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新たなる始まり

第319話-魔法信者の集い-

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 目の前に現れた人が知っている人であることで少し安心した。だけど、同時にここに来ることに不気味さを覚えた。

「話だ?」
「そうです。争う気は御座いません」
「周り囲んどいてよく言うぜ」

 両手を上げて武器がないことをアピールした。

「先に言っておきます。私達は魔法教です」

 そう言って腕に彫られた意味ありげな紋様を見せた。
 「魔法教」という名はユリィにも聞いている。昔ガルド城であった魔法信者の集まりだ。

「生憎だが勧誘はいらねぇぞ」
「いえいえ、そんな気はありません。ただお聞きしたいことがあるんです」
「聞きたいこと?」

 ヤンの言葉に物怖じもせずに自分の要求をこちらに伝えてくる。
 その姿は自信に溢れていて逆に怖い。

「あなた方の中に精霊憑きが居ませんか?」

 直球な問いかけ。その意味の真意が分からない。答えは期待してなくて、私たちの反応を見ているだけなのかも知れない。

「なんだそりゃ。知らねえよ」

 ヤンがため息と同時に構えを解いた。

「物盗りかと思って損したぜ」
「そうですか。居られませんでしたか」
「だな。稀なもんなんだろ」
「その稀なのがあなた方の中にいるかもと思いまして……。ところでテールさんにお世話になった方はどちらの方ですか?」
「私ですが……」

 ユリィが名乗り出る。

「なるほど。ちなみに貴方は魔法が使えますでしょうか?」

 今の質問は完全に私たちの中に精霊憑きがいることに狙いをつけて来ている。

「少しだけですが」
「ちなみにテールさんですが、これまでの経験上では精霊憑きの元へと姿を見せている事が多いんですよ。いや、多いというよりも精霊憑きの前のみとでも言えますね」

 ヴェインさんは笑顔でこちらを詰めにかかってきている。

「なので魔法を見せてもらうだけで構いません。もし間違えていたら謝礼をお支払いさせて頂きますので」
「ちなみによ。仮に精霊憑きだったらどうするんだよ?」
「その時は是非ご同行願いますね」

 魔法なんて見せられるはずがない。だってユリィは精霊憑きだ。ただ、誤魔化しようがない。となれば……。
 こっそりとヤンの方を見ると目があった。考えていることは一緒らしい。
 後は私達が合わせるだけ。

「逃げろ!!」

 ヤンの言葉が終わる前に私がユリィに引っ張られる形でその場から逃げ出した。
 後ろではヤンが目眩しの風魔法を放つ。それが私達には追い風になって速度が一気に出た。

「私もそうするしかないと思いましたので。ごめんなさい。ご迷惑をお掛けします」

 ユリィに連れられて夜の逃避行が始まる。


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