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第三章 エヴァの置き土産

行列のできる解呪屋さん

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 神女が直々に解呪をしてくれるというお告げは、たちまち国中に広まり、聖神女神殿には以前にも増して信者が押しかけていた。
 本当に呪いを受けた者は一握りで、あとは調子の悪さを呪いだと思い込みたい、神女信奉者がほとんどだ。
 昼食を摂りながら、アルクェスが嘆く。

「神女様の奇跡にあやかりたいからと、怪しげな呪術師に金銭を渡して、呪われてくる者まで出る始末。まったくもって嘆かわしい」

 そうなると当然、これまで解呪を一手に引き受けてきた施療院が黙っていない。神女の解呪がどのようなものか見学したいという名目で、牽制にやってきた。

 エファリューは、神殿で解呪を担うにあたり、アルクェスから一つの要望を受けた。出来る限り、神がかった演出で解いてほしいと言うのだ。
 一般的な解呪は、かなり複雑な魔法と難解な方陣を用いて行われることが多く、その光景は十分に儀式めいている。
 しかしエメラダは、何と言っても聖竜から力を授かったほどの、特別な神女である。そこは他とは一線を画さなければ、施療院からやって来た解呪師たちも納得がいくまい。

 その点、エファリューは特別な道具も術式も用いずに、指先一つで呪いを解ける才覚があるから、お安い御用だった。
 一つだけ難点を挙げるなら、常のエファリューなら、呪力から解放された闇の魔力を吸収してしまうところだが、光が本質の神女がそれをしてはいささか問題も多かろうということだ。

 それでエファリューは、アルクェスにたくさんの紙を用意させた。
 闇を絡め取った指先を、真白い紙に押し付ける。すると、まるで見えない何者かが筆を取ったかのように、すらすらと黒い文字が連なっていった。
 あっと目を引くことができれば、文字で記す内容は何でもよかった。呪いを解いた日付と礼拝者の名前あたりを、古代文字でいかめしくあしらえば、目にした者は「神の御業だ」と口を揃えた。

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