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黒い獣
第328話-流離の医師-
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「町が見えてきた!」
馬車を動かして1日、変わらない景色が唐突に終わり人の立てた建造物が見えてくる。
大きな町とは言えないがそれなりの規模の町は私たちの一旦の目的地となっていた。
「とりあえず入るぞ。補給とお嬢を診てもらわないといけないしな」
あれから私の身体はまだ完全に回復とまではいっていない。痛みなんかはないけど、疲労感と言うか倦怠感は抜けないままだ。
町に入ると人の多さに驚く、それに熱気がある。もう少し大人しいような様子の町なのに……何かお祭りでもしているのだろうか。
「馬車置いてきたぜ。にしても賑やかだな」
ヤンも同じ意見らしい。ユリィも「不思議ですね」なんて言っている。
「なぁあんたこの町の住人か? 医者にはどこに行けば診てもらえるだ?」
ちょうど私たちの前を通り過ぎる人を捕まえてヤンが尋ねた。
「あぁ、そうだよ。旅の人かね? この町にはお医者さんがいないんだよ。本来なら隣町まで行かないといけないんだけどね」
「本来なら?」
「運がいいね。今ちょうどお医者さんがここに来てるから行ってみるといいさ。いい人だからね」
「もしかしてこの熱気はお医者さんが来てるからでしょうか?」
「そうと言えばそうだねぇ。お医者さんと一緒に商人隊も来てるから、みんな買い物に走ってるよ」
笑いながら教えてくれ町の人は気さくな人で色んなことを教えてくれた。
とりあえずこの熱気の正体はわかって、なんとなくすっきりとした。
「だったら俺たちも行ってみようぜ」
「うん」
教えてもらった先に行くと人だかりがあった。
荷台をカウンターとして何台もの店が開かれている。食糧から日常品まで、なんなら飲食店まである。
確かにある意味お祭りのように見える。
その熱気に当てられてこっちも少しテンションが上がる。
焼いたか煮ている食べ物のいい香りが漂ってきて食欲を刺激する。隣のユリィも同じように屋台に目を走らせている。
「お昼前だからでしょうか、人が多いですね」
ユリィの少し恥ずかしそうな言葉は私がさっき屋台の方を見ているユリィを見てしまったからだろうか。
「先にお昼食べない?」
「先に診て貰っとけ」
お預けを食らってしまう。心なしかユリィもがっかりしているように見える。
「あれだったら私だけ診てもらうから、二人は先にお昼でも」
「いや、ついて行く」
「私も……一緒に食べたいですし」
二人の優しい気遣いに負けて、先に診てもらうことにした。
人を捕まえて教えてもらった医者のいるテントのような仮設の建物はすぐ手前にあった。幸い人も並んでいないからテントに向かうとテントの前にいた若い男の人に止められた。
「あーすみません。医師が今から休憩に入るので……」
お昼前だし当然だ。だけど、とりあえずこれで先にお昼にありつけそうだ。
「休憩は後に回すから先に診てしまうから通してくれ」
テントの中から大きな声がした。
その声はどこか聞き覚えがある。力強い男らしい声……。
「入ってくれ」
促されるまま私たちはテントの中に入ると今度は間違いなく見覚えのある人がそこにいた。
「バレルさん!?」
馬車を動かして1日、変わらない景色が唐突に終わり人の立てた建造物が見えてくる。
大きな町とは言えないがそれなりの規模の町は私たちの一旦の目的地となっていた。
「とりあえず入るぞ。補給とお嬢を診てもらわないといけないしな」
あれから私の身体はまだ完全に回復とまではいっていない。痛みなんかはないけど、疲労感と言うか倦怠感は抜けないままだ。
町に入ると人の多さに驚く、それに熱気がある。もう少し大人しいような様子の町なのに……何かお祭りでもしているのだろうか。
「馬車置いてきたぜ。にしても賑やかだな」
ヤンも同じ意見らしい。ユリィも「不思議ですね」なんて言っている。
「なぁあんたこの町の住人か? 医者にはどこに行けば診てもらえるだ?」
ちょうど私たちの前を通り過ぎる人を捕まえてヤンが尋ねた。
「あぁ、そうだよ。旅の人かね? この町にはお医者さんがいないんだよ。本来なら隣町まで行かないといけないんだけどね」
「本来なら?」
「運がいいね。今ちょうどお医者さんがここに来てるから行ってみるといいさ。いい人だからね」
「もしかしてこの熱気はお医者さんが来てるからでしょうか?」
「そうと言えばそうだねぇ。お医者さんと一緒に商人隊も来てるから、みんな買い物に走ってるよ」
笑いながら教えてくれ町の人は気さくな人で色んなことを教えてくれた。
とりあえずこの熱気の正体はわかって、なんとなくすっきりとした。
「だったら俺たちも行ってみようぜ」
「うん」
教えてもらった先に行くと人だかりがあった。
荷台をカウンターとして何台もの店が開かれている。食糧から日常品まで、なんなら飲食店まである。
確かにある意味お祭りのように見える。
その熱気に当てられてこっちも少しテンションが上がる。
焼いたか煮ている食べ物のいい香りが漂ってきて食欲を刺激する。隣のユリィも同じように屋台に目を走らせている。
「お昼前だからでしょうか、人が多いですね」
ユリィの少し恥ずかしそうな言葉は私がさっき屋台の方を見ているユリィを見てしまったからだろうか。
「先にお昼食べない?」
「先に診て貰っとけ」
お預けを食らってしまう。心なしかユリィもがっかりしているように見える。
「あれだったら私だけ診てもらうから、二人は先にお昼でも」
「いや、ついて行く」
「私も……一緒に食べたいですし」
二人の優しい気遣いに負けて、先に診てもらうことにした。
人を捕まえて教えてもらった医者のいるテントのような仮設の建物はすぐ手前にあった。幸い人も並んでいないからテントに向かうとテントの前にいた若い男の人に止められた。
「あーすみません。医師が今から休憩に入るので……」
お昼前だし当然だ。だけど、とりあえずこれで先にお昼にありつけそうだ。
「休憩は後に回すから先に診てしまうから通してくれ」
テントの中から大きな声がした。
その声はどこか聞き覚えがある。力強い男らしい声……。
「入ってくれ」
促されるまま私たちはテントの中に入ると今度は間違いなく見覚えのある人がそこにいた。
「バレルさん!?」
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