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2章・異世界帰り

008・『無能』

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.........それにしても、


『来たれ!新しき未来を担う、新しき冒険者諸君よっ!!』


.........か。

俺は新規の冒険者を募集する内容が書かれてある、目の前のポスターに
ジッと見つめる。

本当にこっちの世界もファンタジーの世界になっているんだな。

だとしたら......

「......勇者の力を使えば、一攫千金も夢ではないんじゃね?」

......いや、例えそうだとしても今はまだいいかな。

戦いに明け暮れて、約五年と半月ちょっと。

正直いって、戦う事に身も心もトコトン疲れた。

「......という事なので、今は取り敢えず、戦いの事は全~部忘れて、
数週間後にやってくる高校生活...そしてそこで起こるやもしれない
甘酸っぱくも憂い青春を思いっきりエンジョイするぞ~っ!」

陰キャラの俺だが、しかしあの世界やアキラ達と行動した事によって、
俺の力や精神力、そしてコミュニケーションが昔とは比べ物になんて
ならないくらいにレベルアップしたんでな。

「だから...きっと希望ある高校生活がおくれる筈さっ!」


.........多分ね。


俺は不安を少しだけ抱きつつ、異世界にて生まれ変わった自分ならば
出来ると気合いを入れ、拳を天に向けて高々と突き出す。

「......にしても、ホント受験が終わった後に召喚されて良かったよ......」

もし受験前に召喚されていたら、確実に勉強した内容をスッカリと忘れて
しまい、絶対試験に落ちていただろうからね。

「あ!そうそう!召喚と絶対で思い出したけど、メリアーナによって召喚
された先で、やっぱり俺が悪い予感が的中しやがったんだよなっ!」

召喚される前、メリアーナとの会話で出てきた嫌な予感のしたフラグが
本当に立ってしまった事を思い出し、俺は眉をヒクヒクさせる。

あれはそう...俺がメリアーナの指定した城へと召喚された直後、城の連中が
勇者のステータスを測りたいっていう流れになったんだよ。

けどさ、

その時の結果がこれまた酷くてさ、俺のステータスがスキルも魔法も何ひとつ
覚えていない、最底最悪なステータスだったわけなのだよ。

そして更にとどめと言わんばかりに、勇者の二つ名の欄にこう記されていた。

『無能』

...ってね。

そんな俺の最低最悪なステータスや二つ名を見て、王様が怒りを露に
してよ、役立たずの無能勇者はこの国にはいらんと、無一文で城から
叩き出す様に追放しやがった。

「いや~ホント、あの時はこの先どうなっちまうんだ俺ぇぇええ!?と、
頭を抱えて悶絶しながら絶望に打ちひしがれていたっけな......」

だって、右も左も分からない異国の地で一文無しでポイッだぜ!

その上、スキルも魔法も何ひとつ覚えていなかったんだぞ、俺。

そりゃ~絶望もしますって!

まぁその後、色々とあって、事なきを得たんだけどね。

あ、そうそう。これは後日談なんだけど、

俺が城から追放された事を後から知ったメリアーナが、思いっきり
大激怒しちゃいましてね。

俺を城から追放しやがったあのクソ愚王を、メリアーナが神裁の鉄槌を
下して断罪したらしい。

そしてあの愚王の城もまた、怒りの矛先が収まらないメリアーナの余波にて
木っ端微塵となり、粉々に破壊されてしまったそうな。



―――かくしてあの世界の地図上から、この城の名前が完全に消えて無く
なったのでした、チャンチャン。



「......ザマァッ♪」


コホン......で、話は俺の二つ名に戻るのだが、

これは後から合流したアキラ達から聞いた話で分かった事なんだが、
勇者の二つ名は省略された名称らしくてな、

俺のこの『無能』っていうのも、省略されたものだったのだよ。

それで、こいつの正式名称はというと......

「......って、おっとそうだった!こんなところでノンビリと異世界の
思い出話に浸っている場合じゃなかったっ!」

俺はハッと我に返り、このあとやらねばならぬ大事な用事を思い出す。

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