上 下
39 / 63
4章・昇級試験

039・周囲の羨望と嫉妬

しおりを挟む
「でもそっか。それで納得いったよ......」

俺は周囲にいる女性達にチラリと目線を向ける。


「ぐぬぬ...佐々木様の直筆サインだとぉぉぉおっ!」

「う、羨ましいぃぃいぃぃいっ!!」

「くぅぅぅうっ!佐々木様ファンクラブ会員ナンバー一桁持ちの
私だって持っていないのというにぃぃぃい~~っ!」

「お父様のお力を以てしても駄目だったのにぃぃぃい~~っ!」

「そうだよね、あんたらでも無理だったもんね......」

「......切実に交渉したら、サイン売ってくれるかな?」

「う~ん。あの娘の顔を見るに、それは多分無理だと思うよ......」

「だよねぇ~。あの子も佐々木様のファンみたいだし、手放しは
しないか......がっくし」

成美の持っている佐々木のサインが書かれた雑誌に、観客席にいる
女性達が羨望と嫉妬の乗った視線がロックされ、羨ましがる。


「はは...凄い顔をして成美の事をガン見しているな......」

そんな女性達を見て、俺は軽く苦笑いをこぼす。

「しかしこの視線、あっちの世界で良く味わったっけ......主にアキラのせいで」

ふう。

あれは何度思い出しても、背中がゾクってなってくるよ。

俺はその当時の事を思い出すと、思わずその身をブルルと震えさせる。

「でもこの視線...アキラの時とは違って、強い悪意や殺意といった視線は
ひとつも感じられないし、まぁ放っておいても大丈夫かな?」

嫉妬や妬みの込もった視線を成美に送るあの女性達に、もしも悪意や殺意の
視線を向けている輩がいたら、軽い威圧でもしておこうかと一瞬悩んだ俺
だったが、しかしこれくらいなら何の支障もないなと判断し、取り敢えず
威圧を放つのをやめておく事にした。

「それでは45番さ...コホン、朔夜さん。私も審判の仕事がまだ残って
おりますので、この辺で失礼させてもらいますね♪」

望月さんがそう述べ、俺達にペコッと軽く会釈すると試合場にクルッと
身体の向きを返る。

「あ!そうそう。朔夜さん、もしもこの冒険ギルドで何かお困りな事や
分からない事がございましたら、私に...望月時雨《もちづきしぐれ》にご遠慮なく
お声を掛けて下さいね!それではお疲れ様でした♪」

望月さんがニコッと微笑んで俺にそう言うと、再び踵を返して試合場に
帰って行く。

「は~~い、お疲れ様で~す!」

望月さんかぁ~♪

「いや~望月さん。めっちゃ美人さんだったなぁ~えへへ♪」

「お兄ちゃんっ!何デレデレしてんのよっ!!」

「―――あいだっ!?」

望月に鼻の下を伸ばしているサクヤの二の腕を、膨れっ面の成美が
捻る様に力強くグイッとつねる。

「......ったく、男って何で美人さんに弱いんだろうねぇ!プンプン!!」

「チッチッそれは違うぞ、我がマイエンジェルよ。俺は別に美人さんに
弱くはない。俺が弱いのは性格の良い優し~~~い美人さんだっ!」

異世界での勇者仲間で、誰が見ても美人枠に入るであろう...サクラと
ユリカから数えきれないくらい酷い目にあった事がトラウマな俺は、
美人や可愛いだけでは、全くときめく事はないのだよ。

「な~にが優しい美人さんに弱いだ!性格なんて初回見だけでは判断
できないでしょうがっ!ハァ、まぁいいわ。とりま、お兄ちゃんの冒険者
登録もしたし、昇級試験にも無事に合格したし、わたしもギルドを堪能して
満足したし、佐々木さんからサインも貰っちゃったし、そろそろ家に帰ろっか、
お兄ちゃん♪」

「そうだな。時間も頃合いだし、家に帰るとするか。身体のやつもかなりの
疲労困憊で疲弊しているから、家に帰って早く休めやって言っているしな!」

それにあんな派手な形で昇級試験を合格した俺と、佐々木の奴からサインを
貰った成美をジロジロと見てくる視線が痛いので、とっととここから去りたい。

俺はさっきから突き刺さってくる周囲の視線攻撃に、これ以上は堪えきれないと、
成美と共に冒険ギルドから急ぐように出た後、家路を歩いて帰って行く。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

Gai
ファンタジー
死因がわからないまま神様に異世界に転生させられた久我蒼谷。 転生した世界はファンタジー好きの者なら心が躍る剣や魔法、冒険者ギルドにドラゴンが存在する世界。 そんな世界を転生した主人公が存分に楽しんでいく物語です。 祝書籍化!! 今月の下旬にアルファポリス文庫さんから冒険がしたい創造スキル持ちの転生者が単行本になって発売されました! 本日家に実物が届きましたが・・・本当に嬉しくて涙が出そうになりました。 ゼルートやゲイル達をみことあけみ様が書いてくれました!! 是非彼らの活躍を読んで頂けると幸いです。

夫に惚れた友人がよく遊びに来るんだが、夫に「不倫するつもりはない」と言われて来なくなった。

ほったげな
恋愛
夫のカジミールはイケメンでモテる。友人のドーリスがカジミールに惚れてしまったようで、よくうちに遊びに来て「食事に行きませんか?」と夫を誘う。しかし、夫に「迷惑だ」「不倫するつもりはない」と言われてから来なくなった。

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

追放されてから数年間ダンジョンに篭り続けた結果、俺は死んだことになっていたので、あいつを後悔させてやることにした

チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
世間で高い評価を集め、未来を担っていく次世代のパーティーとして名高いAランクパーティーである【月光】に所属していたゲイルは、突如として理不尽な理由でパーティーを追放されてしまった。 これ以上何を言っても無駄だと察したゲイルはパーティーリーダーであるマクロスを見返そうと、死を覚悟してダンジョンに篭り続けることにした。 それから月日が経ち、数年後。 ゲイルは危険なダンジョン内で生と死の境界線を幾度となく彷徨うことで、この世の全てを掌握できるであろう力を手に入れることに成功した。 そしてゲイルは心に秘めた復讐心に従うがままに、数年前まで活動拠点として構えていた国へ帰還すると、そこで衝撃の事実を知ることになる。 なんとゲイルは既に死んだ扱いになっており、【月光】はガラッとメンバーを変えて世界最強のパーティーと呼ばれるまで上り詰めていたのだ。 そこでゲイルはあることを思いついた。 「あいつを後悔させてやろう」 ゲイルは冒険者として最低のランクから再び冒険を始め、マクロスへの復讐を目論むのだった。

【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「話が違う!!」  思わず叫んだオレはがくりと膝をついた。頭を抱えて呻く姿に、周囲はドン引きだ。 「確かに! 確かに『魔法』は使える。でもオレが望んだのと全っ然! 違うじゃないか!!」  全力で世界を否定する異世界人に、誰も口を挟めなかった。  異世界転移―――魔法が使え、皇帝や貴族、魔物、獣人もいる中世ヨーロッパ風の世界。簡易説明とカミサマ曰くのチート能力『魔法』『転生先基準の美形』を授かったオレの新たな人生が始まる!  と思ったが、違う! 説明と違う!!! オレが知ってるファンタジーな世界じゃない!?  放り込まれた戦場を絶叫しながら駆け抜けること数十回。  あれ? この話は詐欺じゃないのか? 絶対にオレ、騙されたよな?  これは、間違った意味で想像を超える『ファンタジーな魔法世界』を生き抜く青年の成長物語―――ではなく、苦労しながら足掻く青年の哀れな戦場記録である。 【注意事項】BLっぽい表現が一部ありますが、BLではありません      (ネタバレになるので詳細は伏せます) 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 2019年7月 ※エブリスタ「特集 最強無敵の主人公~どんな逆境もイージーモード!~」掲載 2020年6月 ※ノベルアップ+ 第2回小説大賞「異世界ファンタジー」二次選考通過作品(24作品) 2021年5月 ※ノベルバ 第1回ノベルバノベル登竜門コンテスト、最終選考掲載作品 2021年9月 9/26完結、エブリスタ、ファンタジー4位

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...