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049 男は俺だけ
しおりを挟む#049 男は俺だけ
今日は屋敷の引き渡し日だ。
馬車に乗って、屋敷に向かう。
屋敷にはメイドや執事、庭師、護衛の騎士など、全部で50人ほどいるという。
確かにあの大きさを考えれば、その位要るかもしれない。
特に護衛に関しては、24時間体制で、ローテーションで回さなければいけないので、なおさらだ。
屋敷の前に着き、馬車を降りると、先日見たのとは比べ物にならなくらい綺麗になっていた。
庭も雑草が抜かれ、綺麗な芝生に生え変わっている。
玄関の前には50人ほどのメイドや兵士が並び、頭を下げてくる。
「「「お帰りなさいませ、お嬢様」」」
秋葉原かどこかの特殊なカフェの様だ。
「ご苦労様です、私がこの屋敷の主人となった、リリアーナ・フォン・オーユゴックです。
何分、不慣れですので、フォローしていただけると助かります。
これから、よろしくお願いします」
リリア様が軽く頭を下げる。
すると、メイドや兵士達も頭を下げる。
いつ終わるんだろうね。
俺たちは中に案内され、リリア様が使う主寝室、隣に護衛のためにマリアの部屋。クレアは反対側の隣だ。
俺?男がそんなに近くの部屋に入れるわけないよ。
リリア様とは一番遠い部屋をあてがわれた。
俺としては文句はない。
ただ、これだけはさけたかった。
「ジン様、専属のメイドとなりました、ルナです。
これからよろしくお願いします」
頭を下げてきたのは、自称俺の専属メイドだ。
リリア様が付けてくれたらしい。
しかし、俺からしたら、余計なお世話だ。プライバシーも何も有ったもんじゃない。
そこで、付属の部屋で待機してもらい、用があれば声をかけるか、呼び鈴を鳴らすということで落ち着いた。
いや、それが普通じゃないかな?メイドさんもずっと立っているわけにもいかないだろうし。
でも、オーユゴックでは、ずっと立っていた。
お客様と通常とは違うのかもしれない。お客なら居る時間は限られているしね。
それと、付属の部屋だが、主要な部屋には、メイドや従者用に小部屋が付いている。
貴族は自分専属の従者を連れて歩くのが当たり前らしい。
付属の部屋にも簡単なキッチンがあり、お茶くらいは入れれる様になっている。
「あぁ、ルナさん、この屋敷、お風呂はあるのか?」
「ジン様、どうか、ルナと呼び捨てでお願いします。
それと、お風呂ですが、ございます。
現在、当屋敷では男性はおりませんので、ジン様専用となります」
「え、男って、俺だけ?
執事さんとか男性じゃないんですか?」
「ええ、胸はありませんし、髪も短いので誤解されやすいですが、女性です」
「兵士さんや庭師さんも?」
「もちろんでございます。
メアリー殿下より、リリア様に何かあっては大変だから、と全員女性を指名されました」
なんて事だ。
男が俺しかいないなんて。メアリー様、何をやってるんですか!?
アウェー感がハンパない。
ルナさんも専属メイドとは名ばかりの監視かもしれない。
「と、とりあえず、お茶とか欲しいかな??」
俺も動揺してるのだろう。疑問形になってしまった。
「かしこまりました。少しお待ちください」
ルナさんは隣の従者部屋に入っていった。
ふぅ、とりあえず一人だ。
今のうちに整理しておこう。
俺たちはリリア様に雇われた。良し。
マリアは直衛、クレアは屋敷の護衛への参加。良し。
俺は基本フリー。リリア様の休日だけお付き合いする程度。良し。
屋敷には俺の部屋があり、衣食住が保証されている。良し。
裏庭には<調合><鍛治>が出来るこやが建てられる予定。良し。
この屋敷には男が俺しかいない。よく無し。
俺一人浮いてるよ?
せめて、執事や兵士に男も入れようよ。
リリア様に相談すると、メアリー様の強い要望で、断れなかったらしい。
俺の人生終わったかもしれない。
いや、俺だけ宿に泊まればどうだろう?
リリア様の休みの日だけ屋敷に通うとか?
結構いい案かもしれない。
早速リリア様に相談に行った。
「ジン様、屋敷に住むことも契約に入ってますのよ?
、、、それに、すれ違った時におやすみとか言えないですし。。。」
後半はよく聞き取れなかったが、宿を取るのもダメらしい。
仕方がないので受け入れることにして、裏庭に出てみる。
前にも見たが、広い。隅の方で工事しているのは俺の小屋を作ってくれているのだろう。
裏庭で訓練をすることにする。
剣を振りながら少しずつ前に出て、裏庭を一周する。
次は槍だ。盾を持った状態で、右手だけで槍を振るう。これも裏庭を一周する。
基本、剣も槍も、前に出て叩きつけるので、自然と前に進むのだ。
そのあとは<格闘術>だ日本で漫画で読んだ動きをなんとなく思い出しながら、なんとなく体を動かす。
型はできてないだろうが、一つ一つに力を込めて、全力で行う。
すると、無駄な動きというのが見えてきた。妙な動きをすると、体に負担がかかるのだ。
負担が軽くなる様に、試行錯誤していると、ルナさんが水差しとコップを持ってきてくれた。
「ありがとう」
俺はありがたく頂き、続きをする。
何かわかりそうな感覚があるのだ。
全力で体を動かし、変に感じたところを修正していく。
徐々に体の動きが滑らかになっていく。
そして正拳突きをした時に、これだ、と感じた。何度も正拳突きを放つが、同じ動きができている。
他の動きも確認してみた。スムーズな動きで体への負担が少ない。
もしかして、と思いステータスを見る。
<ステータス>
やはり、<格闘術>がlv1になっていた。
自分で努力して上がるのは嬉しいね。
魔法は循環させてたら、いつの間にか上がっていたから、あまり実感がないんだよね。
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