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黒い獣
第341話-覚悟-
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優子達のところへと荷物を運び終わって自前のテントへと戻る。幸い患者は誰も並んでいない。それはつまり平和って事だ。それは何より。
「あら帰ってたの」
「おうただいま」
チェルが俺の気配を察したのかテントまで様子を見に来てくれた。手には冷えた水が二つ、一つをこちらに差し出してくれる。
「いただきます」
「どうぞ。ただの水だけど」
冷えた水は肉体労働の後の喉に染み渡る。快感とも言えるこの感覚は癖になるね。
「ところで、あの子達明日出て行くらしいけどいいの?」
「何がだ?」
「気になってるんでしょ」
「お、俺にはお前がいるし。結婚してるしよ。そんな事ねぇよ」
チェルは心の底から理解できないと言った顔で落胆したようにため息を吐いた。こんなのは初めて見た。
「誰もそんな事言ってません。魔法教団絡みの事について言ってます」
「あ、あぁ……そっちのことな。早とちり早とちり」
「誰もあなたが浮気するなんて思ってません」
さらっと言われたが恥ずかしいなこれ。いや、その信頼はありがたいんだがな。
「確かに気にはしてる。でもよ、俺に出来る事はしたつもりだ。これ以上はどうしようもないだろ」
「本当に?」
覗き込むようにして刺してくる目線を何か確信を持ったかのように俺に向けてくる。目を背けたら負けだとは分かっていても本能的に顔自体背けてしまった。
「本当にいいの?」
返事を催促するかのような念押し、それは今の俺にめちゃめちゃ効く。隠し事がバレた子どもの様に何も言えなくなった。
「しっかりしなさい。私が好きになった貴方はもっともっと真っ直ぐな人よ」
二人だからって恥ずかしい言葉を惜しげもなく浴びせてくる。ただ、その選択は間違いじゃない。現に今猛烈に逃げられない状況に追い詰められている。
「手助けはしてやりたい……してやりたいけどよ。俺にはまだ仕事もある。それを放ったらかしにするのはできねぇ」
「貴方がいなくても大丈夫よ。ここまで商団のみんなは貴方ばかりに負担かけたくなくて努力して来てる。みんなを信じられない?」
「そんな事はない。でも何があるか分からねぇだろ」
「それはあっちの子たちも一緒よ。むしろもっと心配じゃない。それに教団の絡む事件に首を突っ込むことになるかもしれない。調べることは沢山あるんじゃないかしら」
「それによ、俺はお前のことも心配だ」
「私もついていくわ。途中まで」
「途中……?」
「ガルド城に戻りたいの。調べたいことが出来たから」
「何だよそりゃ」
「この事件に関係するかもしれないこと。どう? これでもまだうだうだ言うなら叩くわよ」
強気な妻にここまで言われたらもう何も言い返せない。覚悟は決まった。
「頼みがある。俺はあいつらについていって力になりたい。何ができるかは分からねぇ。だけど教団が絡んでるなら何とかしてやりたい」
頭を地面にぶつけてしまいそうなほど下げた。もうチェルの答えは分かってる。それでも改めて言うのが筋だと思ったから。
「勿論いいに決まってます。決まったら早くそれを伝えにいく!」
「おう!」
「あら帰ってたの」
「おうただいま」
チェルが俺の気配を察したのかテントまで様子を見に来てくれた。手には冷えた水が二つ、一つをこちらに差し出してくれる。
「いただきます」
「どうぞ。ただの水だけど」
冷えた水は肉体労働の後の喉に染み渡る。快感とも言えるこの感覚は癖になるね。
「ところで、あの子達明日出て行くらしいけどいいの?」
「何がだ?」
「気になってるんでしょ」
「お、俺にはお前がいるし。結婚してるしよ。そんな事ねぇよ」
チェルは心の底から理解できないと言った顔で落胆したようにため息を吐いた。こんなのは初めて見た。
「誰もそんな事言ってません。魔法教団絡みの事について言ってます」
「あ、あぁ……そっちのことな。早とちり早とちり」
「誰もあなたが浮気するなんて思ってません」
さらっと言われたが恥ずかしいなこれ。いや、その信頼はありがたいんだがな。
「確かに気にはしてる。でもよ、俺に出来る事はしたつもりだ。これ以上はどうしようもないだろ」
「本当に?」
覗き込むようにして刺してくる目線を何か確信を持ったかのように俺に向けてくる。目を背けたら負けだとは分かっていても本能的に顔自体背けてしまった。
「本当にいいの?」
返事を催促するかのような念押し、それは今の俺にめちゃめちゃ効く。隠し事がバレた子どもの様に何も言えなくなった。
「しっかりしなさい。私が好きになった貴方はもっともっと真っ直ぐな人よ」
二人だからって恥ずかしい言葉を惜しげもなく浴びせてくる。ただ、その選択は間違いじゃない。現に今猛烈に逃げられない状況に追い詰められている。
「手助けはしてやりたい……してやりたいけどよ。俺にはまだ仕事もある。それを放ったらかしにするのはできねぇ」
「貴方がいなくても大丈夫よ。ここまで商団のみんなは貴方ばかりに負担かけたくなくて努力して来てる。みんなを信じられない?」
「そんな事はない。でも何があるか分からねぇだろ」
「それはあっちの子たちも一緒よ。むしろもっと心配じゃない。それに教団の絡む事件に首を突っ込むことになるかもしれない。調べることは沢山あるんじゃないかしら」
「それによ、俺はお前のことも心配だ」
「私もついていくわ。途中まで」
「途中……?」
「ガルド城に戻りたいの。調べたいことが出来たから」
「何だよそりゃ」
「この事件に関係するかもしれないこと。どう? これでもまだうだうだ言うなら叩くわよ」
強気な妻にここまで言われたらもう何も言い返せない。覚悟は決まった。
「頼みがある。俺はあいつらについていって力になりたい。何ができるかは分からねぇ。だけど教団が絡んでるなら何とかしてやりたい」
頭を地面にぶつけてしまいそうなほど下げた。もうチェルの答えは分かってる。それでも改めて言うのが筋だと思ったから。
「勿論いいに決まってます。決まったら早くそれを伝えにいく!」
「おう!」
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