15 / 351
015
しおりを挟む#015
4日目、昨日の盗賊の残党が襲ってくるかもしれないと、警戒を厳重にしていたら、夜になって、見張りが叫んだ。
「オークだ!」
馬車を川側に寄せて、川沿いに野営していたので、道の反対からくる事になる。
兵士も冒険者もすぐに飛び起きて、武器を構える。
俺もすぐに起きたが、リリアーナ様は寝ぼけ眼だ。
「クレアもマリアも、リリアーナ様の護衛だ。
オークは冒険者に任せろ」
「はい!」
オークは身長2mちょっとの豚の顔をした魔物だ。群れを作り、ある程度群れが大きくなると、上位の魔物がに進化する。オークジェネラルやオークキングなどだ。
しかし、ただのオークならDランク冒険者でも複数人で当たれば勝てる程度で、Cランクなら単独でも狩れる。
オークの数が3匹なのを見て、俺たちが出るまでもないと判断して、護衛に専念する。
「リリアーナ様、オークが現れました。念のために、馬車にお乗りください」
オークにもオークアーチャーという、弓を使うのもいて、安心できない。棍棒を持った普通のオーク3匹なら冒険者たちで十分だ。
アンジェさんも同じ判断なのか、兵士たちを冒険者の後ろに配置させ、状況を確認するようだ。
冒険者はCランクとDランクだ。3匹程度は問題ない。
冒険者がオークを退治すると、アンジェさんは兵士たちに、解体するように命じた。
「ケベック、オークを解体しろ、今日の朝食にする。骨と皮はその辺に埋めておけ」
「了解です」
今日の食事にするらしい。
正直、倒すのはともかく、人型の魔物を食べるのには抵抗があるんだが。。。
クレアもマリアも、干し肉以外の肉が食べれると喜んでいるので、反対するわけにもいかない。
この世界では、オーク肉は、普通に街の食堂でも出てくるほど一般的な肉だ。
実際、俺も街の料理屋でステーキを食べたことがある。豚肉みたいで美味しかった。
しかし、目の前で倒した人型を見ていると、食べる気が失せてくる。
なんとか食べずに済ます方法はないだろうか。せめて目の前に死体がなければ。。。
「アンジェさん、他は焼いてしまって良いですか?」
「いや、今食べない分は馬車に積んでいく。人数がいるからな。悪くなる前に全部食べきれるだろう」
今日はオーク肉づくしらしい。
オークの死体は記憶から消そう。うん、死体さえ忘れれば、ただの豚肉だ。
「ご主人様、良かったですね!
保存食ばかりの食事にも飽きていましたし。
オークが出てくるとは運が良いです!」
マリアはどう料理しようかと考案中のようだ。
リリアーナ様は、、、はい、オーク肉を所望ですね。そんな気がしました。
オーク肉はスープに入れられ、くず野菜を乾燥させたものと一緒に煮込まれる。保存食の干し肉も入れることによって、塩味を追加する。
オーク肉は十分煮込まれると、とろっとして噛みやすくなる。塩だけのスープなのに、出汁のような物が出て美味い。
干し肉ばかりだった俺たちは、あっという間にスープを食べきった。
「そろそろ出発するぞ、準備しろ。
オークの群れがいると面倒だ」
アンジェさんが、スープが無くなるのを見て宣言する。
どうやら、日が昇るまで待たずに出発するようだ。
鍋を温めていた火種に砂をかけて火を消す。
馬車の中ではこんな会話があった。
「ジン様、オークが少数でよかったですね。オークは群れるので、数が多いこともあり、冒険者が狙って討伐するならともかく、旅の途中では会いたくない魔物です。
今回のように、少数であれば食料として美味しいですが、数で囲まれると死傷者が出ることもありますので」
「リリアーナ様が襲われていたのはオーガでしたが、どのくらいの強さなのでしょう?」
「Cランク冒険者がパーティで当たるレベルですわ。先日のように群れられると、Bランクでないと対処できないでしょう。
そういう意味では、ジン様がいらっしゃってとても助かりましたわ」
「ご主人様の剣は素晴らしいからな。
あれで<身体強化>してないというのだから凄まじい。
全く当たる気がしない」
クレアは持ち上げてくれるが、俺の<剣術>は所詮lv5だよ?
<身体強化>は使わないのじゃなくて、使うと強すぎて身体に負担がかかるから使えないだけだよ?
魔法の練習は続けているが、爪の先ほどの魔力でも暴風が吹き荒れ、<身体強化>すると、素手で木を殴り倒せる。が、筋肉痛になる。
元の筋力が少ないのもあるだろうが、強化しすぎの方に一票だ。
毎晩、空に向かって風魔法を使い、制御できないか練習しているが、一向に制御できる気がしない。
<魔力操作>仕事しろよ。
<魔力操作>もlv10なので、これ以上細かい制御はできない可能性も考えている。
その場合は、通常の攻撃魔法は封印決定である。ドラゴンでも出ない限り不要だろう。
大概は剣でどうにかなる。ただ、神様からもらった剣を今でも使っているので、そろそろ買い換えた方が良いかもしれない。
魔法で実用で使えるのは、<魔力感知>だ。
魔力を薄く伸ばす感じで、周囲に広め、その範囲にある魔力を持つ存在を感知するというものだ。
これのおかげで魔物や人が近づいてくるとわかる。今の所5kmほどだ。
寝ているときは範囲が狭まるが、それでも100mほどあるので、奇襲には効果的だ。
1
お気に入りに追加
759
あなたにおすすめの小説
異世界でスローライフとか無理だから!
まる
ファンタジー
突如青白い光に包まれ目を開ければ、目の前には邪神崇拝者(見た目で勝手に判断)の群れが!
信用できそうもない場所から飛び出していざ行かん見慣れぬ世界へ。
○○○○○○○○○○
※ふんわり設定。誤字脱字、表現の未熟さが目につきます。
閲覧、しおり、お気に入り登録ありがとうございます!
異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
土岡太郎
ファンタジー
自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。
死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。
*10/17 第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。
*R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。
あと少しパロディもあります。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。
YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。
良ければ、視聴してみてください。
【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
https://youtu.be/cWCv2HSzbgU
それに伴って、プロローグから修正をはじめました。
ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる