えていたのだが、女性からは違う見方があったらしい。
仮にも王都なんだから、流行のものがあるだろうと言うことだ。
俺は別行動をしようとしたが、離してくれなかった。
まずは服屋に連れて行かれた。『基本のき』らしい。もしかして『ほ』と『ん』もあるんだろうか?
メアリーとリリアは当然のように服を見て回る。そっちは高いですよ?お小遣い足ります?
店員も俺を放っておいて、女性陣についている。いや、別に俺の服はいらないからいいんだけどね。
何着か気に入ったのがあったみたいで、奥で着替えて、俺に見せてくる。俺に何をいえと?
「どうかしら?」
こう言う時は下手なことは言わないほうがいい。無難に「似合ってるよ」と言っておく。何か納得しなかったらしく、次の服に着替えて出ている。これも「似合ってるよ」と言っておく。また奥に入ってくが、ファッションショーだろうか?
リリアが横で店員とあーでもないこーでもないと話してるので、その間の暇つぶしだと思っておこう。
俺は結局どの服にも「似合ってるよ」しか言わなかった。実際どの服も似合っていたのだ。メイド服を着て出てきた時はどうしようかと思ったよ。あなた王族でしょう?
聞いたら、一度着てみたかっただけらしい。まあいいんだけどね。
メアリーは白のワンピースに決めたようだ。しかし、決めた後になぜ他の服を見る?
メアリーが終わった後はリリアだ。こちらもファッションショーをするらしい。こちらも俺は「似合ってるよ」しか言わなかった。途中でリリアが膨れて「もっと何かあるでしょう?」と聞いてきたが、他に答えようもない。
俺が「似合ってるよ」マシーンと化してからしばらくすると、決めたのか、淡い黄色のワンピースを選んだ。だから、なぜ決めた後にも服を見てるんだ?
その後、後ろを振り返ると、古着のコーナーでクレアとマリアが服を見ていた。買うつもりがないのか、特に試着していない。
「二人とも1着づつ選べ、買ってやるから」
「でも私メイド服ありますし、、、」
「街できる服くらいいるだろう、いいから1着選べ」
「そ、それならこれとかよろしいでしょうか?」
古着を1着出してきた。上がブラウスで下が紺のスカートだ。見てるうちに気に入ったのがあったのだろう。
「私はこれが、、、」
メアリーもおずおずと出してきた。ふむ、ハーフパンツにポロシャツか。動きやすいけど、転ぶと怪我するよ?
まあ、二人が選んだのならそれでいいだろう。さっさと会計を済ませ、、、ようとして、店員がメアリーとリリアにべったりなのに気づいた。
まだ買うつもりなのだろうか?
先ほど選んだはずのワンピースと今見ているのを見比べて何か言い合っている。さっき決めたのはなんだったのだろう?
ようやく服が決まったみたいで、俺のところに持ってくる。
え?俺が払うの?
店員も合計額を俺に請求してくる。いや、確かに男が買うのが甲斐性だけどね。ここは自分で払うところだと思うんだ。二人とも自分で払う気なくて選んでたの?
俺は店員への見栄もあったので、買って上げることにした。二人で金貨3枚もした。奴隷組の服は銀貨1枚だ。
さあ、終わりだと、宿に戻ろうとしたら、まだ行くところがあるらしい。
まさか!?
予想通り、アクセサリーだ。いや、服より高そうなんだけど?
奴隷組まで選び出した。いや、奴隷用は俺が買ってあげるけど、君達二人は自腹でいいのでは?
イヤリングやネックレス、髪留めにブレスレットなど片っ端からつけてみている。俺は服以上にわからないので、置物と化していた。
「あ、あの、これ買っていただいてよろしいでしょうか?」
マリアがヘアピンを持ってくる。銅貨5枚だ。頷いてやると、喜んでも戻っていった。あのくらい可愛い金額ならいいんだけど。
クレアは組紐出で出来たリボンらしい。銅貨7枚だ。頷いてやる。
結局メアリーがブローチ、リリアがブレスレットを選択した。そして、俺の顔を見てくる。じーっと見られて俺は諦めた。
分かったよ、買えばいいんでしょう。
店員さんに値段を聞くと、合わせて金貨1枚と大銀貨3枚らしい。服より安いので安心したが、そう言う問題じゃない。奴隷組の慎ましさを見習いなさい。奴隷組の銅貨12枚を払って店を出る。
さあ、終わりだと、宿に戻ろうとしたら、まだ行くところがあるらしい。
まさか!?
カフェに連れて行かれた。アクセサリー屋で流行りの店を聞いてきたらしい。
卵のタルトを頼んでいた。いや、美味しいんだけどね?ここも俺が持つんだよね?多分。
二人は甘いものを食べて満足したのか、宿に帰るのを了承してくれた。
女性陣は満足そうにしていたが、俺はストレスが溜まった。待ってるだけって辛いのよ?懐にも辛いし。
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