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2章・異世界帰り
006・帰ってきた勇者
しおりを挟む「か、帰ってきたんだ、俺......」
メリアーナによって異世界に勇者として召喚された俺は、他の勇者達と
一緒に異世界に巣食う魔族達と戦った。
......そう、
―――戦って、
―――戦って、
―――戦い抜いた。
その間、良いも悪いも、酸いも甘いも、色んな事があった。
―――素晴らしくも良い出会い。
―――二度とゴメンと思った嫌な出会い。
―――虚空に陥った悲しい別れ。
―――希望を紡き繋いた別れ。
そんな経験が心と身体に刻まれる度、俺の不甲斐なくもみっともない
価値観が少しずつ少しずつと変わっていく。
そう......恵美の事で落ち込んでいるのがバカらしくなるくらいに。
それから俺達がこの世界に召喚されて、五年と数ヶ月の月日が
過ぎ去ろうとしていたその時、
俺と他の勇者達は魔族の王である魔王を辛勝ではあるものの、
見事討ち倒す事に成功した。
―――そしてその後、
今の状況......つまりは元の世界へ無事に帰還を果たす事となった。
「......正直いうと、あっちの世界にもうちょっとだけ残っていた
かったんだけどな......」
でもメリアーナが言うには、魔王を倒すと勇者は強制的に元の世界に
戻されてしまうのだということだった。
流石にそれはこちらの都合を考えてない、一方的な言い分じゃないかと
愚痴と不満をこぼすと、メリアーナが申し訳ないという表情を見せながら
強制帰還されるその理由を語る。
メリアーナが言うには、魔王がいなくなった時、同じ様な存在である
勇者があの世界に留まってしまうと、世界のバランスが魔王がいた時の
様におかしくなってしまい、ドンドン不安定な状態になってしまうらしい。
「バランスがおかしくなる......か」
そういった理由があるんだったら、しょうがないよな。
あっちの世界にはお世話になった人達が沢山いる。
そんなみんなに迷惑を掛ける訳にはいかないしな。
「理解もしたし、納得もした。でもさ、それでも俺はあっちの世界で
お世話になったみんなとは別れたくなかったよ......」
それにせっかく平和になったんだから、あの世界をのんびりゆったりと
旅行したかったなぁ。
俺は異世界への未練に思いふける。
「まぁだが、パーティメンバーだった他の勇者達とは、逆に別れられて
清々したけどなっ!」
それは何故かと問われると、答えは簡単至極。
「勇者パーティのメンバーの中に、アキラがいたからさっ!」
このアキラってのがこれがまた、超のつくイケメンさんでさぁ。
そして他の勇者メンバー....二人とも女の子だったんだけどよ、こいつらも
また、誰が見ても超のつく美少女達。
そんな構成だった俺達勇者パーティは、美男美女の集まり(俺を除く)で、性格も
みんな明るく気さくな性格の陽キャラだった。
そんなイケメンと美少女達のみなさんが、四六時中、俺の前で和気藹々と
イチャイチャしやがるんだぜっ!
陰キャラの俺がそんな陽キャラサークル内に入っていける訳もなしで、
人々受ける声援や称賛はいつもあいつらばかりが受けていて、
俺はかやの外。
「ぐぬぬぅう...ああもう!ホント思い出すだけで、ストレスストレスの
毎日だったぜぇぇえ――――っと!!」
アキラの奴がチャラクソ男だったらさ、こんな居心地のクソ悪いパーティとは
さっさと見切りをつけて、ひとりだけで気楽に魔王退治と洒落し込みたかった。
だけどよ、
こいつが残念な事に、このアキラさんスッゴク良い奴でさ。
パーティメンバーの女性共は勿論のこと、俺の事も腹黒い理由なんか特になく、
命懸けで守ってくれるんだよ。
そして性格もまた、分け隔てない性格でさ、
例え言うなら、正義感溢れる?
そんな頼れる人物だったんだよ、このイケメン勇者さんはさ。
だがね!
―――それはそれ!
―――これはこれなのよ!
どんなに優しかろうとも、頼りになろうとも、
目の前で朝昼晩と1日中イチャイチャされてみろよ。
幾ら性格に悪害がなくとも、こちらとしてはたまったもんじゃないのさ!
「それによ!こちとら浮気された彼女の相手がイケメンだと聞いていたから、
余計に苛つきが増したんだよねぇぇぇえっ!!」
あの当時の俺は、恵美から浮気をされたショックから立ち直れていなかった
せいもあり、余計にアキラの奴にストレスがたまった事を思い出す。
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