4 / 114
第一章 闇魔女はスパルタ教師に囲われる!?
落っこちて、落とされて? 3
しおりを挟む
「エファリュー殿」
跪いたまま、アルクェスはエファリューの両の手を取った。
「このまま、どうかわたしのそばにいてはくださいませんか!?」
言葉だけなら求愛されているように受け取れた。
エファリューはぞぞぞ、と肌を粟立たせた。彼は確かに見目麗しく、恋人にしたら自慢できるような人物に思える。しかし会って数分で求愛とは、エファリューの中では論外だ。
「ご遠慮いたします」
「しかし、行くあてがないのでしたら、ここにいたらよろしいのでは」
「いいえ、絶対に面倒でしょうから」
確かにエファリューは高貴な身分の御仁との出会いを求めていたが、それは無償奉仕してくれる超極太のパトロンを指してのことだ。色恋は御免だ。
ただの平民の男と付き合ったって、なんだかんだ面倒がつきものだというのに、お貴族様にご奉仕なんて絶対骨が折れるに決まっている。
「何も、貴女の手を煩わせることにはなりません」
アルクェスはなおも食い下がった。
「何もしなくていいんです」
ぴくりとエファリューの耳が反応する。
「ただただ其処にいてくれるだけでいいんです。気が向いた時に、ちょっと微笑んでくれる程度で」
ぴく、ぴくり。
「衣食住の保証もいたします! 微々たるものですが、毎月決まった額の報奨金もお約束します。だからどうかお願いいたします! これから一生、貴女を囲う許しをください!」
「その話、ちょっと詳しく聞かせてもらえるかしら?」
破格の好待遇で、一生不自由せずに暮らせるなら願ったり叶ったりだ。
アルクェスは「ありがとうございます!」と心底嬉しそうに頭を下げて、エファリューをそっと立たせた。
「どうぞ、中でゆっくりお話を。そうだ、何か温かいものを用意しましょう。山と空を越えてきたんです、さぞお疲れでしょう?」
しばらくまともな食事をしていなかったエファリューの腹は、お誘いの言葉だけで涎が出そうなほどペコペコだった。
すっかりいい気になって、出された食事にぱくついていたら、猛烈な眠気に襲われた。エファリューは無作法にもフォークを取り落としてしまった。
かくり、かくりと舟を漕ぎ、椅子から崩れ落ちそうになるのを、アルクェスがすかさず支えた。その口許には、先程までとはまるで真逆の冷えた微笑が浮かぶ。
「……いますか、サラ?」
「ここに」
扉の陰から、赤毛を三つ編みにした侍女が姿を現した。
「姫様を寝台へ運んでください。そうそう、身につけたものはすべて……下穿きにいたるまで取り払い、わたしの部屋に届けなさい」
「承知いたしました」
跪いたまま、アルクェスはエファリューの両の手を取った。
「このまま、どうかわたしのそばにいてはくださいませんか!?」
言葉だけなら求愛されているように受け取れた。
エファリューはぞぞぞ、と肌を粟立たせた。彼は確かに見目麗しく、恋人にしたら自慢できるような人物に思える。しかし会って数分で求愛とは、エファリューの中では論外だ。
「ご遠慮いたします」
「しかし、行くあてがないのでしたら、ここにいたらよろしいのでは」
「いいえ、絶対に面倒でしょうから」
確かにエファリューは高貴な身分の御仁との出会いを求めていたが、それは無償奉仕してくれる超極太のパトロンを指してのことだ。色恋は御免だ。
ただの平民の男と付き合ったって、なんだかんだ面倒がつきものだというのに、お貴族様にご奉仕なんて絶対骨が折れるに決まっている。
「何も、貴女の手を煩わせることにはなりません」
アルクェスはなおも食い下がった。
「何もしなくていいんです」
ぴくりとエファリューの耳が反応する。
「ただただ其処にいてくれるだけでいいんです。気が向いた時に、ちょっと微笑んでくれる程度で」
ぴく、ぴくり。
「衣食住の保証もいたします! 微々たるものですが、毎月決まった額の報奨金もお約束します。だからどうかお願いいたします! これから一生、貴女を囲う許しをください!」
「その話、ちょっと詳しく聞かせてもらえるかしら?」
破格の好待遇で、一生不自由せずに暮らせるなら願ったり叶ったりだ。
アルクェスは「ありがとうございます!」と心底嬉しそうに頭を下げて、エファリューをそっと立たせた。
「どうぞ、中でゆっくりお話を。そうだ、何か温かいものを用意しましょう。山と空を越えてきたんです、さぞお疲れでしょう?」
しばらくまともな食事をしていなかったエファリューの腹は、お誘いの言葉だけで涎が出そうなほどペコペコだった。
すっかりいい気になって、出された食事にぱくついていたら、猛烈な眠気に襲われた。エファリューは無作法にもフォークを取り落としてしまった。
かくり、かくりと舟を漕ぎ、椅子から崩れ落ちそうになるのを、アルクェスがすかさず支えた。その口許には、先程までとはまるで真逆の冷えた微笑が浮かぶ。
「……いますか、サラ?」
「ここに」
扉の陰から、赤毛を三つ編みにした侍女が姿を現した。
「姫様を寝台へ運んでください。そうそう、身につけたものはすべて……下穿きにいたるまで取り払い、わたしの部屋に届けなさい」
「承知いたしました」
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
妹を見捨てた私 ~魅了の力を持っていた可愛い妹は愛されていたのでしょうか?~
紗綺
ファンタジー
何故妹ばかり愛されるの?
