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第二話 貴方は当主ではない

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 軽く仮眠を取って目覚めると騒がしかったので、リビングの方へ向かった。

「朝から騒がしいですね。何事ですか?」

「申し訳ございません。ご当主様。この者たちが離婚が成立したのに屋敷から出ていかないばかりか、自分が当主だと戯言を言い出すものですから」

「何言っているよ。前当主様が引退されたのですからカルイ様が当主に決まっているじゃないの」

 決まってねえよ。あら失礼。汚い言葉遣いになってしまいましたわ。
 心の中だけでなのでお許しくださいな。

「そうだ。私が当主なのだから離婚したならアリスが出ていくならともかく何故当主の私と第1夫人のナナリーが出ていかなければならないのだ」

「セバス。この二人は今日中に居なくなるから騒がなくても大丈夫よ。
前当主であるお父様とお母様が今日旅行から戻られるし、ホシュシュタッド侯爵家の当主にも昨日、連絡したので今日来られる予定だから」


「何故……父上がここに来るのだ」

「離婚が成立したのですからご説明しておこうと思ったのと自分が当主だと勘違いしている元旦那とその連れの女性が騒ぐだろうと思ったからですわね」

「勘違いなどしていない。私はカルメル侯爵家に婿として入ったのだ。
子供は女のお前しか居ないのだから義父が引退したのなら男しか当主になれぬだから婿である私が当主なのは当然だろう」

「確かに婿ですね。カルイさんはただの婿ですね。婿養子ではないのですからカルメル侯爵家の当主になるなんてありえませんよ。
男が当主っていつの時代の話ですか?お二人方は我が国にスイート王国の君主がどなたかおわかりですか?」



「マリクス国王陛下だろうが何を当たり前のことを聞いてくるんだ」

「そうよ。マリクス国王陛下よ」

 確かに元旦那の言う通り当たり前のことを聞いたのですがマリクス殿下は王配であって国王ではないですよ。

「違いますよ。スイート王国の君主はイザベラ女王陛下です。
マリクス殿下は王配です。王配なので政治的権力も持っていない女王陛下の夫でしかありませんよ。
一昔前でしたら国の王も貴族の当主も男性だけしかなれませんでしたが今では女性でもなれるのですよ」

「そんなわけがない。私の周りでは上に令嬢が居てもその家の令息が後継者だし、令嬢しか居ない貴族家では婿をもらってその婿が当主をしていたりする。
嘘をつくな」

「そうよ。私の周りの貴族家でも後継者は男性だけよ。嘘ついて当主に楯突くなんてダメな妻です。そんなダメ妻いらないので早く出ていってください」

 ウソついてないし、早く出て行けってこの家は私の実家よ。

「カルイさんの周りがそうなのは、昔の通例通りに男性だけを後継者にしていらっしゃる貴族家のお知り合いばかりなのと婿が当主をされているのは、カルイさんと違いその家の婿養子に入られたからですわね。
ナナリーさんは男爵家でしたからね。お知り合いも下位貴族ばかりでしょうから下位の貴族家はほぼ昔ながらの後継者は男性だけって家ばかりですからね。
それぞれの貴族家の考えがありますので昔ながらの後継者選びをされていたとしても他家のことなので私がとやかく言うことではないです。
しかしカルメル侯爵家は女性も当主になれるのです」

 我が家のことですからそこはきっちり言うことは言いますよ。現当主でもありますしね。

「政は男がやることだ。女を政治に関わらせると国が滅びるからな。
先程からそれに私たちをさん付けで呼ぶなど失礼だろう」

 いやいやスイート王国はイザベラ女王陛下が即位されてから景気は上向き、今までやってこなかったことを取り入れたり、女性ならではの視点からも政策をされていて更に繁栄してますよ。

 それにお二方をさん付けしているのにも理由がありますよ。全くもって失礼ではありません。

「カルイ。お前は不敬罪で裁かれたいのかい?」

「なんだと!誰だ。偉そうに愚かなことを言うやつは」

 そう言ってカルイさんが声がした方を振り返りました。

「……」

「父上……」

 そうですよ。声を発せられたのは貴方のお父様であるホシュシュタッド侯爵様ですよ。

 私の両親も一緒に居ますね。それから来られるとは聞いておりませんでしたがもうお二方いらっしゃいますわね。
 ご愁傷様です。
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