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2020年 冬
冬 霜月12日① 漫画『金の星に願いを』、『忘れられた婚約者』
しおりを挟むおうちにいるとぽかぽかするが、外は冷たい風が吹いている。
もうすっかり初冬のようだ。
今日もハーレクイン・コミックをメモする。
私はハーレクインでは、ヒストリカル・ロマンスというジャンルのほうが好きだ。古めかしいドレスが気に入っている。
今日の二作でもそうだけど、昔だからしかたないが、価値観が違うところはもやっとするが。
たとえば、処女推奨のところ。
身分違いを悩みながらも受け入れられるなら、経験者でもいいじゃないか。処女でなかったらおそらく態度が変わりましたとにおわせられるより、「経験者?処女? どうでもいい、あなただから好きだ」でいいじゃないか。
この本が出た頃の価値観の問題だろうが。
今なら、ここまで処女性を重要視するロマンスものは少ないんじゃないだろうか。だって「ありのままに」がうけているわけだし。
どんな名作でも、今の価値観とあわないところがあり、もやもやするものだ。
私だって、小説を書いていて、無意識にひそんでいる差別意識に、後で読み返して気づいてがくぜんとすることがある。
それに気づいたのは、価値観がアップデートされたからだろう。
わたしが変わったから、わたしの変化に気づけたわけで。たぶん良いことなんだろう。
これが進歩ってやつだ。
黒田かすみさんの『金の星に願いを』。
あらすじは、
「 19世紀ロンドン。父親を亡くしたヴェリテイは病気の妹の手術費を工面するため、偽名を使い、劇場の踊り子になった。 しかし、踊り子は紳士にとって娼婦も同じ扱い。フォリングズビー子爵も遊び目的で近づいてきた一人だった。
「クリスマス休暇を一緒に過ごせば五百ポンド払う」と言われ!? クリスマスの愛の奇跡の物語。」
まず、時代背景からいこう。
19世紀くらいのロンドンといえば、「有閑貴族」がいる頃だ。
とにかく貴族は働かないことがいいとされていた時代。
レディーは家にいたほうがいいし、働いたとしても、貴婦人の話し相手をつとめるレディー・コンパニオンの職が良いとされている。
それから、バレリーナは現在では美しい踊り子だが、昔は娼婦と同義語だった。
彼女たちはパトロンを見つけ、愛人関係になり、お金をかせいでいたわけだ。
こんな時代背景の頃、教会の牧師の娘というレディーが、踊り子をしていたなんてばれたら、大恥をかいて人前に出られなくなる。
それでも主人公のヴェリテイは、妹の医療費のために、愛人にはならずにすれすれラインでお金を得ていた。
そこで、娼婦と勘違いして、独身最後の機会に、好みの女性と遊ぼうと思った子爵がヴェリテイを雇う。
この休暇を終えたら、子爵は女遊びをやめるつもりでいたのだが、ヴェリテイが処女だと分かって手を出さない。
これだけ遊んでおいて、それだけで紳士面? とは、現在の感覚では思うが、まあクズでないことは理解できた。
結局、ヴェリテイはその後の人生が悲惨になるとわかっているのに、クリスマスのトラブルを経て、子爵を本気で愛し、身を捧げる。
その後、姿を消し……、後で再会して愛を確かめ合い、結婚してハッピーエンドだ。
時代背景が分かるため、ヴェリテイの愛と覚悟が理解できるため、読み終えたら涙が出た。
この作家さんの絵、好きだなあ。
次、もとなおこさんの『忘れられた婚約者』。
あらすじ。
6年前にロンドンに出てきて以来、お針子として働いているメアリー。彼女が刺繍したドレスは今、社交界で大流行だが、まったく給金は貰えていない。
それというのも、彼女は、記憶をなくし路頭に迷っていところを拾われた身の上だったからだ。
ある日、メアリーはお使いの帰り道に全身黒ずくめの紳士に追いかけられる。
数日後、怯える彼女の前にその謎の紳士、マシソン卿が現れて思いがけない言葉を放った。
「結婚を目前に、きみがぼくから逃げた理由を教えてくれ!」
すでに購入済の電子書籍なのだが、キンドルアンリミテッドにあったので、ダウンロードして読み直した。
もとなおこさんのカラー絵は繊細で好きだ。色使いが好み。
漫画ではお花があちこちに散りばめられていて、かわいい。
でも、ストーリーはとにかくメアリーがかわいそうすぎて、かわいいどころではないが。
記憶喪失の原因をさぐるミステリー・ロマンスだ。
個人的にお気に入りの話なので、おすすめだ。
最近だったら、この悪女が転生してやりなおして~という展開になるのかなと、読み終えてから思った。
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