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1章・彼女にフられた俺

004・勇者様

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......な...い。


起...な...い。


起き...さい。


「いい加減、起きなさいって言っているでしょうがぁぁぁああっ!!」


「のわぁぁぁあ~っ!?」

突如耳に聞こえてきた大声にビックリした俺は、飛び跳ねる様にして
ガバッと起き上がる。

「ふう。やっと目を覚ましましたねっ!」

そして声のする方角に顔を移動させると、そこにはプンプンと怒っている
女性が立っていた。

「まったく、いつまでグースカ、グースカと寝てくれちゃってからに!」

その大声の主は俺を見ながら眉を吊り上げてそう言うと、腰に手を当てて
更にプンプンと怒る。

「え、えっと、その...寝坊助ですいません......」

今の状況をいまいち把握出来ていない俺だったが、女性のお怒りがマジ
モードなのは分かったので、取り敢えずここは機嫌を取っておいた方が
得策だと判断し、頭をペコッと小さく下げて謝罪の言葉を入れておく。

そして苦笑いをこぼしつつ、

「......そ、それで...ですね。ちょこっとばかり質問があるんですけど
よろしいでしょうか?え、えっと、ここはその...一体全体どこなんで
しょうかね?」

ここはどこだと、目の前の女性にやんわりと聞いてみる。

そう...俺は確か、あの暴走トラックに跳ねられて死んだ筈だ。

...って事はやっぱり、ここは俺の想像通り、あの世なのかな?

俺は目の前に広がる真っ白で殺風景な景色を見て、そんな判断すると、

「うふふ♪ここはですね、天国に近い場所...天界ですよ!」

先程、俺を強引に叩き起こした女性がニッコリと微笑み、囁く様な
声で俺の疑問に答えを返してきた。

そしてその女性は続け様、俺にこう述べてくる。

「ようこそ、天界に勇者様♪」

......と。

「――はあっ!?ゆ、勇者!?」

それを聞いた俺は、この場所がどこかという事よりも、この女性から
発された『勇者』という言葉に引っ掛かり、目を大きく見開き喫驚する。

「あ、あの...そ、その勇者ってのは、もしかして俺の事...ですかね?」

「もしかしても何も、ここに貴方以外、誰もいませんよ?」

.....ああ。

「た、確かに誰もいませんね......」

俺は周囲をキョロキョロと見渡すが、ここにいるのはこの女性と俺だけだと
いうのに気付く。

「おっと。そうでした、そうでした!わたくしの自己紹介がまだでしたわね!
え~コホンッ!わたくしの名前はメリアーナ。貴方の認識で言うのでしたら、
わたくしの素性は女神様です♪」

「め、女神様!?」

い、言われて見れば、この女性の見た目と雰囲気はそう言われても
差し支えないな。

腰まで伸びている金色にキラキラと輝く長い髪に、サファイアの様に
光輝く藍色の瞳。

そして絹の様な素材の真っ白なローブに身を包み、手には細やかな
綺麗な飾りで出来ているロッドを持っている。

その姿、正に神々しいを絵に描いた存在。

これは間違いなく、女神様だな。

......性格は清楚とは程遠いけど。

「そ、それじゃあ、メリ...アーナ様。あ、改めてもう一度お聞きしますけど、
俺が勇者っていうのは、その...ど、どういう意味でしょうか?」

自分を女神様と名乗るこのメリアーナという女性に、いま自分の置かれて
いる立場を理解するべく、気になっている箇所の問いを投げる。

「それはですねぇ、勇者様。貴方はわたくしの管轄する世界の平和を脅かす
存在の魔族...そしてそれらを束ねる王である魔王を倒すべく使者...勇者様に
選ばれました!いや~おめでとうございます~パチパチパチ~~♪」

自称・女神様のメリアーナがニコニコした顔で俺に向かって称賛の声を
掛けてくると、両手をパチパチと叩く。

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