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俺は今、王都の西にある草原に来ている。
奴隷の二人はオーク狩りに行っているので、今のうちに魔法の練習をしたいのだ。
俺はまず、1ポイント使って、<風魔法>を空中に放つ。
上空に斬撃が放たれる。気のせいか、前より強くなっている気がする。
ここまでは予想通りだ。
俺は一つの仮説を立てた。
HPもMPも最小単位は1ポイントではないのじゃないか、というものだ。
コンピューターであれば、何かあったときに1ポイントプラス、という計算を行うが、怪我が徐々に治っていくことはあっても、段階的に治ることはない。
つまり、HPやMPはデジタルではなく、アナログではないか、と言う事だ。
何が言いたいかと言うと、0.1ポイント単位での魔法の駆使ができるのじゃないかと言う事だ。
今の俺の<魔力操作>はlv12だ。それに対して魔法のlvは10だ。
魔法を使い始めた頃は、普通に使ったら、暴風と言える風が起こったのに、使う魔力を少なくしたら、そよ風に変わった。
ドライヤーなどの魔法を作ったのも良い思い出だ。
当時は魔力もそれほど高くなかったので、おそらく、10ポイントを1ポイントに節約したのだと思うが、今の制御力なら1ポイントを0.1ポイントに出来るかもしれない。
俺は少しとか、爪の先とか、曖昧な表現を使わず、10分の1を想像して魔法を練る。
魔法を解き放つと、やはり斬撃が飛ぶが、先ほどよりも小さいように思える。
MPを確認すると、消費されていない。
おそらく、消費されたのが、1ポイント未満だったのだろう。
これは俺の仮説が立証されたと思ってもいいだろう。
俺はそよ風が起こせるくらいまでなろうと、少ない魔力の使用に没頭するのだった。
「やっと出来たぞ!」
俺はそよ風の吹いている手元を見る。
何時間も掛けて、少ない魔力の制御を練習したのだ。
感覚的には0.1ポイントどころか0.01ポイントくらいの使用量だ。
俺は早速ドライヤーの魔法を試す。
そよ風が起きて、、、炎が巻き起こった。
慌てて魔法を消すが、袖が少し焦げてしまった。
髪も少しチリチリしてるかもしれない。
<風魔法>は制御できるようになったが、<火魔法>は別途練習が必要らしい。
<魔力操作>はできているはずなので、同時操作のスキルが足りないために、<火魔法>の制御が甘くなったのかもしれない。
「とりあえずは火魔法の制御からだな」
俺は宿で用意しもらったサンドイッチを囓りながらひとりごちた。
続けて<火魔法>の練習もしたいところだが、もう帰らないと、奴隷達が帰ってきてしまう。
魔法の練習は秘密なので、心配させてしまうことになる。
俺はそそくさと街に帰った。
「ご主人様!今日は20匹倒しました!」
褒めて褒めてと言わんばかりにクレアが報告してくれる。
「そうか、怪我はなかったか?
怪我したら、ポーションを使うんだぞ。
怪我は放っとおくと病気になるからな」
「はい、大丈夫です。怪我はしてません」
「それならいいんだが。
それじゃ、ギルドに報告に行くか」
ギルドに所属しているのは俺だけなので、討伐報酬をもらいに行くのは俺が一緒でないといけない。
奴隷も登録できれば、こんな面倒なことしなくて済むのだが、奴隷は所有物なので、勝手なことを出来ないようにするため、登録を認めていないのだ。
「キャシーさん、今日の分お願いします」
「はい、ジンさん。20体ですね。
いつもありがとうございます。
定期的にオーク肉が手に入るのはありがたいです」
「それと相談なんですが、家を借りたいのですが、不動産屋か何かありませんか?」
「家を借りるんですか?
それならギルドでも少しは扱っていますよ。
ギルド員が死亡した場合に、買い取る場合もありますので。
オークの処理をしますので、少しお待ちください」
ギルドでも不動産を扱っているらしい。
なんでもやってるなギルド。
「お待たせしました。
家ですね。応接室でお話ししましょうか」
俺たちは奥の部屋に案内される。
「それでジンさん、どんな家を考えていますか?」
「そうですね、部屋が3部屋以上、風呂付き。裏庭があるといいですね」
「それだと。。。」
キャシーさんはファイルを見ながら探してくれる。
「これなんか如何でしょうか?
元Bランク冒険者の持ち家で、引退を機に故郷に帰るということで、ギルドで買い取ったものになります。
部屋は5部屋。風呂もついています。
お値段の方は大金貨3枚になります」
「買取だけですか?
借家などは?」
「申し訳ありません、冒険者はいつ死ぬかもしれない職業ですので、借家はやってないのです。
これは他の不動産に行っても同じです」
「そうですか、それでは建物を見せてもらっても構いませんか?」
「もちろんです、ただ私は受付業務がありますので、1時間ほどお待ちいただけますでしょうか?」
「その位なら大丈夫です。
酒場で暇を潰しているので、声をかけてください」
俺の中では購入は決まっているのだが、家が古かったり、建て付けが悪かったりすると、工事の必要がある。
全体の金額を確認してからでないと、即決は出来ない。
俺は依頼表を見たりしてから、酒場で果実水を飲んで待っていた。
「お待たせしました。
ひと段落つきましたので、他の人に代わってもらいました。
すぐに、見にいけますか?」
「もちろんです。よろしくお願いします」
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