68 / 124
第2章 ロザリア王国編
068 デート
しおりを挟む
#068 デート
俺が婚約を受け入れた事で、ロザリア王国内でも公式に婚約が発表された。まあ貴族の間ではすでに既定路線なんだけどね。なんせ晩餐会で陛下が発表しちゃったらね。今回のは国民にも発表されたという意味だ。前から噂はたってたんだけどさ。
「私の領地では麦の生産が盛んで・・・」
「私の領地では鉱石が取れるので比較的裕福な・・・」
「私の商会は各国に支店がありまして・・・」
俺となんとか知り合いになりたいと訪れてくる人たちだ。もちろん俺は王宮の別棟に住んでるので訪ねてくるのはそれなりの地位にいる人ばかりなんだけど、自慢とアピール合戦には飽きた。
俺が37だからか、この世界では行き遅れと言われる女性まで紹介される。まあ俺的にはその位の年齢の方が安心できるんだけど、裏が透けて見えてうんざりだ。
公式には俺はなんの手柄もあげてない事になっている。だけど、王女を婚約者に持つというだけでも俺に娘を嫁がせるのは意味があるらしい。俺にはわからんけど。
「ジン様、随分とお疲れの様子ですが」
ハルフェ殿下が訪ねてきてくれたんだけど、彼女がいる間は面会しなくて良いからちょっと楽だ。
「面会ですか。断ってしまえばよろしいのでは?」
「え?良いんですか?」
「もちろんです。彼らは図々しいですからあちこちで同じようなことを言ってますよ。数打てば当たると思ってるのです。一々付き合ってたらこっちが持ちませんよ」
なんだ、面会断っても良かったのか。
俺ってまだ日本人なんだね。ある意味アイデンティティーが残ってて良かったよ。
「じゃあ気晴らしに街に出ませんか?王都内でしたら安全ですし。お父様の許可も降りると思いますわ」
そうか、王族は街に出るのにも王様の許可がいるのか。
「いえ、私だけですわよ?男性は許可は必要ありませんし、女性で婚約してないのは私だけですので。成人したのだから過保護だと言ってはいるんですけど、いつまでも許可が必要だと言われてて」
ああ、可愛いんだろうな。
って、そんな姫を俺になんか与えちゃダメだろう!
いややめよう。また思考の渦に巻き込まれるだけだ。
許可は簡単に降りた。デートしてこいとの事だ。なんか騎士が10人ほど周りを固めてるけど気にしない。気にしたら負けだ。
「ジン様、このネックレス素敵ですわ」
「ジン様、このぬいぐるみ可愛いですわ」
「ジン様、この服なんかどうでしょう?ジン様の意見も聞いてみたいですわ」
まあ女性の買い物なんてこんなもんだろう。俺は似合ってるマシーンと化して居た。他に褒め言葉なんて知らん。貶すわけにもいかないし。
それに値段が怖い。どの店も大きな店構えでいかにも高級品を扱ってます、という感じなのだ。多分王族の装備品としてはその位の格が必要なんだろうけど、俺の財布感覚とは全然違う。
「あちらの公園で少し休みましょうか」
ああ、正直休憩は助かる。
殿下が買おうとするのを止めるのに疲れた。俺のこっちでの収入は国からの金貨10枚のみ。あんなアクセサリーをポンポン買うような生活はさせられない。今のうちから言っておかないと。
「ハルフェ、俺の年間の収入は知ってますか?」
「えっと、金貨100枚くらいですか?」
「いいえ、10枚です」
「え、そんなに少ないんですの?」
「ええ、俺は一般人ですからね。国から異世界人だからという理由で10枚もらってます」
実際には100枚とかいう話も出てたけど、あれってウィスキーの価格込みだよね?
「つまり、あんな宝石やアクセサリーは買えません。もし本気で俺に嫁ぐつもりがあるなら今からでも慣れてください」
「申し訳ありません。つい普段通りの感覚でいたので。そうでしたわね。ジン様は貴族でもなかったですものね」
「ええ、領地を持ってる貴族ならそれなりにお金はあるんでしょうけどね。ああ、俺は爵位はもらいませんよ?先に言っておきます」
「残念ですわね。ジン様なら子爵くらいまでならなれそうですのに」
「功績もなく貴族になんてなれるわけないでしょう。それに俺は数年でいなくなるんです。爵位なんてあってもなくても一緒ですよ」
「あら、帰るつもりでしたの?私との婚約を受けていただいたので帰らないのだと思ってたのですけど」
「帰りますよ。向こうでは辛い仕事も多かったですけど、愛着は・・・ないですけど、両親はおりますし」
「向こうではご結婚はされてたのですか?」
「いいえ、独り身でした。あまり女性とは縁がなくて。この歳まで独身だと色々と諦めるものですよ」
「もう大丈夫ですわ!私がついて居ます!寂しい思いはさせませんわ!」
いやだから帰るんだってば。だから結婚はしないよ?婚約までは了承したけど。
婚約は結婚の約束だけど、ここは詭弁で乗り切らせてもらう。あんなはめるようなやり方されたんだ。こっちも詭弁で躱させてもらおう。
「そうですか。それでは一つお願いがありますの」
嫌な予感がする。
「ジン様との間に子供が欲しいですわ」
やっぱり。結婚はしないし、子供も作らない。というか手を出すつもりはない。
「それは難しいですね。俺は元の世界に戻ったらこの世界で責任は持てません。なので子供を作るつもりはありませんよ」
ある意味結婚はしないと言ったんだけど伝わったかな?
「そ、そうですか・・・」
悲しそうな顔をしてるけど、これは絶対!バツイチの同年代ならお金を残してやれば済むだろうけど、16歳の将来は奪いたくない。ただでさえ俺との数年で若い時間を奪ってしまうだ。国の政治的配慮で失うには重すぎる。
俺が婚約を受け入れた事で、ロザリア王国内でも公式に婚約が発表された。まあ貴族の間ではすでに既定路線なんだけどね。なんせ晩餐会で陛下が発表しちゃったらね。今回のは国民にも発表されたという意味だ。前から噂はたってたんだけどさ。
「私の領地では麦の生産が盛んで・・・」
「私の領地では鉱石が取れるので比較的裕福な・・・」
「私の商会は各国に支店がありまして・・・」
俺となんとか知り合いになりたいと訪れてくる人たちだ。もちろん俺は王宮の別棟に住んでるので訪ねてくるのはそれなりの地位にいる人ばかりなんだけど、自慢とアピール合戦には飽きた。
俺が37だからか、この世界では行き遅れと言われる女性まで紹介される。まあ俺的にはその位の年齢の方が安心できるんだけど、裏が透けて見えてうんざりだ。
公式には俺はなんの手柄もあげてない事になっている。だけど、王女を婚約者に持つというだけでも俺に娘を嫁がせるのは意味があるらしい。俺にはわからんけど。
「ジン様、随分とお疲れの様子ですが」
ハルフェ殿下が訪ねてきてくれたんだけど、彼女がいる間は面会しなくて良いからちょっと楽だ。
「面会ですか。断ってしまえばよろしいのでは?」
「え?良いんですか?」
「もちろんです。彼らは図々しいですからあちこちで同じようなことを言ってますよ。数打てば当たると思ってるのです。一々付き合ってたらこっちが持ちませんよ」
なんだ、面会断っても良かったのか。
俺ってまだ日本人なんだね。ある意味アイデンティティーが残ってて良かったよ。
「じゃあ気晴らしに街に出ませんか?王都内でしたら安全ですし。お父様の許可も降りると思いますわ」
そうか、王族は街に出るのにも王様の許可がいるのか。
「いえ、私だけですわよ?男性は許可は必要ありませんし、女性で婚約してないのは私だけですので。成人したのだから過保護だと言ってはいるんですけど、いつまでも許可が必要だと言われてて」
ああ、可愛いんだろうな。
って、そんな姫を俺になんか与えちゃダメだろう!
