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新たなる始まり

第313話-タガマ最前線-

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 聞き出した情報から先手を打てる。
 今アル達は真ん中の道を正面から攻めていた。そして本隊との交戦中で進めずにいるらしい。そしてその背後へと側面から回り込んで挟み撃ちにするつもりだったらしい。
 回り込みの部隊は全て排除した。となれば事態を解決できるのは俺だ。
 先では炎が上がって建物を焼いている。熱気と焦げた匂いがここまで漂ってくる。
建物の上を伝うことはできない。ならこのまま道を突っ切る。
 燃えている家の端を通り過ぎると前方へと波状攻撃をする本隊がいた。
 こっちに気づくと視線が俺へと集まる。その瞬間風の刃を敵陣へと目掛けて飛ばす。
 攻撃が当たればラッキー。それでダメならただの目眩しだ。相手の混乱しているところへ斬り込む。
 正直ここまで来た疲労感がすごい。足が朝より断然鉛のように重い。息も途切れ始めている。それでも前へと突き進んで敵陣の中で暴れる。

「ヤン!!」

 聞こえてくるのはアルの声。

「無茶しすぎだ」

 この混乱の中で親友の声は隣から聞こえて来る。その声が身体を支える力になる。

「お前らこそ前に出過ぎだ挟み撃ちにされるとこだったんだぜ」
「そうか。ありがとう。でもここまで来たら僕らの勝ちだ」

 俺の一言で相手の行動が思いついたのか、アルのお礼を聞いて俺は自分が少しは役に立てた気がした。

「ヤンは少し下がって。怪我もしてるんだろ」
「ここまで来たんだ。変わらねぇよ」

 炎の熱気と戦いの空気で精神は高揚している。身体の疲労は感じても、精神が抑え込んでいる。
 アルが剣を振って敵を薙ぎ払うと段々と敵の数が減ってきた。敵が死んだんじゃない、撤退していく。町の外へと逃げ帰る姿がここからでも分かる。
 少し離れた所ではオーランとユリも戦っている。向こうも勝敗は決したらしい。敵は町の外へと同じように撤退していっている。
 俺も含め全員がボロボロだ。傷、服の損傷、血が滲んでいる。それでもこうやって言葉が交わせるのであれば、俺たちの勝ちで間違いない。
 少数ながら占領されていた街を取り戻した。この達成感は驕りなく、俺たちの実力の証でもあった。
 敵が去った中で俺たちを残し、背後では燃え盛る家からの熱気が空気を伝って肌に感じ取れる。
 火の粉が飛び盛り、小さな火の粉が風に乗り腕へと飛んでくる。
 燃え盛る村の熱の暑さが増していく。身体の感じる暑さとは逆に高揚していた気分が少しずつ冷めていった。







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