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新たなる始まり
第269話-ペンネームは?-
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いくつもの席が並ぶチェーンの喫茶店の一角は日差しが差し込んでいた。
それでも空調が効いた店内では陽の暖かさが感じられない。
暑い時期になって来たのにホットコーヒーを頼んだのはこの空調が自分には少し肌寒いと思ったからでもあった。
「あのー、すみません。優々さんでしょうか?」
話しかけて来た女性はすらっとしたスタイルに女性にしては高めの身長。髪は後ろで束ねていて、見た目は完全に出来る女と言う姿の人物。歳は私よりも上だろうか。
「は、はい。そうです。初めまして、有栖川さんでよろしかったでしょうか?」
「はい。私が有栖川です。今日はお忙しい中ありがとうございます」
「いえ、こちらこそお誘い頂き有難うございます」
お互い顔も知らない間柄ではあるけど、私達は待ち合わせをしていた。それが私が普段来ない喫茶店でお茶を飲んでいた理由だった。
何故、私がそうなったのかは少し前に遡る。
顔も知らない私達が繋がった理由は「白銀の騎士団」をモチーフに私の書いた二次創作の小説だった。
「ん? メッセージ来てる。なんだろ」
不思議な体験をフランソワでしてこちらに戻って来てから半年が経っていた。
私は夢から覚めて自分がフランソワで体験したことを小説にして投稿するようになっていた。
作品には賛否両論があり、喜ぶべきか、はたまた悲しむべきかは置いておいても、それなりに名前は独り歩きしていた。
ただみんなコメント欄で応援、批判をしてくれるからメッセージは珍しかった。
メッセージの内容は作品の感想だった。そこに疑問点もついていて、私はそのメッセージに回答する形で送り主の有栖川さんと言うペンネームの人とやり取りすることが日課になっていた。
そんなやり取りの中で有栖川さんから私と会いたいと言う誘いが来た。
最初は少し身構えたけど、メッセージのやり取り、そして同性であると言う事もあって私はその誘いを受ける事にした。
そして約束の日が今日になっていた。
「是非お会いしてみたかったので。あっ、すみませんホットコーヒーを一つお願いします」
彼女が注文したのもホットコーヒーだった。
「私ホットコーヒーの方が話に集中出来るんです。体感は暑いんですけどね」
私の表情から答えてくれたのかも知れない。ただ、その回答から分かるのはこの人が気を使えそうな人であると言うこと。
「そう言えば有栖川さんお住まいこちらだったんですね。世の中狭いですよね」
「あー。それなんですけど実は私……関東方面なので、こちらまでは新幹線で来ていまして」
話の種にと思って言った事への返答が重かった。わざわざ会うために関西まで来たのかと思うと少し身構えてしまう。
「気にしないでくださいね。せっかく会えるチャンスでそれを言ったら破綻してしまうかなと思って言わなかっただけなので」
「そうするようにしてみます。けどどうしてそこまで私と会いたいだなんて?」
「やっぱり不思議に思われますよね」
「えぇ。かなり」
私はこの誘いには何かあると思っていた。彼女が何かを私に言っていない気がする。それが気になって私も誘いに乗った。
私のような有名人でもないのに直接会いたいなんてあるんだろうか。それにわざわざ遠方から。今日この場で一層疑惑が強まった。
「そうですよね。それに当たって少し説明させて頂きたいです」
それでも空調が効いた店内では陽の暖かさが感じられない。
暑い時期になって来たのにホットコーヒーを頼んだのはこの空調が自分には少し肌寒いと思ったからでもあった。
「あのー、すみません。優々さんでしょうか?」
話しかけて来た女性はすらっとしたスタイルに女性にしては高めの身長。髪は後ろで束ねていて、見た目は完全に出来る女と言う姿の人物。歳は私よりも上だろうか。
「は、はい。そうです。初めまして、有栖川さんでよろしかったでしょうか?」
「はい。私が有栖川です。今日はお忙しい中ありがとうございます」
「いえ、こちらこそお誘い頂き有難うございます」
お互い顔も知らない間柄ではあるけど、私達は待ち合わせをしていた。それが私が普段来ない喫茶店でお茶を飲んでいた理由だった。
何故、私がそうなったのかは少し前に遡る。
顔も知らない私達が繋がった理由は「白銀の騎士団」をモチーフに私の書いた二次創作の小説だった。
「ん? メッセージ来てる。なんだろ」
不思議な体験をフランソワでしてこちらに戻って来てから半年が経っていた。
私は夢から覚めて自分がフランソワで体験したことを小説にして投稿するようになっていた。
作品には賛否両論があり、喜ぶべきか、はたまた悲しむべきかは置いておいても、それなりに名前は独り歩きしていた。
ただみんなコメント欄で応援、批判をしてくれるからメッセージは珍しかった。
メッセージの内容は作品の感想だった。そこに疑問点もついていて、私はそのメッセージに回答する形で送り主の有栖川さんと言うペンネームの人とやり取りすることが日課になっていた。
そんなやり取りの中で有栖川さんから私と会いたいと言う誘いが来た。
最初は少し身構えたけど、メッセージのやり取り、そして同性であると言う事もあって私はその誘いを受ける事にした。
そして約束の日が今日になっていた。
「是非お会いしてみたかったので。あっ、すみませんホットコーヒーを一つお願いします」
彼女が注文したのもホットコーヒーだった。
「私ホットコーヒーの方が話に集中出来るんです。体感は暑いんですけどね」
私の表情から答えてくれたのかも知れない。ただ、その回答から分かるのはこの人が気を使えそうな人であると言うこと。
「そう言えば有栖川さんお住まいこちらだったんですね。世の中狭いですよね」
「あー。それなんですけど実は私……関東方面なので、こちらまでは新幹線で来ていまして」
話の種にと思って言った事への返答が重かった。わざわざ会うために関西まで来たのかと思うと少し身構えてしまう。
「気にしないでくださいね。せっかく会えるチャンスでそれを言ったら破綻してしまうかなと思って言わなかっただけなので」
「そうするようにしてみます。けどどうしてそこまで私と会いたいだなんて?」
「やっぱり不思議に思われますよね」
「えぇ。かなり」
私はこの誘いには何かあると思っていた。彼女が何かを私に言っていない気がする。それが気になって私も誘いに乗った。
私のような有名人でもないのに直接会いたいなんてあるんだろうか。それにわざわざ遠方から。今日この場で一層疑惑が強まった。
「そうですよね。それに当たって少し説明させて頂きたいです」
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