いややめよう。また思考の渦に巻き込まれるだけだ。
許可は簡単に降りた。デートしてこいとの事だ。なんか騎士が10人ほど周りを固めてるけど気にしない。気にしたら負けだ。
「ジン様、このネックレス素敵ですわ」
「ジン様、このぬいぐるみ可愛いですわ」
「ジン様、この服なんかどうでしょう?ジン様の意見も聞いてみたいですわ」
まあ女性の買い物なんてこんなもんだろう。俺は似合ってるマシーンと化して居た。他に褒め言葉なんて知らん。貶すわけにもいかないし。
それに値段が怖い。どの店も大きな店構えでいかにも高級品を扱ってます、という感じなのだ。多分王族の装備品としてはその位の格が必要なんだろうけど、俺の財布感覚とは全然違う。
「あちらの公園で少し休みましょうか」
ああ、正直休憩は助かる。
殿下が買おうとするのを止めるのに疲れた。俺のこっちでの収入は国からの金貨10枚のみ。あんなアクセサリーをポンポン買うような生活はさせられない。今のうちから言っておかないと。
「ハルフェ、俺の年間の収入は知ってますか?」
「えっと、金貨100枚くらいですか?」
「いいえ、10枚です」
「え、そんなに少ないんですの?」
「ええ、俺は一般人ですからね。国から異世界人だからという理由で10枚もらってます」
実際には100枚とかいう話も出てたけど、あれってウィスキーの価格込みだよね?
「つまり、あんな宝石やアクセサリーは買えません。もし本気で俺に嫁ぐつもりがあるなら今からでも慣れてください」
「申し訳ありません。つい普段通りの感覚でいたので。そうでしたわね。ジン様は貴族でもなかったですものね」
「ええ、領地を持ってる貴族ならそれなりにお金はあるんでしょうけどね。ああ、俺は爵位はもらいませんよ?先に言っておきます」
「残念ですわね。ジン様なら子爵くらいまでならなれそうですのに」
「功績もなく貴族になんてなれるわけないでしょう。それに俺は数年でいなくなるんです。爵位なんてあってもなくても一緒ですよ」
「あら、帰るつもりでしたの?私との婚約を受けていただいたので帰らないのだと思ってたのですけど」
「帰りますよ。向こうでは辛い仕事も多かったですけど、愛着は・・・ないですけど、両親はおりますし」
「向こうではご結婚はされてたのですか?」
「いいえ、独り身でした。あまり女性とは縁がなくて。この歳まで独身だと色々と諦めるものですよ」
「もう大丈夫ですわ!私がついて居ます!寂しい思いはさせませんわ!」
いやだから帰るんだってば。だから結婚はしないよ?婚約までは了承したけど。
婚約は結婚の約束だけど、ここは詭弁で乗り切らせてもらう。あんなはめるようなやり方されたんだ。こっちも詭弁で躱させてもらおう。
「そうですか。それでは一つお願いがありますの」
嫌な予感がする。
「ジン様との間に子供が欲しいですわ」
やっぱり。結婚はしないし、子供も作らない。というか手を出すつもりはない。
「それは難しいですね。俺は元の世界に戻ったらこの世界で責任は持てません。なので子供を作るつもりはありませんよ」
ある意味結婚はしないと言ったんだけど伝わったかな?
「そ、そうですか・・・」
悲しそうな顔をしてるけど、これは絶対!バツイチの同年代ならお金を残してやれば済むだろうけど、16歳の将来は奪いたくない。ただでさえ俺との数年で若い時間を奪ってしまうだ。国の政治的配慮で失うには重すぎる。
10
お気に入りに追加
4,959
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。
埼玉ポテチ
ファンタジー
不運な事故によって、次元の狭間に落ちた主人公は元の世界に戻る事が出来なくなります。次元の管理人と言う人物(?)から、異世界行きを勧められ、幾つかの能力を貰う事になった。
その能力が思った以上のチート能力で、もしかしたら異世界の経済を破綻させてしまうのでは無いかと戦々恐々としながらも毎日を過ごす主人公であった。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる