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外伝その1・成美編

049・二つの『特典』

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「そういう訳なので、お決まり決定って事でいいよね?ねぇ!ねぇっ!!」

「う~む。お前の言う通り、冒険者になる事でこの溜まった鬱憤を払うには
丁度良い環境だってのは凄く分かる。分かるんだけども......でもどうにも
気乗りがしてこないんだよなぁ......」

それでもまだギルドに行きたくないと駄々をごねるお兄ちゃんに、わたしは
最終手段を出す。

「ええぇぇえ!いいじゃん、いいじゃんっ!お兄ちゃんのだ~~い好きな
妹の頼みなんだぞ~~行こうよ~~~っ!」

わたしはウルウルした瞳でそう言うと、お兄ちゃんの腕に胸をムギュッと
押し付け、力強くギュッと抱き付いた。

そして、

「ねぇ~ねぇ、ギルドに行こうよ!お~ね~が~い~お兄ちゃ~~ん!」

甘え全開の羨望した上目遣いで、お兄ちゃんの顔ををじぃぃーっと見つめる。

はぐぐぅう。そ、その二の腕攻撃とキラキラ攻撃は...ひ、卑怯なり......っ!

...とばかりの表情お兄ちゃんがすると、

「......分かったよ、成美!んじゃま、行くとしますかね、冒険者ギルドにっ!」

わたしからの頼みごとを聞き入れる。

「ホ、ホント!?うおおぉぉおっ!やったぁぁぁあぁあいっ!!」

わたしは冒険ギルドに行けるぞと喜びのあまり、花咲く満面の笑顔を
こぼしながらバンザイを何度も何度も繰り返すと、お兄ちゃんから
見えない角度で、


「くふふふ、これでわたしの『計画』が一歩前に前進したよっ!」


わたしはニヤリと口角を上げてほくそ笑む。


......そう、


―――わたしの計画。


―――それはお兄ちゃんを『A級冒険者』にする事だ。


―――何故お兄ちゃんをA級冒険者にしたいのか?


それには理由がある。

A級になった冒険者には『特典』が二つ与えられる。

その特典とはまず一つ目は、


配偶者の......一夫一妻の制限が取れる。


つまりが『一夫多妻』や『一妻多夫』が出来ちゃうのだ。

そして二つ目の特典。

この特典こそが、わたしの計画たる最終目的で、その特典の内容とは、


例え『血の繋がった』相手だったとしても、



『結婚』する事が出来ちゃうのだっ!!!



何故、A級冒険者にそんな特典が与えられるのか?

それにはちゃんとした訳と理由がある。

この国に冒険者は登録だけの者を含めて数億人いる。

だがそれだけいる冒険者でも、A級ランクに辿り着く冒険者の数は
百人にも届かず。

またS級以上ともなると、片手の指の数にも満たない。

そう...つまりこの特典は、そんな希少な冒険者達の血をより多く残すべく
出来た特典となのだ。


―――A級冒険者、それは果てしなく遠い目標だろう。


―――わたしのこの計画を聞けば、鼻で笑われ失笑される事だろう。


―――そんな馬鹿な夢物語、果たせる訳ない、現実を見ろよと馬鹿な子でも
見る様な、憐れみの視線で見られるだろう。


けど、わたしにはその計画を憶測や夢物語などではなく、それを成せると
いう絶対的な自信がある。

この確固たる根拠...言葉を吐けるのは、

わたしが持つジョブがレア中のレア、最上級に名の上がる『賢者』だからだ。

このジョブをわたしが持っていると知ったのは、

わたしが小さい時に習得したステータスをチェックする事の出来る魔法、
『ステータス・サーチ』を習得した時だ。

賢者...ゲームや漫画で良く出てくるそのままのジョブで、攻撃魔法と回復魔法、
そして補助魔法を習得する事が出来る。

更に魔法はスキルよりも、効果も威力も数段に跳ねあがる。

この事事を知った時に、わたしは心から震え、感涙し、興奮な絶叫を
荒らげながら天に向かって手を合わせ、その事を感謝したよ。


「ありがとう、神様ぁあ!これでこの勝負は貰ったぁぁああっ!!」


ってね。


「くふふ...見ていなさい!わたしがお兄ちゃんと結婚する為、この賢者と
いうジョブをフルに駆使しまくって、絶対にお兄ちゃんをA級冒険者に
しちゃうんだからっ!」

「ん?今何か言ったか、成美?」

「う、ううん!な、何も言ってないよ!お兄ちゃんの気のせいなんじゃない?
さ、さぁてご飯も食べた事だし、そろそろ今日の宿題でもやるかな~っと!」

わたしは苦笑をこぼし、お兄ちゃんに誤魔化の言葉を入れると、その場を
サッと立ち上がって早足で自分の部屋へと戻って行く。

そして部屋に戻ったわたしは、今日出された宿題を頭を悩ませながら
懸命に解いていくのだった。

それからしばらく宿題をやっていると、

お兄ちゃんが部屋に戻ったのか、ドアが開閉する音が聞こえてきた。

そして数分の時が経った頃、


「ギャァァァアッ!お、おお、お、俺のコレクションがぁぁぁあぁぁああっ!!」


お兄ちゃんの部屋から血の涙を流す様な大きな叫声が聞こえてきて、わたしの
部屋中にその叫声が響き渡るのだった。

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