160 / 420
騎士と派閥と学園生活と
第131話-フランソワとオーラン-
しおりを挟む
「フランソワ様は今日も綺麗ですね」
側から聞けば嫌味にしか聞こえない言葉でも、ユリが言ってくれるならそれは嫌味に聞こえない。
もちろん私の近衛騎士だからっていうのはあるとは思うけどそれを抜きにしてもユリの事を私は信頼している。
「ありがとうユリ。ユリも綺麗よ。細身の姿が似合うのが羨ましいわ」
「ありがとうございます。今日は動きやすい服装にしていますので」
今日のユリの服装は学校にいる時よりも少し地味目な服装だった。でもどことなく気品さのある佇まいは流石ユリとしか言いようがない。
「私はもう少ししたら離れますね。遠からず、近づきすぎずの場所にいるようにします。何かあればすぐに駆けつけます」
「そこまで気合入れなくても大丈夫よ。ただ街を歩くだけなんだし」
「街だからこそだと自覚下さいね」
「分かったわ。ありがとう」
どことなくホリナとのやりとりを思い出す。
ホリナは今日は家で留守番をしている。ちゃんと護衛がいる、それも2人も。しかもうち1人は前の事件の時に私を守ってくれた人、もう1人はガルド城で私を守ってくれた人ということを伝えると私の外出を快く認めてくれた。
「ヤン先輩は先に街に入ってますよ。私とは違う所で見てくれているとのことです」
「この街の出身だしね。ヤンなら安心ね」
時間はもう少しで昼になるくらいだ。ユリとの待ち合わせもあるから早めに来たけど、周りを見渡してもオーランの姿はない。まだ来てないみたい。
「それではここで失礼します」
一言言い残してユリは雑踏の中に消えて行った。
近衛騎士とはいえ休みの日にまで付き合ってくれるんだからお給料を出さないと行けないとは思うんだけど、その話をしたら2人には断られた。
『一人前でもない奴の護衛なんて所詮は訓練だ』なんてヤンは言ってたけど、私としては何かを返したい。せめて今日の終わりにはご飯くらいはご馳走させて欲しい。そうでないと心苦しいものがある。
そして待つこと10分ほどでオーランが門の方からやってきたのを見つけた。
見慣れた服装の彼は画面の中にいた通りの姿だ。
「お待たせしてしまってすみません。それに服も……、あまり人と会うような服を持っていないので」
「いいのよ、私が早く来ただけだから。それに服装も気にしないで、本人が着慣れた物が1番よ」
別段彼が謝るほどの事でもない。それに私としては、私の知っている普段通りの彼の方が良い。最終的には見た目だけじゃなくて、話し方まで私の知っている彼になって欲しい。だからこそ、今日私は頑張らないといけない。
「お腹空いたでしょ? 早くいきましょ。少なくとも私はもうお腹が空いちゃって大変なのよ」
「良家のお嬢様でもお腹は空くんですね」
「当たり前よ。人間だもの、もうお昼なんだしね」
「いえ、すみません。自分の知るお嬢様とはイメージが違ったので」
その言葉はどこか私に突き刺さる。そう、私は本物のフランソワなんかじゃない。所詮借り物でしたかない。
「ごめんね。なんかイメージ崩しちゃって。今の私はこんなものよ。ほら、早く行かないとお店混んじゃうから」
でも今の私は他の人からすればフランソワだ。それは紛れもない事実。これは私がこの世界にいる限りはずっとのしかかってくる気持ちだ。忘れたくても忘れられない。
だから私は私なりにフランソワとして彼女を良い方向に誘導していく。導くなんて偉そうなことは言えない。理由をつけて私のしたいことをしているだけだから。
いつか私がこの世界からいなくなってしまうようなことがあれば、本当のフランソワが楽しくこの世界を生きていけるように彼女の周りを明るくしておく。
「そ、そうですね。すみません」
そのためにも、私のためにも、目の前にいるオーランを今日口説き落とす。気合は満タン。後はこの後行動にかかっている。
側から聞けば嫌味にしか聞こえない言葉でも、ユリが言ってくれるならそれは嫌味に聞こえない。
もちろん私の近衛騎士だからっていうのはあるとは思うけどそれを抜きにしてもユリの事を私は信頼している。
「ありがとうユリ。ユリも綺麗よ。細身の姿が似合うのが羨ましいわ」
「ありがとうございます。今日は動きやすい服装にしていますので」
今日のユリの服装は学校にいる時よりも少し地味目な服装だった。でもどことなく気品さのある佇まいは流石ユリとしか言いようがない。
「私はもう少ししたら離れますね。遠からず、近づきすぎずの場所にいるようにします。何かあればすぐに駆けつけます」
「そこまで気合入れなくても大丈夫よ。ただ街を歩くだけなんだし」
「街だからこそだと自覚下さいね」
「分かったわ。ありがとう」
どことなくホリナとのやりとりを思い出す。
ホリナは今日は家で留守番をしている。ちゃんと護衛がいる、それも2人も。しかもうち1人は前の事件の時に私を守ってくれた人、もう1人はガルド城で私を守ってくれた人ということを伝えると私の外出を快く認めてくれた。
「ヤン先輩は先に街に入ってますよ。私とは違う所で見てくれているとのことです」
「この街の出身だしね。ヤンなら安心ね」
時間はもう少しで昼になるくらいだ。ユリとの待ち合わせもあるから早めに来たけど、周りを見渡してもオーランの姿はない。まだ来てないみたい。
「それではここで失礼します」
一言言い残してユリは雑踏の中に消えて行った。
近衛騎士とはいえ休みの日にまで付き合ってくれるんだからお給料を出さないと行けないとは思うんだけど、その話をしたら2人には断られた。
『一人前でもない奴の護衛なんて所詮は訓練だ』なんてヤンは言ってたけど、私としては何かを返したい。せめて今日の終わりにはご飯くらいはご馳走させて欲しい。そうでないと心苦しいものがある。
そして待つこと10分ほどでオーランが門の方からやってきたのを見つけた。
見慣れた服装の彼は画面の中にいた通りの姿だ。
「お待たせしてしまってすみません。それに服も……、あまり人と会うような服を持っていないので」
「いいのよ、私が早く来ただけだから。それに服装も気にしないで、本人が着慣れた物が1番よ」
別段彼が謝るほどの事でもない。それに私としては、私の知っている普段通りの彼の方が良い。最終的には見た目だけじゃなくて、話し方まで私の知っている彼になって欲しい。だからこそ、今日私は頑張らないといけない。
「お腹空いたでしょ? 早くいきましょ。少なくとも私はもうお腹が空いちゃって大変なのよ」
「良家のお嬢様でもお腹は空くんですね」
「当たり前よ。人間だもの、もうお昼なんだしね」
「いえ、すみません。自分の知るお嬢様とはイメージが違ったので」
その言葉はどこか私に突き刺さる。そう、私は本物のフランソワなんかじゃない。所詮借り物でしたかない。
「ごめんね。なんかイメージ崩しちゃって。今の私はこんなものよ。ほら、早く行かないとお店混んじゃうから」
でも今の私は他の人からすればフランソワだ。それは紛れもない事実。これは私がこの世界にいる限りはずっとのしかかってくる気持ちだ。忘れたくても忘れられない。
だから私は私なりにフランソワとして彼女を良い方向に誘導していく。導くなんて偉そうなことは言えない。理由をつけて私のしたいことをしているだけだから。
いつか私がこの世界からいなくなってしまうようなことがあれば、本当のフランソワが楽しくこの世界を生きていけるように彼女の周りを明るくしておく。
「そ、そうですね。すみません」
そのためにも、私のためにも、目の前にいるオーランを今日口説き落とす。気合は満タン。後はこの後行動にかかっている。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
【完結】エルモアの使者~突然死したアラフォー女子が異世界転生したらハーフエルフの王女になってました~
月城 亜希人
ファンタジー
やりたいことを我慢して質素に暮らしてきたアラフォー地味女ミタラシ・アンコが、理不尽な理由で神に命を奪われ地球から追放される。新たに受けた生は惑星エルモアにある小国ガーランディアの第二子となるハーフエルフの王女ノイン・ガーランディア。アンコは死産する予定だった王女に乗り移る形で転生を果たす。またその際、惑星エルモアのクピドから魔物との意思疎通が可能になるなどの幾つかのギフトを授かる。ところが、死産する予定であった為に魔力を持たず、第一子である腹違いの兄ルイン・ガーランディアが魔族の先祖返りとして第一王妃共々追放されていたことで、自身もまた不吉な忌み子として扱われていた。それでも献身的に世話をしてくれる使用人のロディとアリーシャがいた為、三歳までは平穏に過ごしてきたのだが、その二人も実はノインがギフトを用いたら始末するようにと王妃ルリアナから命じられていた暗殺者だった。ノインはエルモアの導きでその事実を知り、またエルモアの力添えで静寂の森へと転移し危機を脱する。その森で帝国の第一皇子ドルモアに命を狙われている第七皇子ルシウスと出会い、その危機を救う。ノインとルシウスはしばらく森で過ごし、魔物を仲間にしながら平穏に過ごすも、買い物に出た町でロディとアリーシャに遭遇する。死を覚悟するノインだったが、二人は既に非情なルリアナを見限っており、ノインの父であるノルギス王に忠誠を誓っていたことを明かす。誤解が解けたノイン一行はガーランディア王国に帰還することとなる。その同時期に帝国では第一皇子ドルモアが離反、また第六皇子ゲオルグが皇帝を弑逆、皇位を簒奪する。ドルモアはルリアナと共に新たな国を興し、ゲオルグと結託。二帝国同盟を作り戦争を起こす。これに対しノルギスは隣国と結び二王国同盟を作り対抗する。ドルモアは幼少期に拾った星の欠片に宿る外界の徒の導きに従い惑星エルモアを乗っ取ろうと目論んでいた。十数年の戦いを経て、成長したノイン一行は二帝国同盟を倒すことに成功するも、空から外界の徒の本体である星を食らう星プラネットイーターが降ってくる。惑星エルモアの危機に、ノインがこれまで仲間にした魔物たちが自らを犠牲にプラネットイーターに立ち向かい、惑星エルモアは守られ世界に平和が訪れる。
※直接的な表現は避けていますが、残酷、暴力、性犯罪描写が含まれます。
それらを推奨するものではありません。
この作品はカクヨム、なろうでも掲載しています。
母を訪ねて十万里
サクラ近衛将監
ファンタジー
エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。
この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。
概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。
騎士志望のご令息は暗躍がお得意
月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。
剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作?
だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。
典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。
従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい
斯波
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。
※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。
※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる