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六章 おっさん、初めてのクエスト
第百二十話・ランカを慕う者の嘆願
しおりを挟む「あ、あんたがゴザイさん達...いや、ゴザイの野郎どもを掴まえたって
いう冒険者だよな!だったらさ、お願いだぁぁっ!ランカさんを助けて
やってくれよっ!お願いだからぁぁぁあっ!!」
「わ、わたしからもお願いします、おじさまぁぁぁあっ!!」
少し幼さが残る面立ちをした冒険者らしき少年と少女二人が、切羽
詰まった表情で俺の元へ走って駆けてくると、
「門番さんからあいつらの話を聞いたんだ!ランカお姉ちゃんが
あいつらのせいで罰を食らうかもしれないってさ!」
「その責の有無を選択できるのは、ゴザイさん達を掴まえたおじさん
だと、わたし達も冒険者なので理解しています!」
「だ、だからさ、ランカお姉ちゃんの事を助けて...許してやっては
くれないだろうか!お願いだからよぉぉおっ!」
「わ、わたしからもお願いします、おじさまっ!どうか、どうか
ランカお姉ちゃんを許してくれませんか!ランカお姉ちゃんは
とても良い人なんです!わたしみたいな獣人にもとても優しく
してくれて......」
「「だから、どうかお願いしますぅぅぅうっ!」」
冒険者らしき少年少女の二人が、必死な表情にてレンヤに嘆願した後、
頭の上にフサフサとなびくケモ耳を床にペタンとつく勢いで俺の足下に
土下座をしてきた。
ちょっ!な、何この子達!?
入ってくるなり、いきなり土下座っ!?
「お、おい!説明してくれ、ギルマス!?この子達は一体誰なんだ!?」
未だ、平伏す様に土下座をしている少年少女達に、俺は物凄く戸惑いを
見せながら、ギルマスに訊ねる。
するとギルマスが、
「こいつか?こいつらはそこのランカが担当する冒険者の二人だよ!」
と、答えてくる。
「あ!す、すいません、紹介が遅れてしました!お、俺は犬族の獣人で、
その...ムーホって言いますっ!」
「わ、わたしは兎族の獣人で、ステイっていいますっ!」
そんなギルマスの紹介のあとに、犬族の獣人の少年と兎族の獣人の
少女が動揺を抑えつつ、レンヤの顔に向けて見上げ、それぞれが
自分の自己紹介をしてくる。
へえ、犬の獣人と兎の獣人か~。ふわふわとフサフサの耳と尻尾が
何か可愛いな。
「ふむ。ムーホにステイっていうんだね?俺の名はシロカワ......」
......おっと、逆か。
「俺はレンヤ...『レンヤ・シロカワ』って名前だ。まぁ気楽にレンヤと
呼んでくれ。それから、俺の種族は......」
......ん?
俺の種族??
「な、なぁ、ギルマス。俺の種族って、一体なんだと思う?」
「んなもん、俺に聞かれたって知るわけねぇだろうが!だがよお前の
その見た目の通りなら、俺と一緒の種族なんじゃねぇのか?」
「.........えっ!?」
えええええええええええぇぇぇぇぇっ!!
「こ、こんなハゲマッチョと、い、一緒の種族だとぉぉぉおおっ!?
果てしなく猛烈に嫌過ぎるんですけどぉぉぉおぉぉぉおおっ!!」
俺はギルマスと同じ種族かと思うと、あまりのショックで心の中で
叫ぼうとした嘆きの叫声が、思いっきり口から漏れてしまう。
「おい!レンヤ!そりゃ、一体どういう意味だぁぁあっ!俺と一緒の
種族がそんなに嫌かっ!嫌なのかぁぁぁぁあっ!!」
「あははは...スマンスマン、ギルマス。ついショック過ぎて本音が
口から出てしまった。ちょっとしたおっさんの茶目っ気だから
許してくれよ♪」
ギルマスが目を大きく見開き、涙を溜めて怒ってくるので、俺は苦笑を
浮かべながら軽く頭を下げると、今の発言に謝罪をする。
「いやいや!それ、ちっとも謝罪になってないんだけどっ!」
......がしかし、俺の謝罪がお気に召さなかったのか、ギルマスが眉を
ヒクヒクさせたご機嫌ななめの顔をして、こちらをジロリと睨んでくる。
「.....ったくよ」
「もうそんな怒んなって、血圧上がっちゃうぞ。......とまぁ、そういう事で、
俺は人族らしい!ヨロシクな、二人とも!」
ふて腐れているギルマスは取り敢えず放っておき、俺は自分の種族を
ムーホとステイの二人に改めて伝え笑顔を向けると、
「は、はい!こ、こちらこそヨロシクです、レンヤさん!」
「わ、わたしもよろしくお願いします、レンヤさん!」
ムーホとステイも慌てつつ笑顔をニコリと作り、俺に向かって
それぞれが挨拶を返してくる。
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