嘘と月

長谷川

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記憶より大切なこと

最終回

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半年後事故で受けた傷も怪我も治り季節は秋になっていた。
片想いしている奈緒も既に退院しており
僕らは二人で公園のベンチに座っていた

まだ奈緒も僕も生きるのは苦しいと感じることがあり上手く生きていくことができなかった
それでも僕らはこうして二人で生きている
一緒に生きている
記憶は幸せや苦しみを作る。けれど、それより大切なことはこうして好きな人と二人で一緒にいれることだ
僕らは恋人同士ではない。告白しようと思っているけど出来ずにいる。
それでも君の存在を感じることができるだけで
幸せだ。もし君が自殺でもしていたら
僕は最初は悲しくて立ち直れなくなるけど
いつかはその悲しさも忘れるだろう

だから"今"君が生きていることが記憶より大切なんだ。

そんなことを思っている。僕は意を決して隣りに座っている奈緒に言った。

「あのさ、俺、奈緒のこと好きだよ」

秋の夕暮れ虫の鳴き声が響く 暑さも薄れていく時間
自分の気持ちに嘘をついた夜は必ず月が出ていた
正直になった僕の気持ちに奈緒はどう答えてくれるだろうか…答えが何であっても
この先、辛いことばかりの人生でも、耐えれないほど孤独に襲われても、君と出逢えたことを幸せに思う。

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