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第一章 闇魔女はスパルタ教師に囲われる!?

教育係は理想高めのスパルタ男でした!? 2

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 次の日から、ぐうたらの「ぐ」の字もない、教育係によるじゃじゃ馬の躾が始まった。
 エファリューは夜が明け切る前に、サラによって叩き起こされ、クリスティア国教神女信仰の基本である、礼拝の仕方から体に叩き込まれた。

「違います! 頭を垂れるのは、祈り手を組んでから秒針一振り半後! ほら、また早い! ……次は遅い!」

 少しでもずれたらやり直しな上に、アルクェスの目は厳しかった。砂粒程度のずれでさえ、指摘してくるのだ。
 やっとの思いでありつけた朝食も、もちろん彼と一緒で、食事マナーをとことん注意される。──エファリューが人並みに行儀良くできれば、こんなこともないのだろうが。

「パンを丸齧りしない!」

 手本を見せるように、一口大にちぎる彼の指先は、爪の先までツヤツヤしている。銀糸のような流れる髪といい、食事が運ばれる唇のかさつきの無さといい、エファリューとはまるで違う。王子というものにお目にかかれるなら、こういう人物なのではないかと、ぼーっと見つめていたら、パン屑がぽろぽろ零れて、激しく叱られた。

 食事のあとは、上品な立ち振る舞いのお稽古だ。

「頭から手足の指の先まで、一本の糸が通っていると思いなさい。しなやかに、たおやかに……なんですか、それは! 串刺しにされているのですか!!」

 彼が言う糸を意識するほど、ぎこちない人形めいた動きになってしまう。

「腹に力を込めて、手足は軟らかく!」

 エファリューはアルクェスのことを、女に不馴れな純朴な青年だと思い込んでいたが、教育係としての彼は女性に触れることを全く躊躇しなかった。
 姿勢がなっていないと、脇に手を差し込まれ、背骨を意識させられる。軸がぶれたら、腰を掴んで矯正されるのは当たり前だ。その度にエファリューはくすぐったいやら、わずかに残る女心を刺激されるやらで大変落ち着かない思いがするのだった。

 さらにその後は、城を警備する衛士に混ざり、身体の鍛錬に参加させられた。

「しなやかな動きの基礎は、体を支える揺らがぬ芯です。まずはそのたるんだ腰回りから、重点的に取り組みなさい!」

 衛士たちから掛けられる、「筋肉は裏切らない!」という謎の掛け声に急かされるように、エファリューは上体起こしを百回やらされた。そして休む間も無く、足腰を鍛えるための上下運動で……エファリューは息も絶え絶えだ。アルクェスからは容赦ない叱咤が飛んでくるが、同等の鍛錬をこなしながらも息一つ乱さぬ姿を見せつけられては、文句の言いようもなかった。
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