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騎士と派閥と学園生活と
第159話-ヤンの励まし-
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半月に一度の賑やかさも少しずつ慣れて来た。
毎回浮き足立っていた私自身も少しだけど地に足がついて来ているような落ち着きになって来た。
もちろん周りが皆んなそうじゃない。私はたまたま早く近衛騎士を見つけたからそうなっているだけ。他の生徒の大半はこの交流会で自分の騎士達を探している。
総長との一件以来今日まで私の周りに問題はなかった。
いや、本来ない物のはずだけど、ここ最近の事で神経質になっているのかもしれない。
「ようお嬢。もう俺たちがいるのに来るなんて暇なのか?」
集まりの場となりつつある騎士学校の校庭の一角でヤン、アル、ユリが集まってくれていた。
私の後ろにはアン、ユリィ、アリスがいる。側から見たら大所帯も良いところだ。
ヤン達とはオーランの一件を最後に今日までやりとりがなかったから不安も少しあったけど、私の思い過ごしだったみたいで気持ちが和らいだ。
「暇じゃないわよ。色々あって大変だったんだから」
「今の話だろ」
事情を知らないヤンの茶化してくる雰囲気が私に安心感をくれた。
「そうだ。今日皆んなに話しておきたいことがあるの」
「奇遇だな。俺たちもあるんだ。正確に言うとアルがな」
「すみません、フランソワ様」
アルが申し訳なさそうに申し出た。
「すみませんフランソワ様。私はシャバーニ様を探して来ます。見つけたら戻って来ますね」
「あっ、うん。ここにいるようにするわ。えっと、そしたらアルの事から聞いた方がいいわね。私のは後でもいいから」
「ありがとうございます。前からあった話なのですが、自分は少しの間この学校を離れる事になりました」
「えっ……? 本当に?」
予想外の事に思わず素っ頓狂な声が出てしまう。こんな展開想定してないし、ゲームの中でもなかったから頭の中が混乱している。
「本当です。短い期間ですのでご安心ください」
「ちなみに理由は?」
「騎士学校はここだけではないのはご存知ですよね。こことは違う学校の方へ校風を学びに行くんです」
ここ以外に騎士学校があった事は知らなかった。
「そうなんだ」
「逆にあちらの学校からもこの学校へ学びに来られるそうなので交換勉強会のようなものです」
「アルは将来期待されてるからな。頑張ってこいよ」
ヤンの言う通りで、ゲームだとアルはこの先学校の長になる話が展開ではあった。
「なるほどね。アルなら外に出しても恥ずかしくないってわけね」
「おいおい、なんでその台詞をこっち向いて言うんだよ。まぁ、俺の100倍マシだろうだけどな」
「0の100倍は0よ」
ヤンの軽口に乗って私も軽口で返す。
私達のやりとりを見てアルが笑ってくれて、周りも笑ってくれた。
今生の別れでもない。だからこうしてヤンなりの励ましの言葉なんだろうと私には二人のやりとりが微笑ましく思えた。
毎回浮き足立っていた私自身も少しだけど地に足がついて来ているような落ち着きになって来た。
もちろん周りが皆んなそうじゃない。私はたまたま早く近衛騎士を見つけたからそうなっているだけ。他の生徒の大半はこの交流会で自分の騎士達を探している。
総長との一件以来今日まで私の周りに問題はなかった。
いや、本来ない物のはずだけど、ここ最近の事で神経質になっているのかもしれない。
「ようお嬢。もう俺たちがいるのに来るなんて暇なのか?」
集まりの場となりつつある騎士学校の校庭の一角でヤン、アル、ユリが集まってくれていた。
私の後ろにはアン、ユリィ、アリスがいる。側から見たら大所帯も良いところだ。
ヤン達とはオーランの一件を最後に今日までやりとりがなかったから不安も少しあったけど、私の思い過ごしだったみたいで気持ちが和らいだ。
「暇じゃないわよ。色々あって大変だったんだから」
「今の話だろ」
事情を知らないヤンの茶化してくる雰囲気が私に安心感をくれた。
「そうだ。今日皆んなに話しておきたいことがあるの」
「奇遇だな。俺たちもあるんだ。正確に言うとアルがな」
「すみません、フランソワ様」
アルが申し訳なさそうに申し出た。
「すみませんフランソワ様。私はシャバーニ様を探して来ます。見つけたら戻って来ますね」
「あっ、うん。ここにいるようにするわ。えっと、そしたらアルの事から聞いた方がいいわね。私のは後でもいいから」
「ありがとうございます。前からあった話なのですが、自分は少しの間この学校を離れる事になりました」
「えっ……? 本当に?」
予想外の事に思わず素っ頓狂な声が出てしまう。こんな展開想定してないし、ゲームの中でもなかったから頭の中が混乱している。
「本当です。短い期間ですのでご安心ください」
「ちなみに理由は?」
「騎士学校はここだけではないのはご存知ですよね。こことは違う学校の方へ校風を学びに行くんです」
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「そうなんだ」
「逆にあちらの学校からもこの学校へ学びに来られるそうなので交換勉強会のようなものです」
「アルは将来期待されてるからな。頑張ってこいよ」
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「なるほどね。アルなら外に出しても恥ずかしくないってわけね」
「おいおい、なんでその台詞をこっち向いて言うんだよ。まぁ、俺の100倍マシだろうだけどな」
「0の100倍は0よ」
ヤンの軽口に乗って私も軽口で返す。
私達のやりとりを見てアルが笑ってくれて、周りも笑ってくれた。
今生の別れでもない。だからこうしてヤンなりの励ましの言葉なんだろうと私には二人のやりとりが微笑ましく思えた。
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