40 / 59
4章・昇級試験
040・望月の凡ミス
しおりを挟む「.........」
光野朔夜......か。
冒険ギルドから朔夜達が去った後、望月がさっきの試合で佐々木の
所業によって、粉々に壊れている壁を遠くで見つめながらサクヤ達の
試合の事を思い出していた。
「あの吹っ飛び方、あれはどう見てもやはり異常よね......」
あの試合中、朔夜くんが佐々木さんと激突した瞬間、一瞬だけども
朔夜くんから微妙ながら強い気を発するのを感じた。
それに動きも何かぶれて見えたような気も......
「......これを踏まえた上の私の勘なんだけど、この状況を作り出した
のは、朔夜くんの可能性が高いんじゃ?」
...って、
「はは...何を考えているんだろうね、私は?」
そんな事、ありえる訳ないのに。
だって朔夜くん、15歳の学生さんだよ?
望月が朔夜と佐々木の試合を思い出し、あれこれ考えを錯綜していると、
「あ~ここにいた~っ!お~~~い、望月さ~~~んっ!」
望月を見つけた小鳥が、スタスタと駆けてくる。
「もう望月さん、こんな所にいた!探したんですよ!ここで何をして
いたんですか~~って、ああ、あれってさっきの試合で佐々木さんが
壊した壁ですよね?ひやぁ~しっかし見事なまでに粉々に壊れちゃって
ますねぇ~!?もう佐々木さんったら、新人相手に何もここまで本気を
出さなくてもいいのにっ!後でマジ説教ですよっ!」
佐々木のやらかしによって壊れた壁やその瓦礫に気づいた小鳥が、
プンプン怒ってしまう。
「あ、でもあそこまで壁が壊れちゃっているって事は、佐々木さんと
試合をしたっていう新人さん、身体の方は大丈夫だったんですか?」
「え?」
小鳥の指摘に、望月は目を大きく見開いた。
「ああああっ!そ、そそ、そう言われればぁぁあっ!?朔夜くんが
あまりにも普通にしているものだから、それが全く頭からすっぽり
抜け落ちて気づきませんでしたわぁぁぁあっ!!?」
「えええ!?じゃ、何のケアもしないで帰しちゃったんですか!?
ま、まあ確かに遠目でみても、あの子大したケガは負っていなかった
ようではありましたけれども......」
「くぅっ!こ、これは由々しき事態だわ!冒険者達のサポートを受け持つ
責任者だというのに見落としてしまうなんて.......っ!」
小鳥から告げられた言葉に、望月がギルド員として決してやってはいけない
大失態に、普段は見せる事のない動揺とパニックで頭を抱えあげ、そして
その後、ガクッと項垂れる。
「でも望月さんがそんな大事な事を忘れてしまうなんて、ホント珍しい
凡ミスですよね?」
「凡ミスなんてレベルでは済まされませんわ!大ミスです、大ミスッ!!
よ、よし!い、今からではもう遅いかもしれませんが、火急に朔夜くんへ
連絡を取り、謝罪をお詫びをしなきゃいけませんねっ!」
項垂れている場合じゃないと望月が顔をバッと上げると、直ぐ様ポケットから
携帯電話をサッと手に取り出し、サクヤに謝罪とお詫びの言葉を伝えべく
通話ボタンをピッと押す。
そして電話番号を入力しようと、指を動かそうとした瞬間、
「ああ、そんな所にいたぁ!お~~い、望月っち~~~っ!!」
遠く方から自分を呼ぶ誰かの声が聞こえてきた。
「ん?私を呼ぶ声......?」
望月が声のする方角に顔を向けると、
「あれは...風菜さん......ですか?」
そこには大慌ての様子でこちらに駆けてくる風菜がいた。
「も、望月さん、望月さん!望月さんに聞きたい事があるんですが、
聞いても良いですかぁあっ!い、今から一時間くらい前に、男性側の
昇級試験をしていた新人さんって、一体誰なんっすかぁっ!?」
風菜が望月のいる場所に駆けてくるや否や、挨拶よりも早く剣幕な
口調でそれを聞いてくる。
「え?一時間くらい前の...ですか??えっと、ちょっと待って下さいね。
フムフム、その時間帯で試合をしていた新人さんは......っと」
風菜の問いに、望月が男性昇級試験の記載されたノートをパラパラと
捲っていき、
「......恐らくですが、その時間帯なら45番の光野朔夜さんですね」
風菜の言う時間帯に誰が試験を行っていたか、それを伝える。
56
お気に入りに追加
393
あなたにおすすめの小説
追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~
一色孝太郎
ファンタジー
【小説家になろう日間1位!】
悪役令嬢オリヴィア。それはスマホ向け乙女ゲーム「魔法学園のイケメン王子様」のラスボスにして冥界の神をその身に降臨させ、アンデッドを操って世界を滅ぼそうとした屍(かばね)の女王。そんなオリヴィアに転生したのは生まれついての重い病気でずっと入院生活を送り、必死に生きたものの天国へと旅立った高校生の少女だった。念願の「健康で丈夫な体」に生まれ変わった彼女だったが、黒目黒髪という自分自身ではどうしようもないことで父親に疎まれ、八歳のときに魔の森の中にある見放された開拓村へと追放されてしまう。だが彼女はへこたれず、領民たちのために闇の神聖魔法を駆使してスケルトンを作り、領地を発展させていく。そんな彼女のスケルトンは産業革命とも称されるようになり、その評判は内外に轟いていく。だが、一方で彼女を追放した実家は徐々にその評判を落とし……?
小説家になろう様にて日間ハイファンタジーランキング1位!
更新予定:毎日二回(12:00、18:00)
※本作品は他サイトでも連載中です。
【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
前話
【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)
三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。
各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。
第?章は前知識不要。
基本的にエロエロ。
本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。
一旦中断!詳細は近況を!
ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました
中七七三
恋愛
わたしっておかしいの?
小さいころからエッチなことが大好きだった。
そして、小学校のときに起こしてしまった事件。
「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」
その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。
エッチじゃいけないの?
でも、エッチは大好きなのに。
それでも……
わたしは、男の人と付き合えない――
だって、男の人がドン引きするぐらい
エッチだったから。
嫌われるのが怖いから。
さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~
遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」
戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。
周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。
「……わかりました、旦那様」
反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。
その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。
もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ
中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。
※ 作品
「男装バレてイケメンに~」
「灼熱の砂丘」
「イケメンはずんどうぽっちゃり…」
こちらの作品を先にお読みください。
各、作品のファン様へ。
こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。
故に、本作品のイメージが崩れた!とか。
あのキャラにこんなことさせないで!とか。
その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる