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4章・昇級試験
033・昇級試験が始まった
しおりを挟む「ハァ~憂鬱だ......」
ハグ禁止は普通に死ねるから、昇級試験を受けはした。
けど、
「ハァ~面倒だ......」
昇級試験が始まって何度目か分からない溜め息を吐く度、俺の気分が
億劫に落ちていく。
「しかしこれを再び手にするとはな、しばらくそういうのからは離れ
ようと、昨日決めたばっかだってのに......ハァ」
手に持っている木剣を悄気混じりの表情で見ながら、再び溜め息を吐く。
「でもまぁ、別に成美の奴からは勝てと言われてはいない訳だし、適当に
試合をパパッとやって、その後「負けた~っ!」って切り上げればいいか?」
あの説明係のお姉さんも、試合に負けたとしてもデメリットはないって
言っていたしさ。
「とはいえ、あの佐々木って男に負けるのは何か癪なんだよな......」
俺は今試合をしている、新人と佐々木のいる場所へ顔を向ける。
「ほれほれ、どうした少年よ。もっと気合いを入れろ~♪」
「クソ!すましやがってぇぇええ!ちょっと顔が良いからって
舐めるなぁぁあああっ!」
「ほい、残念!」
「ガハッ!」
「俺はちょっとだけじゃなく、めっちゃイケメンさんなの~♪」
地面に叩き伏せた新人相手に、佐々木が斜に構えてニカッと笑う。
「キャー!ねぇ見た?今の佐々木様の表情をさ~!」
「見た見た!いつ見ても心が歓喜で騒ぐ、イケメンフェイスだよねぇ♪」
「うんうん、あれを至近距離で食らったらイチコロだよ!」
佐々木の見せるイケメンポーズに、会場の女子達がカッコいいと
喜色満面な声をあげて喜んでいる。
...チッ!
な~にがカッコいいだ。
やった行為は戦いのイロハも知らん新人を、一方的にボコボコにした
だけじゃんか。
だというのに、出てくる言葉がこれとは......
「...ホント、イケメンは無罪&無敵で羨ましいよ」
あ、そう言えば成美の奴、こいつのパーティ...えっと確か『黄昏の果て』
......だっけか?
そのファンとか言っていたっけ?
イケメンに対して愚痴と嫉みをこぼしていると、ふと成美が佐々木の
所属するパーティのファンだったという事を思い出し、一体どんな感じで
こいつを見ているのか、目線を成美へとチラリと向けると、そこには
キラキラした瞳で佐々木の試合を見ている成美の姿があった。
「な、成美の奴...なんて恍惚な表情で、試合を見ていやがるんだっ!?」
―――ハッ!?
「ま、まさか、俺の試合の時も佐々木の野郎を応援しないだろうなっ!?」
もし、そうだった場合.........は。
「......くくく」
覚悟しておけよ、佐々木さんよ。
俺の可愛い妹から応援を受ける、それがどれ程の大罪なのか......
「......それをあんたの身体にタップリジックリと刻み込むように教えて
やるぜっ!そう...魔王をも倒したこの勇者の力を以て、完膚亡きまで
ボコボコにしてくれよ――――」
―――って、違う違うっ!
勇者の力は使っちゃ駄目ぇえっ!
それをやったら、俺の目立ちたくない生活が一瞬で終わっちまうわっ!
「ふう...危ねぇ危ねぇ。己イケメンめ、俺のハートを狂わせやがるぜっ!」
俺が上がった怒りを何とか沈めて、落ち着きを取り戻した時、
『試験ナンバー、45番。試験ナンバー、45番。試験が始まりますので
準備をしたのち、試合場へと移動して下さい。繰り返します......』
「ふう、いよいよ俺の出番か......」
さて俺の平穏の為、適当にやって負けてくるぞ~っ!
「......但しあの佐々木を二、三回軽く小突いた後になっ!」
自分の番号がアナウンスで呼ばれた事に気付いた俺は、そう気合いを入れると、
急いで試合場へと駆けて行った。
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