上 下
51 / 79
第七章 ダンジョン探索テスト開始

2話・減点1......とっ♪

しおりを挟む
―――エクトス学園、第一ダンジョン一階層。


「今回は違うパーティメンバー......か」

エレア達と潜ってダンジョンには結構慣れたつもりでいたけど、
別のパーティメンバーでってなると、やっぱちょっと緊張しちゃうな。

「さて…後輩くん。キミはこれからどういう風にダンジョンを攻略して
いくつもりなのかな?」

初めて組むパーティメンバー、更にテストという事もあって、緊張で胸が
ドキドキしている中、ミカリ先輩がこれから俺がどう動くのか聞いてくる。

なので俺は、

「......どういう風に攻略をですか?う~ん、そうですねぇ?取り敢えず、
最初は場に手慣れている先輩方の意見をお聞きし、それらの中で参考に
する点を纏めた後、行動を開始する......って感じでしょうかね?」

首を傾げて少し思考した後、こう答える。

「......うん正解だ!これはパーティメンバーでどう行動するっていう
テストだから、もしキミが好き勝手な意見や無茶な行動をとる様な事を
ほざいていたら、即減点だったよ!」

「げ、減点!?」

「いい、平凡三下。ダンジョンというものは、常に死と隣合わせの
存在なんだ。それを忘れて油断した行動を取っていると、一発で
あの世行きになっちゃうんだからね!」

「し、死と隣合わせ......!?」

「こらこら二人とも、そんなにプレッシャーをザック君に与えない!
緊張で本気の力を発出来なくなるでしょうが!安心してザック君。
大丈夫だからね、私達がサポートをしっかりするからさ。だから
そんな焦らず、ゆっくりでいいから頑張るんだよ♪

サーシュ先輩、ミカリ先輩、そしてアンネ先輩が、俺にそれぞれ
発破を掛けてくる

そんな先輩達に対し、

「あ、ありがとうございます、アンネ先輩!それにサーシュ先輩も
ミカリ先輩も、忠告と助言ありがとうございます!」

俺は元気を込めた感謝の返事を返す。

......そうだった、そうだった!

テストとはいえ、これは実戦だったよ!

