267 / 420
嵐の来訪者
第235話-オーランの不安-
しおりを挟む
「その言葉はありがたいです。でも……」
「でも?」
どこか腑に落ちないと言った様子のオーラン、何が彼を拒ませているのか。
「俺は迷惑をかけ過ぎた。だから近衛騎士になるなんて出来ない。特に表立って何かをやれる人間でも無いんだ」
「それでもいいじゃない。まず迷惑って言ったけど、さっきも言った様にそれはそれこれはこれよ! もう過去の事、これから私達を助けてよ」
オーランに必要なのは彼の不安を払拭する言葉だと思う。後一歩でいい、彼の背中を後押し出来れば。
「表立って出来ないなんて事はない。やれば出来る、それに裏方に詳しいなら尚更手元に欲しいじゃ無いの。だってそう言う人がいた方が安心できるし」
『餅は餅屋』なんて言葉がある。実際の所裏方に詳しい彼がいたからこそ、今回も解決に至った。
「別にそこまで気負うことないだろ」
ヤンが言った。短い言葉だけど、オーランの肩が揺れた。
「確かにお嬢の敵だ云々は言ったけどよ、もう違うんだろ。俺も助けられたんだし、近衛騎士って仲間になってもいいだろ。何が出来るとかいらないしな、お嬢が近衛騎士としていて欲しいって気持ちに応えるだけでいいんじゃないか」
「本当にいいのか……?」
「俺はな。アルも問題ないだろ。そしたら後は……」
そう言ってユリの方にみんなの視線が集まった。
「私も問題ないですよ。むしろ仲間として色々教えて欲しいくらいですよ」
「だとよ」
これ以上の言葉は無粋だと思った。だから私はただ頷いた。
「俺は……近衛騎士になりたい。影の仕事しか出来ないと思っていたけど、表に立てるなら立ちたい!」
「なら立ちましょう。改めて言うわ、私の近衛騎士になって」
差し出した手をオーランは掴んでくれた。
「ありがとうございます。声をかけてくれて」
いつもクールな彼の熱い一面を見れた気がする。彼の言った『ありがとう』は重みが凄い感じられた。
「そしたらお嬢、さっさとやっちまえよ。気が変わらないうちにな」
「分かってる。そもそもオーランはそんな簡単に気は変わらないわよ」
「やるって言うのは?」
オーランだけは何をするのか分かっていないと言う様子だった。
私はその言葉も画面で何回も見ている。この世界に来てからは三回も。
「祝詞でしょ」
「祝詞……?」
「お前分かってないな。一応騎士学校行ってるんだろ?」
答えの分かっていないオーランにヤンが答えを教える。祝詞の言葉と作法を。
「すみません、まさか自分が言うなんて思ってなくて」
「まぁ、そんなこともあるわよ。気にしないで」
オーランが懐から短剣を出して、ヤンに教わった通りに辿々しく地面に片膝をついて私を見上げる。
「私、オーラン=ウェルは主のために剣を携え、如何なる時も主を守る剣として傍らにお仕え致します」
オーランから差し出された剣を受け取った。
それは私の夢だった四人の近衛騎士が揃う瞬間だった。
「でも?」
どこか腑に落ちないと言った様子のオーラン、何が彼を拒ませているのか。
「俺は迷惑をかけ過ぎた。だから近衛騎士になるなんて出来ない。特に表立って何かをやれる人間でも無いんだ」
「それでもいいじゃない。まず迷惑って言ったけど、さっきも言った様にそれはそれこれはこれよ! もう過去の事、これから私達を助けてよ」
オーランに必要なのは彼の不安を払拭する言葉だと思う。後一歩でいい、彼の背中を後押し出来れば。
「表立って出来ないなんて事はない。やれば出来る、それに裏方に詳しいなら尚更手元に欲しいじゃ無いの。だってそう言う人がいた方が安心できるし」
『餅は餅屋』なんて言葉がある。実際の所裏方に詳しい彼がいたからこそ、今回も解決に至った。
「別にそこまで気負うことないだろ」
ヤンが言った。短い言葉だけど、オーランの肩が揺れた。
「確かにお嬢の敵だ云々は言ったけどよ、もう違うんだろ。俺も助けられたんだし、近衛騎士って仲間になってもいいだろ。何が出来るとかいらないしな、お嬢が近衛騎士としていて欲しいって気持ちに応えるだけでいいんじゃないか」
「本当にいいのか……?」
「俺はな。アルも問題ないだろ。そしたら後は……」
そう言ってユリの方にみんなの視線が集まった。
「私も問題ないですよ。むしろ仲間として色々教えて欲しいくらいですよ」
「だとよ」
これ以上の言葉は無粋だと思った。だから私はただ頷いた。
「俺は……近衛騎士になりたい。影の仕事しか出来ないと思っていたけど、表に立てるなら立ちたい!」
「なら立ちましょう。改めて言うわ、私の近衛騎士になって」
差し出した手をオーランは掴んでくれた。
「ありがとうございます。声をかけてくれて」
いつもクールな彼の熱い一面を見れた気がする。彼の言った『ありがとう』は重みが凄い感じられた。
「そしたらお嬢、さっさとやっちまえよ。気が変わらないうちにな」
「分かってる。そもそもオーランはそんな簡単に気は変わらないわよ」
「やるって言うのは?」
オーランだけは何をするのか分かっていないと言う様子だった。
私はその言葉も画面で何回も見ている。この世界に来てからは三回も。
「祝詞でしょ」
「祝詞……?」
「お前分かってないな。一応騎士学校行ってるんだろ?」
答えの分かっていないオーランにヤンが答えを教える。祝詞の言葉と作法を。
「すみません、まさか自分が言うなんて思ってなくて」
「まぁ、そんなこともあるわよ。気にしないで」
オーランが懐から短剣を出して、ヤンに教わった通りに辿々しく地面に片膝をついて私を見上げる。
「私、オーラン=ウェルは主のために剣を携え、如何なる時も主を守る剣として傍らにお仕え致します」
オーランから差し出された剣を受け取った。
それは私の夢だった四人の近衛騎士が揃う瞬間だった。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
私のバラ色ではない人生
野村にれ
恋愛
ララシャ・ロアンスラー公爵令嬢は、クロンデール王国の王太子殿下の婚約者だった。
だが、隣国であるピデム王国の第二王子に見初められて、婚約が解消になってしまった。
そして、後任にされたのが妹であるソアリス・ロアンスラーである。
ソアリスは王太子妃になりたくもなければ、王太子妃にも相応しくないと自負していた。
だが、ロアンスラー公爵家としても責任を取らなければならず、
既に高位貴族の令嬢たちは婚約者がいたり、結婚している。
ソアリスは不本意ながらも嫁ぐことになってしまう。
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。
アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。
【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】
地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。
同じ状況の少女と共に。
そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!?
怯える少女と睨みつける私。
オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。
だったら『勝手にする』から放っておいて!
同時公開
☆カクヨム さん
✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉
タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。
そして番外編もはじめました。
相変わらず不定期です。
皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます🙇💕
これからもよろしくお願いします。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる