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第4章 アレグスト帝国編
089 袖の下
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#089 袖の下
「クレア、俺も袖の下渡したほうがいいんだろうか?」
「どうでしょうか?使者であれば潤滑な関係を築くために必要でしょうけど、ジン様はどちらかと言えば格上になります。なので渡さないほうが良いかと思いますよ」
俺の方が格上なのか。いや、正確には俺の婚約者の王女がいるから格上なのか。でもこの国ではまだ婚約は発表されてないんだよね。
ふむ、袖の下を渡してどの程度扱いが変わるのか見てみようか?
「クレア、そこそこお金持って来てたよね?」
「ええ、お嬢様から多めに預かってはいますが、もしかして袖の下を渡すつもりですか?」
「ああ、どの程度効果があるか知っておきたくて。多分だけど、俺に袖の下を渡してくる貴族や商人もいると思うんだ。受け取らない方向で考えてはいるけど、もし受け取らざるを得ない場合にどのくらい差をつければ良いのかを知っておきたい」
「なるほど。それなら確かにやってみるのも良いかもしれませんね。いくらくらい包みますか?」
「使者どのはどのくらい包んだと思う?」
「銀貨十枚位じゃないでしょうか。それ以上だと毎回払うのは難しいでしょうし」
「じゃあ金貨1枚包んでみようか。使者どのと俺の扱いがどうなるのか見てみたい」
まあちょっとした使者どのへの嫌がらせも含む。もし子爵様が露骨に俺になびいたら面白いと思わない?
「ジン様でしたか、御用があるとの事でしたが、何か不備でもありましたかな?」
「いえ、渡すべきものを渡して無かったと思い出しまして。こちらになります」
小袋だが、金貨が1枚入っている。
子爵は中をチラッと確認してニンマリを笑った。
「これはこれはお気遣いいただきありがとうございます。ジン様とはこれからも仲良くしていただきたいものですな」
「ええ、私も子爵様とは仲良くしておきたいと思います。中身はその表れだと思っていただければ」
「ウンウン、異世界人だからこちらの文化を知らないのだと思っておりましたが、ちゃんとお分かりのようで重畳重畳。明日の朝食は楽しみにしていてくだされ」
「ありがとうございます。楽しみにしてますね」
そう言って応接室から出たが、どのくらい態度が変わるだろうか。
一晩接待しただけで100万R。かなり美味しいはずだが。
「おはようございます、ジン様。今日も元気そうで何よりですな」
俺は使者どのと一緒に食堂に入ったのだが、使者殿よりも先に俺に挨拶してきた。露骨に態度が変わったね。使者殿が唖然としてるよ。
「使者どのも座ってくだされ、朝食をいただきましょう」
そう言ってメイドに案内されたのは、俺が上座だった。もちろん最上位には子爵様がいるのだが、その隣だ。明白に使者殿よりも上だと言っている。
これだけ明確に差をつけられると使者殿が可哀想になってくるな。一応使者殿が正式な使者なんだけど。
ああ、使者どのとしか言ってないのは正式に名乗ってくれないからだ。ちゃんとそれまでの他の貴族との会話からアイザックさんだというのは分かっている。だけど名乗ってくれない以上、俺は使者殿と呼ぶことにしている。
食事中も主に俺に対して話しかけてきて使者殿にはほとんど話題を振らなかった。金貨の力って偉大だな。
でもこれって俺が何らかの形で袖の下的なものをもらったらこう言った掌返しも必要だという事だろうか?なんか嫌だな。一晩でこうまで待遇が変わるとかえって怖い。
それに貴族によっては袖の下を嫌がる人もいるだろうから相手を見ないとね。俺も嫌がれば持ってくる人はいなくなるだろうか?渡してきたら馬鹿にするな、とか言って叩き返したら2度と持ってこないかな?
でも相手によっては受け取らざるを得ない場合もあると思うんだよね。もらっておかないと失礼に当たるとか。異世界人だからそういうのはいらないと最初から決めておけば良いんだけど。なんか皇帝陛下とかからもなんだかんだでお金を貰いそうな気がする。
うん?結納金って俺が払うべきなのか?何となく向こうが払ってきそうな雰囲気だったけど。俺は結婚しなかったから詳しくないけど、男から払ったような気がする。この世界ではどうなんだろう?
「男性側から払われる場合が多いですが、婿入りの場合は女性側から払われまから、男女の違いではなく、迎える側が払うという感じでしょうか」
なるほど。ならやっぱり俺が払わないといけないのか。でも俺って対してお金持ってない・・・(いらないですよ)・・・よね。
「ジン様は気にされる必要はありませんわ。向こうの方から言ってきた縁談ですし。ジン様にはこの縁談で得られる利益は全くありません。向こうだけが一方的に利益を得るんですから向こうから払ってくるのが当然です」
そういう考え方もあるか。まあ俺は別に婚約者はいらないからね。国のメンツに関わるから貰ってくれって言われてる立場だし。この件に関しては俺のほうに決定権がある。ハンバルニ王国側が受け入れて欲しいっていうから従ってるだけで。生活の面倒見てもらっている以上、断れないんだよね。
「クレア、俺も袖の下渡したほうがいいんだろうか?」
「どうでしょうか?使者であれば潤滑な関係を築くために必要でしょうけど、ジン様はどちらかと言えば格上になります。なので渡さないほうが良いかと思いますよ」
俺の方が格上なのか。いや、正確には俺の婚約者の王女がいるから格上なのか。でもこの国ではまだ婚約は発表されてないんだよね。
ふむ、袖の下を渡してどの程度扱いが変わるのか見てみようか?
「クレア、そこそこお金持って来てたよね?」
「ええ、お嬢様から多めに預かってはいますが、もしかして袖の下を渡すつもりですか?」
「ああ、どの程度効果があるか知っておきたくて。多分だけど、俺に袖の下を渡してくる貴族や商人もいると思うんだ。受け取らない方向で考えてはいるけど、もし受け取らざるを得ない場合にどのくらい差をつければ良いのかを知っておきたい」
「なるほど。それなら確かにやってみるのも良いかもしれませんね。いくらくらい包みますか?」
「使者どのはどのくらい包んだと思う?」
「銀貨十枚位じゃないでしょうか。それ以上だと毎回払うのは難しいでしょうし」
「じゃあ金貨1枚包んでみようか。使者どのと俺の扱いがどうなるのか見てみたい」
まあちょっとした使者どのへの嫌がらせも含む。もし子爵様が露骨に俺になびいたら面白いと思わない?
「ジン様でしたか、御用があるとの事でしたが、何か不備でもありましたかな?」
「いえ、渡すべきものを渡して無かったと思い出しまして。こちらになります」
小袋だが、金貨が1枚入っている。
子爵は中をチラッと確認してニンマリを笑った。
「これはこれはお気遣いいただきありがとうございます。ジン様とはこれからも仲良くしていただきたいものですな」
「ええ、私も子爵様とは仲良くしておきたいと思います。中身はその表れだと思っていただければ」
「ウンウン、異世界人だからこちらの文化を知らないのだと思っておりましたが、ちゃんとお分かりのようで重畳重畳。明日の朝食は楽しみにしていてくだされ」
「ありがとうございます。楽しみにしてますね」
そう言って応接室から出たが、どのくらい態度が変わるだろうか。
一晩接待しただけで100万R。かなり美味しいはずだが。
「おはようございます、ジン様。今日も元気そうで何よりですな」
俺は使者どのと一緒に食堂に入ったのだが、使者殿よりも先に俺に挨拶してきた。露骨に態度が変わったね。使者殿が唖然としてるよ。
「使者どのも座ってくだされ、朝食をいただきましょう」
そう言ってメイドに案内されたのは、俺が上座だった。もちろん最上位には子爵様がいるのだが、その隣だ。明白に使者殿よりも上だと言っている。
これだけ明確に差をつけられると使者殿が可哀想になってくるな。一応使者殿が正式な使者なんだけど。
ああ、使者どのとしか言ってないのは正式に名乗ってくれないからだ。ちゃんとそれまでの他の貴族との会話からアイザックさんだというのは分かっている。だけど名乗ってくれない以上、俺は使者殿と呼ぶことにしている。
食事中も主に俺に対して話しかけてきて使者殿にはほとんど話題を振らなかった。金貨の力って偉大だな。
でもこれって俺が何らかの形で袖の下的なものをもらったらこう言った掌返しも必要だという事だろうか?なんか嫌だな。一晩でこうまで待遇が変わるとかえって怖い。
それに貴族によっては袖の下を嫌がる人もいるだろうから相手を見ないとね。俺も嫌がれば持ってくる人はいなくなるだろうか?渡してきたら馬鹿にするな、とか言って叩き返したら2度と持ってこないかな?
でも相手によっては受け取らざるを得ない場合もあると思うんだよね。もらっておかないと失礼に当たるとか。異世界人だからそういうのはいらないと最初から決めておけば良いんだけど。なんか皇帝陛下とかからもなんだかんだでお金を貰いそうな気がする。
うん?結納金って俺が払うべきなのか?何となく向こうが払ってきそうな雰囲気だったけど。俺は結婚しなかったから詳しくないけど、男から払ったような気がする。この世界ではどうなんだろう?
「男性側から払われる場合が多いですが、婿入りの場合は女性側から払われまから、男女の違いではなく、迎える側が払うという感じでしょうか」
なるほど。ならやっぱり俺が払わないといけないのか。でも俺って対してお金持ってない・・・(いらないですよ)・・・よね。
「ジン様は気にされる必要はありませんわ。向こうの方から言ってきた縁談ですし。ジン様にはこの縁談で得られる利益は全くありません。向こうだけが一方的に利益を得るんですから向こうから払ってくるのが当然です」
そういう考え方もあるか。まあ俺は別に婚約者はいらないからね。国のメンツに関わるから貰ってくれって言われてる立場だし。この件に関しては俺のほうに決定権がある。ハンバルニ王国側が受け入れて欲しいっていうから従ってるだけで。生活の面倒見てもらっている以上、断れないんだよね。
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