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第弐拾陸話 看板娘(前編)

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 アオイは、冒険者ギルドにやってきた。

「ミーナさん、こんにちは」

「こんにちは。アオイちゃん、今日はゆっくりだね」

「昨日の緊急依頼で、疲れたから今日はゆっくりにしたんだ。」

「冒険者だけではないけど、体が資本だからね。無理しちゃうと体を壊して、何日も何ヵ月も働けなくなっちゃうこともあるからね。」
「病気は治癒魔法じゃ治せないから、魔法で治療して、すぐに働くなってことは不可能だからね。」
「アオイちゃんはわかっているみたいだけど、これからも自分の身体と相談しながら依頼受けるんだよ。」

「はい。無理してやって稼いでも、その後働けなけなくなれば基も子もないですからね。」
「じゃあ、クエストボード見に行ってきま~す」

「飲食店での接客の依頼があるこれにしよ。」 

「ミーナさん、この依頼でお願いします。」
 と言って、ギルドカードと依頼書を渡す。

「はい。確認するね。賄い屋レガールで手伝いの依頼ね。」
「頑張ってきてね。」

「はい。いってきます。」

 ギルドを出て、賄い屋レガールに向かった。

「ヒューイットさんと来たとき以来だな。」
「ヒューイットさんのお姉さんと妹さんもここで働いているんだよな。きょうもいるかな?」

 アオイは店の中に入っていく。

「いらっしゃいませ。」

「お客じゃないです。冒険者ギルドで依頼受けて来ました。」

「そっか。あれ、あなたこの前ヒューイットと一緒に来た子よね?」

「はい。ヒューイットさんのお姉さん。私、アオイって言います。」

「私は、カトリーナよ。案内するわ。こっちよ」

 カトリーナさんと一緒に店の奥へと向かった。

「店長、ギルドの依頼できたお手伝いの子連れてきました。」

「おお、そうか。」
「君が今日手伝ってくれる子か。俺はダニエルってんだ。」

「私、アオイって言います。今日はよろしくお願いします。」

「おう。うちは見ての通り食堂でな。今日は頼むぜ。」
「お客から注文聞いたり、できたあがった料理をお客の席の運んでもらう。」
「カトリーナ、やり方と教えてやってくれ。」 

「はい。店長。」
「アオイちゃん、店に来たことあるからわかると思うけど、注文聞いて、厨房に注文を伝える。それであそこにできた料理がでてくるからそれをお客さんの席まで運ぶって感じなんだけど、台車もあるけどアオイちゃんは小さいから台車で運ぶのは無理そうだから手で持って料理運んでもらうことになっちゃうけど大丈夫かな?」

「はい。大丈夫です。」

「じゃあ、よろしくね。」

 説明を聞いた私は、店内に向かった。

「店員さん、注文頼む。」

「はい。少々お待ちください。」

 店内に行くとさっそく、お客さんの店員を呼ぶ声がしたので、私は注文を聞きに席に向かう。

「お待たせしました。ご注文伺います。」

「おお、今日は可愛らしお嬢ちゃんが働いているんだね。」
「とりあえずビール二つとロースカツ三人前セットをライスで一つとヒレカツ三人前セットをライスで一つ、二つともライスと味噌汁は、後で持って来てくれ、あとつけもの盛合せ」

「ご注文は、ビールが二つ、ロースカツ三人前とヒレカツ三人前のセットで両方ともライスのセット、漬物盛合せですね。ライスと味噌汁は後でですね。」

「ライスと味噌汁は後で声かけるからそうしたら持ってきてくれりゃいいからよ。」

「はい。承りました。しばらくお待ちください。」

 注文を伝えに調理場に向かう。

「ビール二つにロースカツ三人前セットとヒレカツ三人前セット、漬物盛合せで、ライスと味噌汁は一緒ではなく後で持ってきて欲しいそうです。」

「了解」

 しばらくするとビールの入った木のジョッキを出された。

「まずはビール運んでくれ」

「はい」

 ビールのジョッキを持って注文受けたお客さんの席に向かう。

「ビール二つお待たせしました。」

「おお、来た来た。待ってました。」

 ビールのジョッキを二人の前に置く。

「嬢ちゃん、見たことない子だけど、ここの店の子じゃないんだろう?名前なんてんだい?」

「はい。冒険者ギルドで依頼受けて手伝いにきました。アオイって言います。」

「そうだったのか。アオイは小さいのに偉いな。頑張んなよ。」

「はい。頑張ります。もうすぐできるので料理はも少し待ってくださいね。」

「おおよ。ビールで乾杯して待ってるよ。」

 お客さんと少し話していると、話を聞いていたのか、別の席のお客さんたちからかわいいなとか、うちにもあんな子が欲しいとか頑張れよとか声が聞こえた。
 お客さんの席を後にしたら、別の席から声をかけられた。

「アオイちゃん、注文いい」

「アオイちゃん、その次こっち注文頼むわ」

「「「アオイちゃん、こっちもね」」」

 他にも店員さんいるのにみんな私を指名するのかい。売り上げに繋がるならいいかと思いながら注文を聞きに次の席に向かった。

「お待たせしました。ご注文伺います。」

「ビール四つ、ニホンシュ一合冷やで、あとコカットリスの唐揚げとつけもの盛合せをお願い」

「ビール四つにニホンシュ一合を冷やで、コカットリスの唐揚げとつけもの盛合せですね。」

 さっきも漬物注文あったけど、漬物も日本酒もこっちにもあるのかって思ったが、きっと転生者だろう伯爵家三男の仕業だろうと思った。
 コカットリスって何だ?鶏と蛇を合わせた感じで毒を持ったコカトリスなら
 聞いたことあるけど……

「コカットリスって何ですか?」

「アオイちゃん、コカットリス知らないのか。お兄さんが教えてあげるね。」

「お前がお兄さんって呼ばれる年かよ」

「うるさいな。いいんだよ。アオイちゃんにそう呼んでもらいたいんだから。」

「アオイちゃんは、コカトリスは知っているかな?」

「はい。知ってます。」

「コカットリスはね。コカトリスにそっくりだけど毒も持たないし、大人しく、コカトリスよりかなり小さい魔獣なんだよ。卵の需要が多いから養鶏場でたくさん飼養されたりしているんだ。」

「なるほど、小さいけど見た目が似ているから似たような名前がついているんですね。
 教えてくれてありがとうございます。お兄さん」

「うっ」

 お兄さんって言って欲しいと言っていたので、笑顔でお兄さんと言ってみたらうって言ったあと、顔を隠してモジモジしていた。

「俺はマゼランってんだ。あぁ、こいつの事はほっといていいから、アオイちゃんを待っている客もいるから他の席に注文聞きに言って大丈夫だぞ。」

 私は、マゼランさんが大丈夫だと言うので、注文を伝えに行ってから他の席に向かった。
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