先輩達の言う様に、油断が命取りになるよね。

でもダンジョンを使ったテストか。

ランベール学園では実力不足という事もあって、ダンジョンに潜るテストを
受ける事が出来なかったんだよねぇ。

でもサキナ達は俺と違って実力があったから、テストでは勿論のこと、
授業でもダンジョンに潜らせてもらっていたみたいだけどな。

まぁ仮にダンジョンに潜れていたとしても、サキナ達との差を見せつけ
られて過ぎて、俺の自尊心が完璧に砂と化していただろうけどね。

...あはは、ハァ。

俺がそんなもしもを考えて苦笑をこぼし、嘆息を洩らしていると、

「おいこら、平凡三下!何をボケッとしているのかしらっ!」

「うひゃ!?」

目の吊り上ったサーシュ先輩からお叱りを受けてしまう。

「す、すいません、サーシュ先輩!少し考えごとをしていました!」

「ハァ、考えごとですって!わたくし先程言いましたわよね?
ダンジョンは常に死と隣合わせだから油断をす―――」

注意散漫な俺に、サーシュ先輩が怒りの説教モードへ入ろうと
したその時、

「――ザック君のその表情......もしかしてその考えごとというのは、
異性の事なんじゃないのかな?」

サーシュ先輩の横にいたアンネ先輩が会話に割って入り、俺の顔を
ジト目で見ながら図星を突いてきた。

「――な!?い、いいえ!ち、違いますよ、アンネ先輩!い、異性の
事なんて、ちっとも考えていませんからね、俺っ!」

俺はその異性...つまりは幼馴染に嫉妬をしていたせいか、その図星に
慌ててしまい、しなくていい誤魔化しをあたふたしながら口に出す。

だが、

「ああ、その露骨に焦った表情。やっぱりそうだったんだね?」

アンネ先輩はバレてるぞという表情を返されてしまう。

「それでザック君?その異性って、一体誰の事を考えていたのかしら?
あ!ひょっとして私達の事をだったかしら♪」

そして好奇心旺盛なニヤリとした表情で、アンネ先輩が俺に質問してくるが、
俺は首を左右に振って、

「いいえ、違います」

...と、あっさり口調でそう答える。

「ふ~ん、私達じゃないのかぁ~♪そっか、そっか~♪」

アンネ先輩が俺の言葉を聞いた瞬間、ニコニコした表情で腰に下げていた
ポーチから、一枚の紙らしき物をソッと取り出し、手に持った。

「あ、その紙!それって、テストの点数チェックシートじゃないですか!?」

ポーチから取り出された紙らしき物が、テスト点数チェックシートだと
気付いた俺は「何故それを取り出したんだろう?」と、ハテナ顔になっていると、

「何かそのあっさり口調がとっても癪に障ったので、減点1……とっ!」

アンネ先輩が手に持った点数チェックシートにペン先を乗せ、減点1を示す
横線をピッと静かに一本引いた。

「はぁぁあっ!?なな、な、なんでえぇぇですかぁぁああ~~~~っ!?」

俺はそのアンネ先輩の行動にビックリしてしまい、どういう事ですかと
叫声を荒らげ、パニクってしまう。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者がパーティーを追放されたので、冒険者の街で「助っ人冒険者」を始めたら……勇者だった頃よりも大忙しなのですが!?

シトラス=ライス
ファンタジー
 漆黒の勇者ノワールは、突然やってきた国の皇子ブランシュに力の証である聖剣を奪われ、追放を宣言される。 かなり不真面目なメンバーたちも、真面目なノワールが気に入らず、彼の追放に加担していたらしい。 結果ノワールは勇者にも関わらずパーティーを追い出されてしまう。 途方に暮れてたノワールは、放浪の最中にたまたまヨトンヘイム冒険者ギルドの受付嬢の「リゼ」を救出する。 すると彼女から……「とっても強いそこのあなた! 助っ人冒険者になりませんか!?」  特にやることも見つからなかったノワールは、名前を「ノルン」と変え、その誘いを受け、公僕の戦士である「助っ人冒険者」となった。  さすがは元勇者というべきか。 助っ人にも関わらず主役級の大活躍をしたり、久々に食事やお酒を楽しんだり、新人の冒険者の面倒を見たりなどなど…………あれ? 勇者だったころよりも、充実してないか?  一方その頃、勇者になりかわったブランシュは能力の代償と、その強大な力に振り回されているのだった…… *本作は以前連載をしておりました「勇者がパーティーをクビになったので、山に囲まれた田舎でスローライフを始めたら(かつて助けた村娘と共に)、最初は地元民となんやかんやとあったけど……今は、勇者だった頃よりもはるかに幸せなのですが?」のリブート作品になります。

恋人を寝取られ死刑を言い渡された騎士、魔女の温情により命を救われ復讐よりも成り上がって見返してやろう

灰色の鼠
ファンタジー
騎士として清くあろうとし国民の安寧を守り続けようとした主人公カリヤは、王都に侵入した魔獣に襲われそうになった少女を救うべく単独で撃破する。 あれ以来、少女エドナとは恋仲となるのだが「聖騎士」の称号を得るための試験を間近にカリヤの所属する騎士団内で潰し合いが発生。 カリヤは同期である上流貴族の子息アベルから平民出身だという理由で様々な嫌がらせを受けていたが、自身も聖騎士になるべく日々の努力を怠らないようにしていた。 そんなある日、アベルに呼び出された先でカリヤは絶望する。 恋人であるエドナがアベルに寝取られており、エドナが公爵家令嬢であることも明かされる。 それだけに留まらずカリヤは令嬢エドナに強姦をしたという濡れ衣を着せられ国王から処刑を言い渡されてしまう———

戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。

隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。 婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。 しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……

妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜

橋本 悠
ファンタジー
両親の死、いじめ、NTRなどありとあらゆる`最悪`を経験し、終いにはパーティーメンバーに刺殺された俺は、異世界転生に成功した……と思いきや。 もしかして……また俺かよ!! 人生の最悪を賭けた二周目の俺が始まる……ってもうあんな最悪見たくない!!! さいっっっっこうの人生送ってやるよ!! ────── こちらの作品はカクヨム様でも連載させていただいております。 先取り更新はカクヨム様でございます。是非こちらもよろしくお願いします!

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

追放された最強剣士〜役立たずと追放された雑用係は最強の美少女達と一緒に再スタートします。奴隷としてならパーティに戻してやる?お断りです〜

妄想屋さん
ファンタジー
「出ていけ!お前はもうここにいる資格はない!」  有名パーティで奴隷のようにこき使われていた主人公(アーリス)は、ある日あらぬ誤解を受けてパーティを追放されてしまう。  寒空の中、途方に暮れていたアーリスだったかが、剣士育成学校に所属していた時の同級生であり、現在、騎士団で最強ランクの実力を持つ(エルミス)と再開する。  エルミスは自信を無くしてしまったアーリスをなんとか立ち直らせようと決闘を申し込み、わざと負けようとしていたのだが―― 「早くなってるし、威力も上がってるけど、その動きはもう、初めて君と剣を混じえた時に学習済みだ!」  アーリスはエルミスの予想を遥かに超える天才だった。 ✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿ 4月3日 1章、2章のタイトルを変更致しました。

処理中です...