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嵐の来訪者

第217話-影の戦い-

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 標的に狙いを定めて息を潜める。初撃は避けられた。二撃目の攻撃は慎重にタイミングを探っていた。そして、標的が大きく前に動いた瞬間を逃さなかった。
 標的の背後になる木の上から標的目掛けて攻撃を仕掛けた。殺すつもりはない。ただ行動ができない様に意識を飛ばす。
 だが、その企みは一瞬で崩れた。標的の足が止まった。そしてこちらに振り返った。目が合い、回避された。標的がいた場所へ降りると同時に飛んできた蹴りが入った。かろうじてガードはしたものの腕が痺れる。
 こちらも距離を詰めて射程圏内に標的を入れて蹴りを繰り出す。足先がヒットする感触が走るが掠るだけでしかなかった。

「お前は誰だ?」
「答える気はない」

 問答に意味はない……がこちらの目的は標的の足止めだ。会話は時間を稼ぐにはもってこいだ。

「強いて言えば、お前の敵だ」
「脱走した男の仲間だな」
「どうでもいい事だろ」

 お互いが会話を盾にして息を整える。
 先に動いたのは標的だ。懐から取り出した小さな武器を片手にこちらへ距離を詰めてきた。武器を持つ腕を振るのに合わせてこちらも身体を動かした。
 足元の力を抜いてその場に屈む様な体勢から標的の懐に飛び込む。
 上空で武器が通り過ぎるのを横目に蹴り上げた。
 標的の真下から蹴り上げた攻撃は胸元に吸い込まれる様に直撃する。一瞬怯み、咳き込む標的に放った追い討ちの回し蹴りが防御の上から吹き飛ばす。
 蹴り飛ばされた反動をそのままに体勢を立て直した標的の鋭い目とこちらが逃さまいとする目線が交差する。

「決まった……と思ったんだけどな。見かけによらずタフだな」

 見た目はそんなに大きくない相手にニ撃入れたら勝ちだと思っていたが、意外な耐久性に驚かされる。

「そっちの蹴りが甘いだけだ」

 こちらの目的は既にある程度達成している。標的が異常を誰かに知らせに活かせることを開始の時間まで行わせない事が第一目標。睨み合いを続けるのが楽なのだが……開始の予定時間まではまだ少しある。それまで引き付けるだけだが、実戦になるとそれが難しい。強引にでも異常を伝えるために振り切られたらこちらが追う立場になって不利になる。

「お前の相手をしている暇はない。逃して貰うぞ」

 標的が言葉が終わるよりも早く、助走をつけて動いて木の幹を走り登った。

「逃すかよ」

 標的の後を追う様にこちらも身軽さを活かして木の上へと移動する。戦いの場が地表から上空へと変わる。
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