その答えは私の10歳の誕生日に判明した。
誕生日パーティで私の婚約者候補の一人が妹に魅了されてしまったことでわかった妹の能力。
『魅了の力』
無自覚のその力で周囲の人間を魅了していた。
お父様お母様が妹を溺愛していたのも魅了の力に一因があったと。
魅了の力を制御できない妹は魔法省の管理下に置かれることが決まり、私は祖母の実家に引き取られることになった。
新しい家族はとても優しく、私は妹と比べられることのない穏やかな日々を得ていた。
―――妹のことを忘れて。
私が嫁いだ頃、妹の噂が流れてきた。
魅了の力を制御できるようになり、制限つきだが自由を得た。
しかし実家は没落し、頼る者もなく娼婦になったと。
なぜこれまであの子へ連絡ひとつしなかったのかと、後悔と罪悪感が私を襲う。
それでもこの安寧を捨てられない私はただ祈るしかできない。
どうかあの子が救われますようにと。
(完結)離婚された侯爵夫人ですが、一体悪かったのは誰なんでしょう?
江戸川ばた散歩
恋愛
セブンス侯爵夫人マゼンタは夫から離婚を哀願され、そのまま別居となる。
どうしてこうなってしまったのだろうか。彼女は自分の過去を振り返り、そこに至った経緯を思う。
没落貴族として家庭教師だった過去、義理の家族の暖かさ、そして義妹の可愛らしすぎる双子の子供に自分を見失ってしまう中で、何が悪かったのか別邸で考えることとなる。
視点を他のキャラから見たものも続きます。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
子育て失敗の尻拭いは婚約者の務めではございません。
章槻雅希
ファンタジー
学院の卒業パーティで王太子は婚約者を断罪し、婚約破棄した。
真実の愛に目覚めた王太子が愛しい平民の少女を守るために断行した愚行。
破棄された令嬢は何も反論せずに退場する。彼女は疲れ切っていた。
そして一週間後、令嬢は国王に呼び出される。
けれど、その時すでにこの王国には終焉が訪れていた。
タグに「ざまぁ」を入れてはいますが、これざまぁというには重いかな……。
小説家になろう様にも投稿。
【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました
鈴宮ソラ
ファンタジー
オラルト伯爵家に生まれたレイは、水色の髪と瞳という非凡な容姿をしていた。あまりに両親に似ていないため両親は彼女を幼い頃から不気味だと虐待しつづける。
レイは考える事をやめた。辛いだけだから、苦しいだけだから。心を閉ざしてしまった。
十数年後。法官として勤めるエメリック公爵によって伯爵の罪は暴かれた。そして公爵はレイの並外れた才能を見抜き、言うのだった。
「私の娘になってください。」
と。
養女として迎えられたレイは家族のあたたかさを知り、貴族の世界で成長していく。
前題 公爵家の養子になりました~最強の氷魔法まで授かっていたようです~
【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。
ざまぁ対象の悪役令嬢は穏やかな日常を所望します
たぬきち25番
ファンタジー
*『第16回ファンタジー小説大賞【大賞】・【読者賞】W受賞』
*書籍化2024年9月下旬発売
※書籍化の関係で1章が近日中にレンタルに切り替わりますことをご報告いたします。
彼氏にフラれた直後に異世界転生。気が付くと、ラノベの中の悪役令嬢クローディアになっていた。すでに周りからの評判は最悪なのに、王太子の婚約者。しかも政略結婚なので婚約解消不可?!
王太子は主人公と熱愛中。私は結婚前からお飾りの王太子妃決定。さらに、私は王太子妃として鬼の公爵子息がお目付け役に……。
しかも、私……ざまぁ対象!!
ざまぁ回避のために、なんやかんや大忙しです!!
※【感想欄について】感想ありがとうございます。皆様にお知らせとお願いです。
感想欄は多くの方が読まれますので、過激または攻撃的な発言、乱暴な言葉遣い、ポジティブ・ネガティブに関わらず他の方のお名前を出した感想、またこの作品は成人指定ではありませんので卑猥だと思われる発言など、読んだ方がお心を痛めたり、不快だと感じるような内容は承認を控えさせて頂きたいと思います。トラブルに発展してしまうと、感想欄を閉じることも検討しなければならなくなりますので、どうかご理解いただければと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる