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第266話-アリスとフランソワ-
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「そんな事がありましたか」
「信じられるの?」
「はい。私自身のしてきたことの方がもっと不思議です」
「そう言われたらそうだったわね」
今回私に声をかけてくれていたのはフランソワ様ではなかった。
そんな事はどうでもよかった。フランソワ様が話していたのだから、間違いなくさっきまでいた人はフランソワ様だ。
「私としてはフランソワ様の不思議な一面が見れて楽しかったですから」
「貴方……あまり反省する気は無さそうね」
「そんな事はありません。これからはもう時間の巻き戻しも出来ませんので。限りある一回を楽しみます」
「そう……ふふっ」
フランソワ様が笑った。笑う姿は相変わらず高嶺の花の様に綺麗だ。
「でも結局何だったのかしらね。私の中にいた人」
「私にも分かりません。不思議な方であったとは思います」
「そう考えると少し気味が悪いかも知れないわね」
「悪い人ではないと思うのですが」
「えぇ。貴方の方がよっぽど悪人よ」
「フランソワ様に言われたら傷付きますね」
「そんな事全く思ってないくせに」
こんな会話は初めてだった。お互いが知ってるけれどどこか距離があるようで、近いからこそ言える会話。
二人だけの秘密があるからこその距離感がここにはあった。
「さて、今からどうしようかしら。もう暗いし夜だもんね。屋敷に帰らないとホリナが心配で死んじゃうかも」
「本来なら恐らく寝ていらっしゃる時間ですものね」
「そうよ。本当、嫌になるわ」
フランソワ様の独り言のような愚痴は風が吹いて、そのままどこかへ飛ばしてしまった様な気がした。
この状況が嫌になるのか。それとも別のことに対して嫌になるのか。それを聞いてはいけない様な気がした。
「そうです。フランソワ様」
「何?」
「私とお友達になってくださいませんか?」
まず私が言わないといけない言葉はこれだった。
「そっか。私とは初対面になるものね。良いわよ。むしろ今更な様な気もするわ」
「ありがとうございます。フランソワ様」
こうしてまた私とフランソワ様の友達としての時間が始まった。
「信じられるの?」
「はい。私自身のしてきたことの方がもっと不思議です」
「そう言われたらそうだったわね」
今回私に声をかけてくれていたのはフランソワ様ではなかった。
そんな事はどうでもよかった。フランソワ様が話していたのだから、間違いなくさっきまでいた人はフランソワ様だ。
「私としてはフランソワ様の不思議な一面が見れて楽しかったですから」
「貴方……あまり反省する気は無さそうね」
「そんな事はありません。これからはもう時間の巻き戻しも出来ませんので。限りある一回を楽しみます」
「そう……ふふっ」
フランソワ様が笑った。笑う姿は相変わらず高嶺の花の様に綺麗だ。
「でも結局何だったのかしらね。私の中にいた人」
「私にも分かりません。不思議な方であったとは思います」
「そう考えると少し気味が悪いかも知れないわね」
「悪い人ではないと思うのですが」
「えぇ。貴方の方がよっぽど悪人よ」
「フランソワ様に言われたら傷付きますね」
「そんな事全く思ってないくせに」
こんな会話は初めてだった。お互いが知ってるけれどどこか距離があるようで、近いからこそ言える会話。
二人だけの秘密があるからこその距離感がここにはあった。
「さて、今からどうしようかしら。もう暗いし夜だもんね。屋敷に帰らないとホリナが心配で死んじゃうかも」
「本来なら恐らく寝ていらっしゃる時間ですものね」
「そうよ。本当、嫌になるわ」
フランソワ様の独り言のような愚痴は風が吹いて、そのままどこかへ飛ばしてしまった様な気がした。
この状況が嫌になるのか。それとも別のことに対して嫌になるのか。それを聞いてはいけない様な気がした。
「そうです。フランソワ様」
「何?」
「私とお友達になってくださいませんか?」
まず私が言わないといけない言葉はこれだった。
「そっか。私とは初対面になるものね。良いわよ。むしろ今更な様な気もするわ」
「ありがとうございます。フランソワ様」
こうしてまた私とフランソワ様の友達としての時間が始まった。
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