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黒龍院如水

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半獣半人座星系

教国へ

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  雪原の塔から帰って来た我々は、
 一週間の休養と一週間の準備ののち、次の
 目的地へと向かう。
 
 イゾルデ王国の西のはて、国境を越え、
 ヤースケライネン教国へ向かう。そこは、
 いまだ多くのアクティブな遺跡が存在し、
 教国が望むと望まないとに関わらず、
 冒険が盛んであった。
 
 今回は、ニコリッチ商会が国籍取得の手続き
 も完了させている。教国内では、ニコリッチ
 商会と提携している冒険者ギルドから
 支援を受ける。
 
 目的地は、ヤースケライネン教国の首都、
 その近郊にある、10層からなる迷宮だ。
 ギルドの支援は、迷宮の入り口近くで
 受けることができる。
 
 町からすぐ入れる迷宮のため、冒険者の間でも
 人気が高く、教国の国籍の有無にかかわらず、
 多くの旅団が訪れる。
 
 浅い階層は比較的容易で、経験の浅い旅団でも
 良い練習場となる。下へ降りるほど難易度が
 上がり、まだ地下8階層以降に到達した旅団は
 ないのだ。
 
  今回、移動に関しては、ヤースケライネン
 教国の大型ホバーが用意された。最近教国は、
 積極的に他国の冒険者旅団の迷宮攻略に
 手を貸しているようだ。
 
 もちろんこういった大型ホバーはイゾルデ王国
 内では走っていない。大型ホバーは、街道
 ではなく大型の河川を利用する。
 
 所々で、完全に空を飛んで移動する。反重力
 エンジンを搭載しているからだ。通常馬車
 では一か月近くかかる日程を、わずか丸二日
 ほどで到着する。
 
 客室付き、ヤクと馬の厩舎も付いている。
 これまでで一番快適な移動だった。
 
 今回同様のかたちで、イゾルデ王国内の他の
 有名な冒険者旅団も招聘されているらしい。
 迷宮に入れば出会うだろうか。
 
  迷宮入り口の周囲は冒険者宿やギルドの
 支部やその他様々な店舗でごった返して
 いた。ひとつの観光地のようにもなって
 おり、迷宮には入らないが多くの観光客
 姿も見える。
 
 とくに人気は、迷宮内のパーティの
 リアルタイム配信だ。観光客の休憩所に
 いくつもモニターで映し出されている。
 
 その日は冒険者宿に泊まり、翌日から
 さっそく迷宮へ降りる。この迷宮は、
 100メートル四方を一ブロックとして、
 縦横に20ブロックの正方形の構造だ。
 
 つまり、基本的にはこの100メートル
 幅の道の迷宮となるわけだが、ブロック
 単位で狭い通路と小部屋で成り立つ
 区域もある。
 
  さっそく玄想旅団12名で、迷宮の
 入口から降りていく。この入り口は、幅広
 で傾斜の緩い階段があり、ご丁寧にも
 幅の広いスロープも付いている。
 
 それを使ってヤク2頭と馬も連れてくる。
 ヤクと馬を使用せずに、ギルドの支援
 だけで済ますことも不可能ではなかったが、
 
 玄想旅団自体がその運用に慣れていない
 ため、出来る限り通常どおりのやり方を
 選ぶ。
 
 まず迷宮へ降りてみて驚いた。人が多い
 のはまあいいとして、最初のブロックと
 北および西の隣ブロックまで、露店が
 続いている。
 
 観光客らしき姿もちらほらだ。間違った
 場所に来てしまったような錯覚を
 覚えつつ、北へ向かう。
 
 あと十年もすれば、最下層まで露店で
 埋まってしまうかもな、とスヴェン・
 スペイデルも呆れ顔だ。
 
  地下1階から、地下7階の途中までは、
 マップや攻略情報が出回っている。まず、
 地下1階だが、南東の端から始まって、
 8ブロック北へ行く。
 
 そこから西へ折れて突き当りまで行くと、
 右手に地下2階へ降りる階段がある。それ
 だけである。
 
 通路挟んで南北のエリアがあるが、南側は
 危険な生物はほぼいない。初心者が歩き
 回るのにはちょうどよい。
 
 北側は、初級者には少し難しめの野生動物が
 出現する。野犬、はぐれ狼などはまだいい
 として、カバ、ゾウ、ライオン、トラなど。
 
 地下1階北側を隈なく歩けるようになれば、
 初級者を脱した、と言われるぐらいの難易度
 だ。
 
  この地下1階には、一応階層ボスなる
 ものが存在する。北側で徘徊する野生動物の
 体をひと回り大きくしたぐらいの動物が
 出現するのであるが、
 
 地下1階は冒険者が多すぎるためか、滅多
 に出会うことができない。階層ボスは一度
 倒されると、ある一定時間で再び出現する
 のであるが、冒険者がいる時は現れない。
 
 再出現は、だいたい24時間以内である。
 そのため、地下2階、いやそれ以降も、
 階層ボスに出会えない可能性はある。
 
  地下2階に着いた我々は、迷宮の外周
 沿いに、階層ボスのいる位置へ回り込んで
 いく。だいたい5キロ少しの距離だ。
 
 階層ボスのブロックは、各階だいたい同じ
 位置にあるが、マッピングすると隣接する
 階同士では、1ブロックずれている。
 
 南へ8ブロック、西へ20ブロック、北へ
 9ブロック進み、右方向、つまり東へ
 折れて突き当りまで進む。
 
 この地下2階も、地下1階と同様南北の
 エリアがあり、そこの探検も可能だ。
 地下1階より少し相手も手ごわくなって
 いる。
 
 そして、南側より北側のほうが危険生物
 の出現頻度が高い。
 
  地下2階の階層ボスにも出会えず、
 そのまま地下3階へ進む。地下3階は、
 北側のエリアを回っていく。反時計回りで
 5キロ少しを階層ボスのブロックまで
 直行する。
 
 地下3階は、地下2階より少し難易度の
 高い危険生物が出てくるのだが、南側の方が
 出現頻度が高い。上階と状況が反転している。
 
 階層ボスのブロックまでの通路で、遭遇する
 可能性も一応あるのだが、まったくその
 姿は見えない。
 
 まあ、我々が歩く前後に中級クラスと思わ
 れる旅団も歩いており、帰路につく旅団とも
 すれ違う。これだけ旅団がいれば南側の
 エリアにでも入らない限り、何かと遭遇
 することは無さそうだ。
 
 この調子で、地下4階は南回り、地下5階
 は北回り、地下6階は南回り、とどんどん
 進んでいく。一緒に進んでいた旅団の
 数がどんどん減っていく。
 
 地下7階にたどり着いたところで、今日は
 宿営をする。そこからの数ブロックは、
 大規模な宿営地と化してた。
 
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